問題研究のすすめ: 過去問研究の一歩先へ
こちらは, 国公立大・難関大の数学の $2$ 次試験対策の学習方法に関する記事です.
基礎が十分に身についていない場合には学習方法が合わない場合がございますので, ご注意ください.
「過去問研究」vs.「問題研究」
皆さんは, どのように $2$ 次試験対策を進めているでしょうか.
数年分 (場合によってはそれ以上) の過去問を実際に解き, 出題内容・分量・難易度を確認して, 傾向を分析し, 弱点の補強を行うという対策はよく行われていると思います.
この「過去問研究」は求められる実力と自分の実力との差を把握するうえで欠かせないものですが, 過去問を解くだけでは十分な $2$ 次試験対策は行えません.
この方法には, 次のような欠点があるからです.
実際に出題された問題を解きたいという受験生の気持ちはわかりますが, 過去問ばかりを解くのは非効率です.
適切な問題集を使う方が実力を伸ばすうえで効果的であるのは, 次の理由によります.
これは, 年間数十件の数学の教材の編集に携わる, 現役の編集者・元塾経営者からのアドバイスです.
「問題の形式を調べる」「どの程度の実力が求められるのかを確認する」「現時点での実力を試す」「傾向を分析する」といった目的以外で過去問ばかりを解く勉強方法は避けた方が良いでしょう. 上記の欠点を補い, より効果的な $2$ 次試験対策を行うためには, 単なる「過去問研究」ではなく, それを一歩先に進めた「問題研究」を行う必要があります. そこで解くべき問題が, 次のような意味で重要な「有名問題」です.
大学入試には,「ピタゴラスの $3$ つ組」「カタラン数」「フェルマーの小定理」「チェビシェフ多項式」「フィボナッチ数列」「関数のテイラー展開」「ベータ関数」などの多くの頻出テーマがあります.
これらのテーマの「有名問題」を過去問から探し出すには, 専門的で広汎な知識に加えて, かなりの労力が必要です.
受験生が独力で「有名問題」を探すのは難しいでしょう.
そんなときに役立つのが『高校数学 至極の有名問題 240—文理対応・国公立大~難関大レベル』です.
このホームページの問題集「有名問題・定理から学ぶ高校数学」(こちら) から, 特に重要な問題を厳選しました.
現役の教材編集者が学習塾経営時代から $10$ 年以上の歳月をかけて問題を収集して制作した, 本格派問題集です.
に大きな特長があります.
全国の書店や, Amazon (こちら), 楽天ブックス (こちら) などのオンライン・ストアでお求めいただけます.
他の問題集に比べて一般的で難しい問題を扱っていますが, それゆえに多くの問題を解く力が養えるように問題を厳選してあります. 特に,[定理]のアイコンがついた「有名問題」は, 多くの入試問題の背景にある定理の本質が学べるように, 可能な限り網羅的な形に編集した重要問題です. 「有名問題」は, そのものが宝石的な価値をもち, 非常に多くの問題に関連しています. この問題集に掲載された「有名問題」は, まったく同じ形式で出題されることは少ないかもしれませんが, 典型問題 (多くが「有名問題」の特別な場合) を解くために重要なテクニックが詰まった親玉的な問題であるため, 実力を伸ばすのに最適な問題であると言えます.
- 同じ大学で数年以内に, 過去問の類題が出されることは少ない (私立大学, 医学部などの一部の学部でよく出題される基本的な小問を除く).
- 同じ大学で数年以内に, 過去問と同じ題材に関して, 異なる定理を背景とする問題が出されることは多い (受験生には予想が難しい).
- 新傾向の問題, これまであまり見られなかった問題も, 少なからず出題されている.
- 過去問は, 教材として最適であるとは限らない (同問を避ける, 試験時間内に解答できる分量にするなどの出題側の事情で, オーソドックスな問題に恣意的なアレンジが加えられることも多い). 独特なアレンジを含む問題は, 一般的な問題に応用できるテクニックを学ぶのに適していない.
- 実は, 多くの問題集は, 各問題に対して数十問以上の類題から最も学習効果が高いと思われる問題を厳選し, 必要であればさらに改題, ブラッシュ・アップするという編集作業を経て制作されている. そのため, 過去問のみでは問題集のような高い学習効果は見込めない.
「問題の形式を調べる」「どの程度の実力が求められるのかを確認する」「現時点での実力を試す」「傾向を分析する」といった目的以外で過去問ばかりを解く勉強方法は避けた方が良いでしょう. 上記の欠点を補い, より効果的な $2$ 次試験対策を行うためには, 単なる「過去問研究」ではなく, それを一歩先に進めた「問題研究」を行う必要があります. そこで解くべき問題が, 次のような意味で重要な「有名問題」です.
- 典型問題の多くは,「有名問題」の特別な場合を扱ったものである.
- 「有名問題」そのものも, 時代を問わず出題され続けている.
- 「有名問題」は, 高校の範囲で少し手を伸ばせば届くかその先にある重要な定理を背景にもつ.
- 場当たり的な問題ではなく明確な動機をもつ “ 有名問題 ” のみから高校数学の主要なテーマを深く学ぶことができるという構成
- 大学入試後を見据えた問題の背景の詳しい解説
他の問題集に比べて一般的で難しい問題を扱っていますが, それゆえに多くの問題を解く力が養えるように問題を厳選してあります. 特に,[定理]のアイコンがついた「有名問題」は, 多くの入試問題の背景にある定理の本質が学べるように, 可能な限り網羅的な形に編集した重要問題です. 「有名問題」は, そのものが宝石的な価値をもち, 非常に多くの問題に関連しています. この問題集に掲載された「有名問題」は, まったく同じ形式で出題されることは少ないかもしれませんが, 典型問題 (多くが「有名問題」の特別な場合) を解くために重要なテクニックが詰まった親玉的な問題であるため, 実力を伸ばすのに最適な問題であると言えます.
『至極の有名問題 240』の使い方 (一例)
「問題研究」で『高校数学 至極の有名問題 240: 文理対応・国公立大~難関大レベル』(以下『至極の有名問題 240』と省略) を使うには, 次のような手順での勉強方法をおすすめします.
まず, 大学のホームページや, いわゆる赤本, 青本, 入試問題集などで, 志望校の過去問を調べます.
次に,『至極の有名問題 240』で類題を探します. この問題集には問題が単元別に収録されており, 各問題にはタイトルの前に小単元 (定理・公式の名称, 問題のタイプなど) が記されているので, それを頼りに探しましょう. 例えば, 過去問で $F_1 = F_2 = 1,$ $F_{n+2} = F_n+F_{n+1}$ で定まる数列 $\{ F_n\}$ に関する問題があったとしましょう. 「§15 数列」の「$3$ 項間漸化式」の問題として, 次の問題が見つかります. 過去問で扱われていない部分があれば, それを解きます (できるだけ多くのテクニックを吸収しようする姿勢が重要です).
さらに, 参 を読むと, 過去問は「フィボナッチ数列」の問題であったことがわかります.
ここで紹介されている内容は覚えなくてもよいですが, 知っておくと有利な情報も多いので, 余裕のある方は読んでおくとよいでしょう.
例えば,「フィボナッチ数列」の隣り合う $2$ 項の比は $\dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ に収束するという定理 (数学 III の範囲) も入試問題としてよく出題されているので, これを確かめるだけでも $1$ 問分の演習になります.
また, 問 005 は「フィボナッチ数列」に関する問題があることがわかるので, それを解きます. この問題を解くことで, $3$ 項間漸化式をもとに定まる数列の性質を証明する際に, 数学的帰納法で $n = k,$ $k+1$ ($k$: 正の整数) の場合を仮定するというテクニックを身に着けることができます. 索引でも「フィボナッチ数列」の問題が見つけられます. このように過去問の出題テーマについて「問題研究」を繰り返すことで, 単なる「過去問研究」を強化し, より広範囲の問題に対応するための知識を身に着けることができます.
- (1)
- 志望校の過去問を調べる (時間があればそれを解く).
- (2)
- 『至極の有名問題 240』で類題を探して解く.
- (3)
- 類題の 参 でその出題テーマを調べる (内容は覚えなくても良い).
- (4)
- 類題の 参 や索引でその出題テーマに関する別の問題を探して解く.
次に,『至極の有名問題 240』で類題を探します. この問題集には問題が単元別に収録されており, 各問題にはタイトルの前に小単元 (定理・公式の名称, 問題のタイプなど) が記されているので, それを頼りに探しましょう. 例えば, 過去問で $F_1 = F_2 = 1,$ $F_{n+2} = F_n+F_{n+1}$ で定まる数列 $\{ F_n\}$ に関する問題があったとしましょう. 「§15 数列」の「$3$ 項間漸化式」の問題として, 次の問題が見つかります. 過去問で扱われていない部分があれば, それを解きます (できるだけ多くのテクニックを吸収しようする姿勢が重要です).
また, 問 005 は「フィボナッチ数列」に関する問題があることがわかるので, それを解きます. この問題を解くことで, $3$ 項間漸化式をもとに定まる数列の性質を証明する際に, 数学的帰納法で $n = k,$ $k+1$ ($k$: 正の整数) の場合を仮定するというテクニックを身に着けることができます. 索引でも「フィボナッチ数列」の問題が見つけられます. このように過去問の出題テーマについて「問題研究」を繰り返すことで, 単なる「過去問研究」を強化し, より広範囲の問題に対応するための知識を身に着けることができます.