一般ペル方程式
一般ペル方程式
以下, $d > 1$ を無平方な (平方因数をもたない) 整数とし, $z > 0$ を整数とする.
記法
実 $2$ 次体 $\mathbb Q(\sqrt d)$ において, 基本単数を $\eta$ とおき, $\alpha = a_1+a_2\sqrt d$ $(a_1,a_2 \in \mathbb Q)$ の共役元を $\alpha ' = a_1-a_2\sqrt d$ で表す.
定義《一般ペル方程式》
$x^2-dy^2 = z,$ $x^2-dy^2 = -z,$ $|x^2-dy^2| = z$ の形の方程式を一般ペル方程式 (general Pell's equation) と呼ぶ.
定義《一般ペル方程式の原始的な解, 基本解》
- (1)
- $(x,y)$ を $|x^2-dy^2| = z$ の整数解とする. $x,$ $y$ が互いに素であるとき, $(x,y)$ は原始的 (primitive) であるという. また, $x,$ $dy$ が互いに素であるとき, $(x,y)$ は狭義原始的 (strictly primitive) であるという.
- (2)
- $|x^2-dy^2| = z$ の正の整数解 $(x,y) = (a_1,a_2),$ $(b_1,b_2)$ が
を満たすとき, $(a_1,a_2)$ は $(b_1,b_2)$ より小さい (smaller) という.$a_2 < b_2$ または “$a_1 < b_1$ かつ $a_2 = b_2$” - (3)
- $x^2-dy^2 = z,$ $x^2-dy^2 = -z,$ $|x^2-dy^2| = z$ の各方程式において, 最小の正の整数解を基本解 (fundamental solution) と呼ぶ..
定義により, $|x^2-dy^2| = z$ の狭義原始的な解は原始的である.
例《一般ペル方程式の原始的な解》
- (1)
- $|x^2-dy^2| = 1$ の整数解 $(x,y)$ は狭義原始的である.
例えば, $|x^2-2y^2| = 1$ の整数解 $(x,y) = (1,1)$ $(3,2)$ は狭義原始的である. - (2)
- $p$ を素数, $n$ を正の整数とする.
- $p \mid d$ のとき.
$|x^2-dy^2| = p^n$ の整数解 $(x,y)$ は, $p \mid x^2 = dy^2\pm p^n$ よって $p \mid x$ を満たすから, 狭義原始的でない.
例えば, $|x^2-2y^2| = 2$ の整数解 $(x,y) = (2,1),$ $(4,3)$ は原始的であるが狭義原始的でない. - $p \nmid d$ のとき.
$|x^2-dy^2| = p^n$ の整数解 $(x,y)$ が狭義原始的であることは, 原始的であることと同値で, さらに $p \nmid x,$ $p \nmid y$ であることと同値である.
これは, $x,$ $dy$ の最大公約数が $p^n$ の約数であること, 仮定, および方程式により $p \mid x \iff p \mid y$ であることから従う.
例えば, $|x^2-2y^2| = 7$ の整数解 $(x,y) = (3,1)$ は狭義原始的である. また, $|x^2-2y^2| = p^2$ ($p$: 奇素数) の整数解 $(x,y) = (p,p)$ は原始的でない.
- $p \mid d$ のとき.
$|x^2-dy^2| = p^n$ の整数解 $(x,y)$ は, $p \mid x^2 = dy^2\pm p^n$ よって $p \mid x$ を満たすから, 狭義原始的でない.
- (3)
- $|x^2-2y^2| = 7$ の基本解は $(x,y) = (3,1)$ である. また, $|x^2-5y^2| = 2$ は整数解をもたず, $|x^2-5y^2| = 4$ の基本解は $(x,y) = (3,1)$ である. さらに, $|x^2-10y^2| = 3$ は整数解をもたず, $|x^2-10y^2| = 9$ の基本解は $(x,y) = (7,2)$ である.
注意
$|x^2-dy^2| = z$ の正の整数解 $(x,y) = (a_1,a_2),$ $(b_1,b_2)$ に対して, $z = 1$ のとき,
\[ a_1 < b_1 \iff a_2 < b_2\]
が成り立つ.
しかし, $z > 1$ のとき, これは成り立たない.
例えば, $|x^2-17y^2| = 8$ の基本解は $(x,y) = (3,1)$ であり, $|x^2-17y^2| = 8$ は $y$ 成分が基本解と等しい整数解 $(x,y) = (5,1)$ をもつ.
命題《一般ペル方程式の原始的な解の生成》
- (1)
- $p_1,$ $\cdots,$ $p_r$ を相異なる素数とし, $n_1,$ $\cdots,$ $n_r$ を非負整数とする. 各番号 $i$ $(1 \leqq i \leqq r)$ に対して $|x^2-dy^2| = p_i{}^{n_i}$ が狭義原始的な整数解 $(x,y) = (a_{i,1},a_{i,2})$ をもつならば, \[ x+y\sqrt d = \pm\prod_{i = 1}^r(a_{i,1}+a_{i,2}\sqrt d) \quad \cdots [1]\] で定まる整数の組 $(x,y)$ は $|x^2-dy^2| = \prod_{i = 1}^rp_i{}^{n_i}$ の狭義原始的な整数解である.
- (2)
- $p$ を素数とし, $m,$ $n$ を正の整数とする. $|x^2-dy^2| = p^m$ が狭義原始的な整数解 $(x,y) = (a_1,a_2)$ をもつならば, \[ x+y\sqrt d = \pm (a_1+a_2\sqrt d)^n \quad \cdots [2]\] で定まる整数の組 $(x,y)$ は $|x^2-dy^2| = p^{mn}$ の狭義原始的な整数解である.
証明
対偶を示す.
- (1)
- 各 $i \in \{ 1,\dots,r\}$ に対して, $(x,y) = (a_{i,1},a_{i,2})$ を $|x^2-dy^2| = p_i{}^{n_i}$ の整数解とし, $\alpha _i = a_{i,1}+a_{i,2}\sqrt d$ とおく.
$[1]$ により定まる $|x^2-dy^2| = p_1{}^{n_1}\cdots p_r{}^{n_r}$ の整数解 $(x,y)$ が狭義原始的でないとする.
このとき, ある $j \in \{ 1,\dots,r\}$ に対して $p_j \mid x,$ $p_j \mid dy$ である.
- $p_j \mid d$ のとき. $p_j \mid da_{j,2}{}^2\pm p_j{}^{n_j} = a_{j,1}{}^2$ よって $p_j \mid a_{j,1}$ である.
- $p_j \nmid d$ のとき. $p_j \mid y$ である. よって, $\mathbb Z[\sqrt d]$ において $p_j$ は, \[ (x+y\sqrt d)\prod_{i \neq j}\alpha _i' = \pm\alpha _j\prod_{i \neq j}\alpha _i\alpha _i' = \pm\alpha _j\prod_{i \neq j}p_i{}^{n_i}\] を割り切るから, $\alpha _j$ を割り切る. したがって, $p_j \mid a_{j,1},$ $p_j \mid a_{j,2}$ である.
- (2)
- $(x,y) = (a_1,a_2)$ を $|x^2-dy^2| = p^m$ の整数解とする.
$[2]$ により定まる $|x^2-dy^2| = p^{mn}$ の整数解 $(x,y)$ が狭義原始的でないとする.
このとき, $p \mid x,$ $p \mid dy$ である.
- $p \mid d$ のとき. $p \mid da_2{}^2\pm p^m = a_1{}^2$ よって $p \mid a_1$ である.
- $p \nmid d$ のとき. $\mathbb Z[\sqrt d]$ において $p \mid y$ よって $p \mid x+y\sqrt d$ である. よって, $p$ 進加法付値の $\mathbb Q(\sqrt d)$ への延長 $v$ について \[ v(a_1+a_2\sqrt d) = \frac{1}{n}v(x+y\sqrt d) > 0\] が成り立つ. したがって, $p \mid a_1,$ $p \mid a_2$ である.
命題《異符号の一般ペル方程式の解の存在条件》
$x^2-dy^2 = -1$ が整数解をもたないとする.
このとき, $x^2-dy^2 = z$ が狭義原始的な整数解をもつことと, $x^2-dy^2 = -z$ が狭義原始的な整数解をもつことは同値である.
証明
対偶を示す.
$x^2-dy^2 = -z$ が狭義原始的な整数解をもたないとする.
$(x,y) = (x_0,y_0)$ を $x^2-dy^2 = z$ の整数解, $(x,y) = (x_1,y_1)$ を $x^2-dy^2 = -1$ の最小の正の整数解とする.
このとき,
\[ x+y\sqrt d = (x_0+y_0\sqrt d)(x_1+y_1\sqrt d)\]
で定まる整数の組 $(x,y)$ は $x^2-dy^2 = -z$ の整数解であるから, $p \mid x,$ $p \mid dy$ なる $z$ の素因数 $p$ が存在する.
- $p \mid d$ のとき. $p \mid dy_0{}^2+z = x_0{}^2$ よって $p \mid x_0$ である.
- $p \nmid d$ のとき. $p \mid y$ である. $\mathbb Z[\sqrt d]$ において, $p \mid x+y\sqrt d,$ $p \nmid x_1+y_1\sqrt d$ であるから, $p \mid x_0+y_0\sqrt d$ である. したがって, $p \mid x_0,$ $p \mid y_0$ である.
定義《集合 $S(d),$ 指数 $l_p,$ 基本解から定まる無理数 $\xi _p$》
- (1)
- ある正の整数 $l$ に対して $|x^2-dy^2| = p^l$ が狭義原始的な整数解をもつような素数 $p$ の集合を $S(d)$ で表す.
- (2)
- 各 $p \in S(d)$ に対して, $l_p$ を $|x^2-dy^2| = p^l$ が狭義原始的な整数解をもつような正の整数 $l$ の最小値とし, $(x,y) = (x_p,y_p)$ を \[\begin{cases} x^2-dy^2 = p^{l_p} & (x^2-dy^2 = -1\text{ が整数解をもつ}), \\ |x^2-dy^2| = p^{l_p} & (\text{その他}) \end{cases}\] の基本解として \[\xi _p = x_p+y_p\sqrt d\] とおく.
定理《一般ペル方程式の狭義原始的な解の存在条件》
$p$ を素数とし, $d \not\equiv 5\ (\mathrm{mod}\ 8)$ または $p \neq 2$ とする.
$p$ のある倍数 $z$ に対して $|x^2-dy^2| = z$ が狭義原始的な整数解をもつのは, $p$ が $\mathbb Q(\sqrt d)$ で分解する場合に限る.
証明
$K = \mathbb Q(\sqrt d)$ とおく.
$K$ の整数環 $O_K$ は
\[ O_K = \begin{cases}
\mathbb Z\left[\dfrac{1+\sqrt d}{2}\right] & (d \equiv 1\quad\ \; (\mathrm{mod}\ 4)), \\
\mathbb Z[\sqrt d] & (d \equiv 2,\ 3\ (\mathrm{mod}\ 4)).
\end{cases}\]
である.
$I$ を $\mathbb Z[\sqrt d]$ のすべてのイデアルからなるモノイドとし, $\sim$ を
で定まる $I$ の関係とする.
これはイデアルの乗法と両立する同値関係である.
$K$ のイデアル類群 $Cl_K$ は有限であるから, その部分モノイドとみなせる商モノイド $I/\!\sim$ も有限である.
$O_K$ において素数 $p$ が素イデアル $\mathfrak p$ と $\mathfrak p ' = \{\alpha ' \mid \alpha \in \mathfrak p\}$ に分解する, つまり $(p) = \mathfrak p\mathfrak p ' \neq \mathfrak p^2$ であるとする.
このとき, $I/\!\sim$ の有限性により,
\[ (\mathfrak p\cap \mathbb Z[\sqrt d])^l = (x+y\sqrt d), \quad 0 < l \leqq \# Cl_K \quad \cdots [1]\]
なる整数 $l,$ $x,$ $y$ が存在する.
ここで, $(\mathfrak p\cap \mathbb Z[\sqrt d])^l$ は原始的であるから, $x,$ $y$ は互いに素である.
さらに, $x^2-dy^2 = \pm p^l,$ $p \nmid d$ であるから, $x,$ $d$ は互いに素である.
ゆえに, $|x^2-dy^2| = p^l$ は狭義原始的な整数解ともたない.
逆を示すため, $z > 1$ が $K$ で分解しない素因数 $p$ をもつとする. $(x,y)$ を $|x^2-dy^2| = z$ の整数解とする.
$\mathfrak a \sim \mathfrak b$ |
$\iff$ $\mathfrak b = (\lambda )\mathfrak a$ または $\mathfrak a = (\lambda )\mathfrak b$ なる $\lambda \in \mathbb Z[\sqrt d]\setminus\{ 0\}$ が存在 |
逆を示すため, $z > 1$ が $K$ で分解しない素因数 $p$ をもつとする. $(x,y)$ を $|x^2-dy^2| = z$ の整数解とする.
- $p \neq 2$ が $K$ で不分岐, または “$d \equiv 3\ (\mathrm{mod}\ 4)$ かつ $p = 2$ が $K$ で不分岐” であるとき. $O_K$ において, 単項イデアル $(z)$ は \[ (z) = (x+y\sqrt d)(x-y\sqrt d)\] と分解し, 両辺は $(p)$ で割り切れる. 素イデアル $(p)$ は自己共役であるから, 右辺の各因子を割り切り, よって $O_K$ において $(x+y\sqrt d),$ $(x-y\sqrt d)$ はともに $(p)$ で割り切れる. 仮定により \[ p\,O_K\cap\mathbb Z[\sqrt d] = p\,\mathbb Z[\sqrt d]\] であるから, $\mathbb Z[\sqrt d]$ において $(x+y\sqrt d),$ $(x-y\sqrt d)$ は $(p)$ で割り切れる. したがって, $p \mid x+y\sqrt d$ であり, $p \mid x,$ $p \mid y$ である.
- $p$ が $K$ で分岐するとき. $p \mid d$ であるから, $p$ は $dy^2\pm z = x^2$ を割り切り, したがって $p \mid x$ である.
系《指数 $l_p$ の評価》
“$d \equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 4)$ かつ $p = 2$” でないならば, 各 $p \in S(d)$ に対して $l_p$ は $\mathbb Q(\sqrt d)$ の類数以下である.
証明
上記の証明の $[1]$ により, 求める主張が従う.
補題《偶数 $z$ に対する $|x^2-dy^2| = z$ の解》
$d \equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 4)$ であるとする.
- (1)
- $z \equiv 2\ (\mathrm{mod}\ 4)$ ならば, $|x^2-dy^2| = z$ は整数解をもたない. さらに, $2 \in S(d)$ ならば, $l_2 \geqq 2$ が成り立つ.
- (2)
- $2 \in S(d)$ かつ $l_2 = 2$ が成り立つのは, $\eta \notin \mathbb Z[\sqrt d]$ である場合に限る. このとき, $\xi _2 = 2\eta$ が成り立つ.
- (3)
- $d \equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 8)$ かつ $z \equiv 4\ (\mathrm{mod}\ 8)$ ならば, $|x^2-dy^2| = z$ のすべての整数解は偶数の組である. さらに, $d \equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 8)$ ならば, $\eta \in \mathbb Z[\sqrt d]$ である.
- (4)
- $d \equiv 5\ (\mathrm{mod}\ 8)$ かつ $z \equiv 0\ (\mathrm{mod}\ 8)$ ならば, $|x^2-dy^2| = z$ のすべての整数解は偶数の組である.
証明
- (1)
- 仮定により \[ x^2-dy^2 \equiv x^2-y^2 \not\equiv 2 \pmod 4\] であるから, $z \equiv 2\ (\mathrm{mod}\ 4)$ のとき $|x^2-dy^2| = z$ は整数解をもたない. よって, $2 \in S(d)$ ならば $l_2 \geqq 2$ が成り立つ.
- (2)
- $\eta \notin \mathbb Z[\sqrt d]$ とする.
このとき, $\eta = (x+y\sqrt d)/2$ で定まる奇数の組 $(x,y)$ は $|x^2-dy^2| = 2^2$ を満たす.
よって, $x,$ $dy$ は互いに素であり, したがって (1) により $2 \in S(d)$ かつ $l_2 = 2$ が成り立つ.
このとき, $\eta$ の最小性により $\xi _2 = 2\eta$ が成り立つ.
逆に, $2 \in S(d)$ かつ $l_2 = 2$ が成り立つとき, $|x^2-dy^2| = 2^2$ の狭義原始的な整数解 $(x,y)$ は \[ (x+y\sqrt d)/2 \in O_K^\times\setminus\mathbb Z[\sqrt d]^\times\] を満たすから, \[ O_K^\times = \{\pm\eta ^n \mid n \in \mathbb Z\}\] により $\eta \notin \mathbb Z[\sqrt d]$ である. - (3)
- $d \equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 8)$ とする. このとき, \[\begin{aligned} &1^2-d\cdot 1^2 \equiv 1^2-d\cdot 3^2 \\ &\equiv 3^2-d\cdot 1^2 \equiv 3^2-d\cdot 3^2 \equiv 0 \pmod 8 \end{aligned}\] であるから, $z \equiv 4\ (\mathrm{mod}\ 8)$ のとき $|x^2-dy^2| = z$ のすべての整数解 $(x,y)$ は偶数の組である. よって, (2) により $\eta \in \mathbb Z[\sqrt d]$ である.
- (4)
- $d \equiv 5\ (\mathrm{mod}\ 8)$ のとき, \[\begin{aligned} &1^2-d\cdot 1^2 \equiv 1^2-d\cdot 3^2 \\ &\equiv 3^2-d\cdot 1^2 \equiv 3^2-d\cdot 3^2 \equiv 4 \pmod 8 \end{aligned}\] であるから, $z \equiv 0\ (\mathrm{mod}\ 8)$ のとき $|x^2-dy^2| = z$ のすべての整数解 $(x,y)$ は偶数の組である.
定理《集合 $S(d)$ の構成要素》
- (1)
- $d \equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 8)$ または “$d \equiv 5\ (\mathrm{mod}\ 8)$ かつ $\eta \in \mathbb Z[\sqrt d]$” または $d \equiv 2,$ $3\ (\mathrm{mod}\ 4)$ ならば, $S(d)$ は $\mathbb Q(\sqrt d)$ で分解するすべての素数から成る.
- (2)
- $d \equiv 5\ (\mathrm{mod}\ 8)$ かつ $\eta \notin \mathbb Z[\sqrt d]$ ならば, $S(d)$ は $\mathbb Q(\sqrt d)$ で分解するすべての素数と $2$ から成る.
証明
$d \equiv 5\ (\mathrm{mod}\ 8)$ かつ $\eta \in \mathbb Z[\sqrt d]$ ならば, 補題の (1), (2), (4) により各正の整数 $l$ に対して $|x^2-dy^2| = 2^l$ は狭義原始的な整数解をもたないから, $2 \notin S(d)$ である.
このことと上記の定理, 補題の (2) をあわせると, (1), (2) が得られる.
定理《一般ペル方程式の解の公式》
- (1)
- $|x^2-dy^2| = z$ が狭義原始的な整数解をもつのは, 各素数 $p$ に対してある非負整数 $n_p$ が存在して \[\mathrm{ord}_p(z) = \left\{\begin{array}{lll} l_pn_p & (p \in S(d)), \\ 0 & (p \notin S(d)) \end{array}\right. \quad \cdots [1]\] が成り立つ場合に限る. ここで, $\eta \notin \mathbb Z[\sqrt d]$ のとき, “$l_2 = 2$ かつ $n_2 \in \{ 0,1\}$” である. この場合に, その狭義原始的な整数解 $(x,y)$ はある整数 $n,$ 無理数 $\xi _p^* \in \{\xi _p,\xi _p'\}$ $(p \in S(d))$ に対して \[ x+y\sqrt d = \pm\eta ^n\prod_{p \in S(d)}\xi _p^*{}^{n_p} \quad \cdots [2]\] を満たす. ここで, \[\eta \notin \mathbb Z[\sqrt d],\ z \equiv 1\ (\mathrm{mod}\ 2) \Longrightarrow n \equiv 0\ (\mathrm{mod}\ 3) \quad \cdots [3]\] である.
- (2)
- $|x^2-dy^2| = z^2$ のすべての整数解 $(x,y)$ はある整数 $n,$ 非負整数 $n_p,$ 無理数 $\xi _p^* \in \{\xi _p,\xi _p'\}$
$(p \in S(d))$ に対して \[ x+y\sqrt d = \pm\eta ^n\prod_{p \in S(d)}\xi _p^*{}^{n_p}p^{\mathrm{ord}_p(z)-l_pn_p/2}\prod_{p \notin S(d)}p^{\mathrm{ord}_p(z)} \quad \cdots [4]\] を満たす. ここで, $[3]$ と \[ l_pn_p \equiv 0 \pmod 2, \quad n_p \leq 2\,\mathrm{ord}_p(z)/l_p \quad \cdots [5]\] が成り立つ.
参考文献
- [1]
- Takashi Hirotsu, General Pell's equations and angle bisectors between planar lines with rational slopes, Integers, 24 (2024), #A111, 26 pp.