くじ引きの公平性
くじ引きの公平性
定理《くじ引きの公平性》
くじ引きで引いたくじをもとに戻さないとき, 当たりを引く確率は引く順番によらず一定である.
証明 1
$r$ 本だけ当たりを含む $n$ 本のくじで $k$ 番目までにくじを引く場合の数は, ${}_n\mathrm P_k$ 通りである.
$k$ 番目に当たりを引くとき, $k$ 番目のくじの引き方が $r$ 通りあり,
$1$ 番目から $k-1$ 番目までのくじの引き方が ${}_{n-1}\mathrm P_{k-1}$ 通りあるから,
$k$ 番目に当たりを引く場合の数は $r{}_{n-1}\mathrm P_{k-1}$ 通りである.
ゆえに, $k$ 番目に当たりを引く確率は,
\[\frac{r{}_{n-1}\mathrm P_{k-1}}{{}_n\mathrm P_k} = \frac{r(n-1)(n-2)\cdots (n-k+1)}{n(n-1)(n-2)\cdots (n-k+1)} = \frac{r}{n}\]
である.
証明 2
$r$ 本だけ当たりを含む $n$ 本のくじで $k$ 番目にくじを引くとき,
当たりが $a$ 本, はずれが $n-k+1-a$ 本残っているとして,
当たりを引く確率を $p_k$ とおく.
このとき,
\[ p_k = \dfrac{a}{n-k+1} \quad \cdots [1]\]
である.
$k+1$ 番目で当たりを引くのは,
- (i)
- $k$ 番目で当たりを引き, $a-1$ 本だけ当たりを含む残り $n-k$ 本から当たりを引く
- (ii)
- $k$ 番目ではずれを引き, $a$ 本だけ当たりを含む残り $n-k$ 本から当たりを引く
証明 3: 二項係数の等式を利用
$r$ 本だけ当たりを含む $n$ 本のくじで $k+1$ 番目にくじを引く場合を考える.
その前の $k$ 回で当たりが $l$ 本, はずれが $k-l$ 本出たとき, $k+1$ 番目で当たりを引く確率は,
\[\frac{{}_r\mathrm C_l\cdot{}_{n-r}\mathrm C_{k-l}}{{}_n\mathrm C_k}\cdot\frac{r-l}{n-k} = \frac{r}{n}\cdot\frac{{}_{r-1}\mathrm C_l\cdot{}_{n-r}\mathrm C_{k-l}}{{}_{n-1}\mathrm C_k}\]
である.
ここで, 整数 $l$ は $0$ 以上 $k$ 以下の範囲を動くから, $k+1$ 番目で当たりを引く確率は,
\[\begin{aligned}
&\sum_{l = 0}^k\frac{r}{n}\cdot\frac{{}_{r-1}\mathrm C_l\cdot{}_{n-r}\mathrm C_{k-l}}{{}_{n-1}\mathrm C_k} \\
&= \frac{r}{n}\cdot\frac{1}{{}_{n-1}\mathrm C_k}\sum_{l = 0}^k{}_{r-1}\mathrm C_l\cdot{}_{n-r}\mathrm C_{k-l} \\
&= \frac{r}{n}\cdot\frac{1}{{}_{n-1}\mathrm C_k}\cdot{}_{n-1}\mathrm C_k \\
&= \frac{r}{n}
\end{aligned}\]
である.
ここで, $(1+x)^{n_1}(1+x)^{n_2} = (1+x)^{n_1+n_2}$ の展開式の $x^k$ の係数を比較することで得られる二項係数の等式
\[\sum_{l = 0}^k{}_{n_1}\mathrm C_l\cdot{}_{n_2}\mathrm C_{k-l} = {}_{n_1+n_2}\mathrm C_k\]
を使った.
ゆえに, くじ引きで当たりを引く確率は, 引く順番によらず $\dfrac{r}{n}$ で一定である.
高校数学の問題
確率
問題《くじ引きの公平性》
$r$ 本だけ当たりを含む $n$ 本のくじにおいて $k$ 番目にくじを引くとき $(r,\ k \leqq n),$
当たりを引く確率 $p_k$ が $\dfrac{r}{n}$ であることを, 次の $2$ つの方法で示せ.
ただし, $1$ 度引いたくじはもとに戻さないものとする.
- (A)
- $k$ 番目までにくじを引く場合の数に着目して, $p_k$ を求める.
- (B)
- $k$ 番目 $(k < n)$ にくじを引くときに当たりが $a$ 本残っているとする. このとき, $k+1$ 番目に当たりを引く確率 $p_{k+1}$ が $p_k$ に等しいことを示す.
解答例
こちらを参照.
問題《くじ引きの条件付き確率》
$r$ 本だけ当たりを含む $n$ 本のくじから, A, B の $2$ 人がこの順番に $1$ 本ずつくじを引く.
A が当たりを引くという事象を $A,$ B が当たりを引くという事象を $B$ とおく.
引いたくじはもとに戻さないとして, 次のことを示せ.
- (1)
- $P(A) = P(B)$ が成り立つ.
- (2)
- $P_A(B) = P_B(A)$ が成り立つ.
解答例
こちらを参照.