有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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代数拡大体

代数拡大体

 四則演算が定義され, 交換法則と結合法則, 分配法則を満たす数の集合を (field) と呼ぶ. 有理数全体 $\mathbb Q$ は通常の四則演算に関して体を成す. これを有理数体 (field of rational numbers) と呼ぶ. 現代数学において, 方程式論は体の理論, 体論として展開されている.

定義《代数拡大体》

(1)
体 $K$ の要素を係数とするある多項式 $f(x)$ に対して $f(x) = 0$ の解となるような数は $K$ 上代数的 (algebraic) であるという.
(2)
体 $K$ 上代数的な数 $\alpha$ に対して, $f(\alpha ) = 0$ を満たす次数最小の多項式 $f(x)$ を $\alpha$ の最小多項式 (minimal polynomial) と呼ぶ.
(3)
$K$ を含む体 $L$ のすべての要素が $K$ 上代数的であるとき, $L$ を $K$ の代数拡大体 (algebraic extension) と呼ぶ.

例《$2$ 次体》

 平方数でない整数 $d$ に対して, 集合 $\{ a+b\sqrt d|a,b \in \mathbb Q\}$ は $\mathbb Q$ の代数拡大体である. これを $2$ 次体 (quadratic field) と呼ぶ.

高校数学の問題

数と式

問題《$2$ 次体の性質》

 $d$ を平方数でない正の整数とする. 次のことを示せ.
(1)
$\sqrt d$ は無理数である.
(2)
$a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$ を有理数とする. このとき, \[ a_1+a_2\sqrt d = b_1+b_2\sqrt d \Longrightarrow (a_1,a_2) = (b_1,b_2)\] が成り立つ.
(3)
$f(x),$ $g(x)$ を $g(\sqrt d) \neq 0$ なる有理数係数多項式とする. このとき, \[\frac{f(\sqrt d)}{g(\sqrt d)} = c_1+c_2\sqrt d\] なる有理数 $c_1,$ $c_2$ の組がただ $1$ 組存在する.

解答例

 こちらを参照.

問題《$2$ 次体のノルムと単数》

 有理数 $a_1,$ $a_2$ を用いて \[\alpha = a_1+a_2\sqrt 5\] の形に表される実数 $\alpha$ について, その全体の集合を $K$ とおき, \[\tilde\alpha = a_1-a_2\sqrt 5, \quad N(\alpha ) = \alpha\tilde\alpha = a_1{}^2-5a_2{}^2\] と定める. さらに, 偶奇が等しい整数 $a_1,$ $a_2$ を用いて \[\alpha = \dfrac{a_1+a_2\sqrt 5}{2}\] の形に表される実数 $\alpha$ 全体の集合を $O$ とおく.
(1)
$K$ の要素 $\alpha,$ $\beta$ に対して, \[ N(\alpha\beta ) = N(\alpha )N(\beta )\] が成り立つことを示せ.
(2)
$O$ の要素 $\alpha,$ $\beta$ に対して, $\alpha\beta$ もまた $O$ の要素であることを示せ.
(3)
$O$ の要素 $\alpha$ に対して, $N(\alpha )$ は整数であることを示せ.
(4)
$O$ の要素 $\varepsilon$ に対して, \[\varepsilon ^{-1} \in O \iff N(\varepsilon ) = \pm 1\] であることを示せ.
(5)
$\varepsilon _0,$ $\varepsilon _0{}^{-1} \in O,$ $\varepsilon _0 > 1$ を満たす最小の正の数は $\varepsilon _0 = \dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ であることが知られている. $\varepsilon ^{-1} \in O$ を満たす $O$ の要素 $\varepsilon$ は, この $\varepsilon _0$ を用いて $\varepsilon = \pm\varepsilon _0{}^n$ ($n$: 整数) の形に表されることを示せ.

解答例

 こちらを参照.

複素数と方程式

問題《虚数単位の最小多項式》

 有理数係数多項式 $f(x)$ に対して, $f(i) = 0$ であるならば, $f(x)$ は $x^2+1$ で割り切れることを示せ. また, $x^2+1$ はこの条件を満たす次数最小の有理数係数多項式であることを示せ.
(参考: $2022$ 宮城教育大)

解答例

 こちらを参照.