有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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本格数学クイズ (微分法)

関数の最大・最小

クイズ《正方形の紙で作れる最大の箱》

 正方形の紙の四隅から正方形を取り除き, その残りを折り曲げて, ふたのない正四角柱の箱を作る. 容積を最大にするには, 底面の $1$ 辺の長さと高さの比をどのような値にすればよいか. ただし, 紙の厚さは考えないものとする.
(有名問題)
$2023/09/01$$2023/09/01$

答え

 $4:1.$

解説

 $1$ 辺の長さが $1$ の正方形の紙で考える. 箱の高さを $x,$ 容積を $V$ とおく. このとき, 底面の $1$ 辺の長さは $1-2x$ であり, $0 < x < \dfrac{1}{2}$ である.
\[\begin{aligned} V &= x(1-2x)^2 = 4x^3-4x^2+x, \\ \frac{dV}{dx} &= 12x^2-8x+1 = (2x-1)(6x-1) \end{aligned}\] であるから, $V$ の増減は下表のようにまとめられる.
$x$$0$$\cdots$$\dfrac{1}{6}$$\cdots$$\dfrac{1}{2}$
$\dfrac{dV}{dx}$$+$$0$$-$
$V$$\nearrow$極大$\searrow$
したがって, $V$ は $x = \dfrac{1}{6}$ のとき極大かつ最大の値をとる. ゆえに, 底面の $1$ 辺の長さと高さの比が $1-2\cdot\dfrac{1}{6}:\dfrac{1}{6} = 4:1$ であれば, 容積は最大になる.

クイズ《カプセルに入る最大の積み木》

 球形のカプセルの中にできるだけ体積が大きい三角柱の積み木を入れるとき, その体積はカプセルの容積の何倍になるか.
(有名問題)
$2023/12/01$$2023/12/01$

答え

 $\dfrac{1}{\pi}$ 倍.

解説

 円に内接する最大の三角形は正三角形であるから (証明は省略), 半径 $1$ の球に内接する正三角柱 $\mathrm{ABC}$-$\mathrm{DEF}$ の体積 $V$ の最大値を求める. 底面の $1$ 辺の長さを $a,$ 球の中心を $\mathrm O$ とおき, $2\theta = \angle\mathrm{AOD}$ とおく.
(1)
$\theta$ を用いて $V$ を表す. 辺 $\mathrm{AD}$ の中点を $\mathrm M,$ $\triangle\mathrm{ABC}$ の重心を $\mathrm G$ とおく. 直角三角形 $\mathrm{OAM}$ に着目すると \[\cos\theta = \cos\angle\mathrm{AOM} = \frac{\mathrm{OM}}{\mathrm{OA}} = \frac{\mathrm{AG}}{1} = \dfrac{2}{3}\cdot\frac{\sqrt 3}{2}a = \frac{a}{\sqrt 3}\] となるから, $a$ は \[ a = \sqrt 3\cos\theta\] と表せる. また, この正三角柱の高さは $2\sin\theta$ であるから, 体積は \[\begin{aligned} V &= \frac{1}{2}a^2\sin 60^\circ\cdot 2\sin\theta \\ &= \frac{\sqrt 3}{2}\cdot (\sqrt 3\cos\theta )^2\cdot\sin\theta \\ &= \frac{3\sqrt 3}{2}\sin\theta\cos ^2\theta \end{aligned}\] と表せる.
(2)
$V$ の最大値を求め, 体積比を求める. $x = \sin\theta$ とおく. \[\frac{2}{3\sqrt 3}V = \sin\theta (1-\sin ^2\theta ) = \sin\theta -\sin ^3\theta = x-x^3\] であるから, この右辺を $f(x)$ とおく. \[ f'(x) = 1-3x^2\] であるから, $f(x)$ の増減は下表のようにまとめられる ($0 < x < 1$ に注意).
$x$$0$$\cdots$$\dfrac{1}{\sqrt 3}$$\cdots$$1$
$f'(x)$$+$$0$$-$
$f(x)$$\nearrow$極大$\searrow$
よって, $f(x)$ は $x = \dfrac{1}{\sqrt 3}$ のとき極大かつ最大の値をとるから, $V$ の最大値は \[\frac{3\sqrt 3}{2}\cdot\frac{1}{\sqrt 3}\left( 1-\frac{1}{3}\right) = 1\] である. ゆえに, 求める体積比は, \[ 1\div\pi\cdot 1^2 = \dfrac{1}{\pi}\] である.

クイズ《廊下を通過できる棒の長さの最大値》

 幅 $x,$ $y$ の通路が直角につながった廊下を, 水平に保ったまま通過できる棒の長さの最大値はいくらか. ただし, 通路は十分に長いとし, 棒の太さは無視して考えるものとする.
(有名問題)
$2023/09/08$$2023/09/08$

答え

 $(x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}})^{\frac{3}{2}}.$

解説

 角を通過するとき, 長さが最大の棒は, 曲がり角, 幅 $x$ の通路の壁, 幅 $y$ の通路の壁の $3$ 点で廊下に接する. このような棒のうち角を通過できるのは長さが最小のものであるから, その最小値を求めればよい. 棒が $3$ 点で廊下に接するとして, 棒と幅 $y$ の通路のなす鋭角を $\theta$ とおき, 棒の長さを $f(\theta )$ とおく.
棒を曲がり角で $2$ つに分けると, 棒の長さは \[ f(\theta ) = \frac{x}{\cos\theta}+\frac{y}{\sin\theta}\] と表される. \[ f'(\theta ) = \frac{x\sin\theta}{\cos ^2\theta}-\frac{y\cos\theta}{\sin ^2\theta} = \frac{x\sin ^3\theta -y\cos ^3\theta}{\sin ^2\theta\cos ^2\theta}\] であるから, \[\cos\alpha = \frac{x^{\frac{1}{3}}}{\sqrt{x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}}}, \quad \sin\alpha = \frac{y^{\frac{1}{3}}}{\sqrt{x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}}}\] なる鋭角 $\alpha$ について, $f(\theta )$ の増減は下表のようにまとめられる.
$\theta$$0$$\cdots$$\alpha$$\cdots$$\dfrac{\pi}{2}$
$f'(\theta )$$-$$0$$+$
$f(\theta )$$\searrow$極小$\nearrow$
よって, $f(\theta )$ は $\theta = \alpha$ のとき極小かつ最小の値 \[\begin{aligned} f(\alpha ) &= \frac{x}{\cos\alpha}+\frac{y}{\sin\alpha} = x\cdot\frac{\sqrt{x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}}}{x^{\frac{1}{3}}}+y\cdot\frac{\sqrt{x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}}}{y^{\frac{1}{3}}} \\ &= (x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}})\sqrt{x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}} = (x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}})^{\frac{3}{2}} \end{aligned}\] sをとる. ゆえに, 求める棒の長さの最大値は $(x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}})^{\frac{3}{2}}$ である.

参考

 棒の長さが $a$ で一定であるとすると, 通路の幅 $x,$ $y$ は
$(x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}})^{\frac{3}{2}} = a$ つまり $x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}} = a^{\frac{2}{3}}$
を満たす. この方程式が表す曲線は, アストロイド (astroid) である.

その他の計量に関するクイズ

クイズ《紙が重なった部分の面積の最小値》

 正方形の紙を $2$ 本の対角線の交点を通る直線で折り, 紙が重なった部分の面積が最小になるようにするとき, その面積が紙全体の面積に占める割合はいくらか.
(有名問題)
$2024/01/12$$2024/01/12$

答え

 $\sqrt 2-1 = 0.41421\cdots.$

解説

 $1$ 辺の長さが $1$ の正方形 $\mathrm{ABCD}$ の形をした紙を考える. その対角線の交点を $\mathrm O,$ 辺 $\mathrm{AB}$ の中点を $\mathrm M$ とおく. 対称性により, $\mathrm O$ を通り $\mathrm{AM}$ と共有点をもつ直線 $l$ で折る場合について考えれば十分である. $l$ と $\mathrm{AB}$ の交点を $\mathrm E$ とおき, $l$ に関して $\mathrm A,$ $\mathrm D$ と対称な点を $\mathrm A',$ $\mathrm D'$ とおく.
さらに, $\theta = \angle\mathrm{MOE}$ とおいて, 紙が重なった部分の面積を $S$ とおく. このとき, $0 \leqq \theta \leqq \dfrac{\pi}{4}$ となる. $0 < \theta \leqq \dfrac{\pi}{4}$ のとき, $\mathrm{AB},$ $\mathrm A'\mathrm D'$ の交点を $\mathrm F$ とおくと, 対称性と \[\begin{aligned} \mathrm{OE} &= \frac{\mathrm{OM}}{\cos\theta} = \frac{1}{2\cos\theta}\ \left(\because\mathrm{OM} = \dfrac{1}{2}\right), \\ \mathrm{OF} &= \frac{\mathrm{OM}}{\cos\left(\dfrac{\pi}{4}-\theta\right)} = \frac{1}{2\cos\left(\dfrac{\pi}{4}-\theta\right)} \end{aligned}\] であることから, \[\begin{aligned} S &= 4\triangle\mathrm{OEF} = 4\cdot\frac{1}{2}\mathrm{OE}\cdot\mathrm{OF}\sin\frac{\pi}{4}\ \left(\because\angle\mathrm{EOF} = \frac{\pi}{4}\right) \\ &= \frac{1}{2\sqrt 2\cos\theta\cos\left(\dfrac{\pi}{4}-\theta\right)} \quad \cdots [1] \end{aligned}\] が得られる. これは $\theta = 0$ のときにも成り立つ. $0 \leqq \theta \leqq \dfrac{\pi}{4}$ として, 積和の公式により $[1]$ を変形すると, \[\begin{aligned} S &= \frac{1}{\sqrt 2\left\{\cos\dfrac{\pi}{4}+\cos\left( 2\theta -\dfrac{\pi}{4}\right)\right\}} \\ &= \frac{1}{1+\sqrt 2\cos\left( 2\theta -\dfrac{\pi}{4}\right)} \end{aligned}\] が得られる. ゆえに, $S$ は $2\theta -\dfrac{\pi}{4} = 0$ つまり $\theta = \dfrac{\pi}{8}$ のとき最小値 $\dfrac{1}{1+\sqrt 2} = \sqrt 2-1$ をとるから, 求める割合は \[ (\sqrt 2-1)\div 1 = \sqrt 2-1\] である.

参考

 紙が重なった部分は, 面積が最小の場合, 正八角形を最も長い対角線で半分に折った図形である. つまり, 紙が重なっていない部分を取り除き, 折り目をもとに戻すと, 正八角形ができる.