有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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$3$ 次方程式の解の公式

カルダーノの解法

定理《カルダーノの解法》

 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ を $a \neq 0$ なる複素数とする. $3$ 次方程式 \[ ax^3+bx^2+cx+d = 0 \quad \cdots [\ast ]\] の解は次の方法で求められる.
(0)
$[\ast ]$ の両辺を $a$ で割り, 方程式 \[ x^3+lx^2+mx+n = 0 \quad \cdots [0]\] を得る.
(1)
$[0]$ に変数変換 $X = x+\dfrac{l}{3}$ を行い, 方程式 \[ X^3+3pX+2q = 0 \quad \cdots [1]\] を得る. この変形は, しばしば立方完成と呼ばれる.
(2)
$[1]$ の解は, \[\begin{aligned} X = \omega ^k\sqrt[3]{-q+\sqrt{q^2+p^3}}+\omega ^{3-k}\sqrt[3]{-q-\sqrt{q^2+p^3}} \\ (k = 0,\ 1,\ 2) \end{aligned}\] である. ただし, \[\omega = \frac{-1+\sqrt{-3}}{2}, \quad \omega ^2 = \frac{-1-\sqrt{-3}}{2}\] である.
(3)
$x = X-\dfrac{l}{3}$ から, $[\ast ]$ の解を求める.

証明

(1)
$X = x+\dfrac{l}{3}$ とおくと, $x = X-\dfrac{l}{3}$ から \[\begin{aligned} &x^3+lx^2+mx+n \\ &= \left( X-\frac{l}{3}\right) ^3+l\left( X-\frac{l}{3}\right) ^2+m\left( X-\frac{l}{3}\right) +n \\ &= X^3-lX^2+lX^2+(X\text{ の }1\text{ 次式}) \\ &= X^3+(X\text{ の }1\text{ 次式}) \end{aligned}\] となるので, $[1]$ の形の方程式が得られる.
(2)
$X = u+v$ とおくと, $(u+v)^3 = u^3+v^3+3uv(u+v)$ から, \[ [1] \iff u^3+v^3+3(uv+p)(u+v)+2q = 0\] となる. よって, \[ u^3+v^3+2q = uv+p = 0 \quad \cdots [1]'\] が成り立てば, $[1]$ の解が求まる. \[ [1]' \iff u^3+v^3 = -2q,\ u^3v^3 = -p^3\] から, $2$ 次方程式 \[ t^2+2qt-p^3 = 0\] の解として \[\begin{aligned} u^3 &= -q+\sqrt{q^2+p^3} = -q+\sqrt{q^2+p^3}, \\ v^3 &= -q-\sqrt{q^2+p^3} = -q-\sqrt{q^2+p^3} \end{aligned}\] をとると, $u^3v^3 = -p^3$ から $[1]'$ を満たす $u,$ $v$ は \[\begin{aligned} (u,v) = (\omega ^k\sqrt[3]{-q+\sqrt{q^2+p^3}},\omega ^{3-k}\sqrt[3]{-q-\sqrt{q^2+p^3}}) \\ (k = 0,\ 1,\ 2) \end{aligned}\] の $3$ 通りに定まる. よって, $[1]$ の解は, \[\begin{aligned} X = \omega ^k\sqrt[3]{-q+\sqrt{q^2+p^3}}+\omega ^{3-k}\sqrt[3]{-q-\sqrt{q^2+p^3}} \\ (k = 0,\ 1,\ 2) \end{aligned}\] の $3$ 個である.

別証明: オイラーの解法

\[\begin{aligned} &(x-u-v)(x-u\omega -v\omega ^2)(x-u\omega ^2-v\omega ) \\ &= (x-u-v) \\ &\qquad (x^2+u^2+v^2-u(\omega +\omega ^2)x+uv(\omega +\omega ^2)-v(\omega +\omega ^2)x) \\ &= (x-u-v)(x^2+u^2+v^2+xu-uv+vx) \\ &= (x^3+u^2x+v^2x+ux^2-uvx+vx^2) \\ &\qquad +(-ux^2-u^3-uv^2-u^2x+u^2v-uvx) \\ &\qquad +(-vx^2-u^2v-v^3-uvx+uv^2-v^2x) \\ &= x^3-3uvx-u^3-v^3 \end{aligned}\] であるから, \[ x^3+3px+2q = x^3-3uvx-u^3-v^3\] となるように, \[ 3p = -3uv, \quad 2q = -u^3-v^3\] とする. このとき, \[ u^3+v^3 = -2q, \quad u^3v^3 = (uv)^3 = (-p)^3 = -p^3\] となるので, 解と係数の関係により $u^3,$ $v^3$ は $t$ の $2$ 次方程式 \[ t^2+2qt-p^3 = 0\] の解になる. 残りの部分は, 上記の証明と同様である.

高校数学の問題

複素数と方程式

問題《カルダーノによる $3$ 次方程式の解法》

 $3$ 次方程式 $x^3-x-1 = 0\ \cdots [1]$ について, 次の問に答えよ.
(1)
$x = u+v$ であり, $u^3+v^3-1 = 3uv-1 = 0\ \cdots [2]$ であるならば, $[1]$ が成り立つことを示せ.
(2)
複素数 $u,$ $v$ が $[2]$ を満たすとき, $u^3,$ $v^3$ を解にもつ $2$ 次方程式を $1$ つ作れ.
(3)
$1$ の虚数立方根 $\omega = \dfrac{-1+\sqrt 3i}{2}$ を用いて $[1]$ の解を表せ.

解答例

 こちらを参照.