平方根
平方根
定義《平方根》
$a$ を $0$ 以上の実数とする.
$x^2 = a$ の実数解を $a$ の平方根 (square root) と呼び,
そのうち $0$ 以上の解を $\sqrt a$ で表す.
定理《平方根の性質》
$a,$ $b$ を正の数, $c$ を実数とする.
このとき,
- (1)
- $(\sqrt a)^2 = a$
- (2)
- $\sqrt a\sqrt b = \sqrt{ab},$ $\dfrac{\sqrt a}{\sqrt b} = \sqrt{\dfrac{a}{b}}$
- (3)
- $\sqrt{c^2} = |c|,$ $\sqrt{c^2a} = |c|\sqrt a$
- (4)
- $(x+y\sqrt a)(x-y\sqrt a) = x^2-ay^2,$ $\dfrac{1}{x+y\sqrt a} = \dfrac{x-y\sqrt a}{x^2-ay^2}$
定理《平方根の無理性》
正の整数 $d$ が平方数でないならば, $\sqrt d$ は無理数である.
問題《$2$ 次体の性質》
$d$ を平方数でない正の整数とする.
次のことを示せ.
- (1)
- $\sqrt d$ は無理数である.
- (2)
- $a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$ を有理数とする. このとき, \[ a_1+a_2\sqrt d = b_1+b_2\sqrt d \Longrightarrow (a_1,a_2) = (b_1,b_2)\] が成り立つ.
- (3)
- $f(x),$ $g(x)$ を $g(\sqrt d) \neq 0$ なる有理数係数多項式とする. このとき, \[\frac{f(\sqrt d)}{g(\sqrt d)} = c_1+c_2\sqrt d\] なる有理数 $c_1,$ $c_2$ の組がただ $1$ 組存在する.
解答例
- (1)
- $\sqrt d$ が有理数である, つまり $\sqrt d$ が $\sqrt d = \dfrac{m}{n}$ ($m,$ $n$: 正の整数) と表されるとする.
このとき, $n\sqrt d = m$ から,
\[ n^2d = m^2\]
となる.
各素数 $p$ に対して, $m^2$ よって $n^2d$ の素因数分解における $p$ の指数は偶数であるから, $d$ の素因数分解における $p$ の指数も偶数である.
これは $d$ が平方数でないことに反する.
ゆえに, 冒頭の仮定は誤りで, 示すべき命題は真である. - (2)
- $a_1+a_2\sqrt d = b_1+b_2\sqrt d$ のとき, $(a_2-b_2)\sqrt d = b_1-a_1$ となるが, $\sqrt d$ は無理数であるから $b_1-a_1 = 0,$ $a_2-b_2 = 0$ となり, $(a_1,a_2) = (b_1,b_2)$ となる.
- (3)
- $(\sqrt d)^{2k} = d^k,$ $(\sqrt d)^{2k+1} = d^k\sqrt d$ ($k$: 非負整数) であるから, ある有理数 $a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$ に対して $f(\sqrt d) = a_1+a_2\sqrt d,$ $g(\sqrt d) = b_1+b_2\sqrt d$ となり, \[\begin{aligned} \frac{f(\sqrt d)}{g(\sqrt d)} &= \frac{a_1+a_2\sqrt d}{b_1+b_2\sqrt d} \\ &= \frac{(a_1+a_2\sqrt d)(b_1-b_2\sqrt d)}{(b_1+b_2\sqrt d)(b_1-b_2\sqrt d)} \\ &= \frac{a_1b_1-a_2b_2d}{b_1{}^2-b_2{}^2d}+\frac{-a_1b_2+a_2b_1}{b_1{}^2-b_2{}^2d}\sqrt d \end{aligned}\] ($2$ つの分数は有理数) となる. (2) から, この表し方はただ $1$ 通り
別解
- (3)
- $f(x),$ $g(x)$ を $x^2-d$ で割った余りをそれぞれ $a_1+a_2x,$ $b_1+b_2x$ ($a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$: 有理数) とおく. すると, $f(\sqrt d) = a_1+a_2\sqrt d,$ $g(\sqrt d) = b_1+b_2\sqrt d$ となる. (以下, 同様)
参考
- 四則演算が定義され, 交換法則, 結合法則, 分配法則を満たす数の集合で, 複数の要素をもつものを「
体 」(field) と呼ぶ. 例えば, 有理数全体 $\mathbb Q$ は通常の四則演算に関して「体」をなす. これを「有理数体」(field of rational numbers) と呼ぶ. 現代数学において, 方程式論は「体」の理論,「体論」として展開されている. - 平方数でない整数 $d$ に対して, $\mathbb Q$ と $x^2 = d$ の解 $x = \pm\sqrt d$ を含む最小の「体」は $\{ a_1+a_2\sqrt d \mid a_1,a_2 \in \mathbb Q\}$ であることが知られている. この形の「体」を「$2$ 次体」(quadratic field) と呼ぶ. このように,「体」$K$ の要素を係数とする多項式 $f(x)$ に対して, $K$ と方程式 $f(x) = 0$ の解を含む最小の「体」を $f(x)$ の $K$ 上の「最小分解体」(smallest splitting field) と呼ぶ. ある有理数係数多項式の $\mathbb Q$ 上の「最小分解体」を「代数体」(algebraic field) と呼ぶ.
- 一般に, $u$ が無理数であるとき, すべての有理数 $a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$ に対して \[ a_1+a_2u = b_1+b_2u \Longrightarrow (a_1,a_2) = (b_1,b_2)\] が成り立つ.
問題《$2$ 次体のノルムと単数》
有理数 $a_1,$ $a_2$ を用いて
\[\alpha = a_1+a_2\sqrt 5\]
の形に表される実数 $\alpha$ について, その全体の集合を $K$ とおき,
\[\tilde\alpha = a_1-a_2\sqrt 5, \quad N(\alpha ) = \alpha\tilde\alpha = a_1{}^2-5a_2{}^2\]
と定める.
さらに, 偶奇が等しい整数 $a_1,$ $a_2$ を用いて
\[\alpha = \dfrac{a_1+a_2\sqrt 5}{2}\]
の形に表される実数 $\alpha$ 全体の集合を $O$ とおく.
- (1)
- $K$ の要素 $\alpha,$ $\beta$ に対して, \[ N(\alpha\beta ) = N(\alpha )N(\beta )\] が成り立つことを示せ.
- (2)
- $O$ の要素 $\alpha,$ $\beta$ に対して, $\alpha\beta$ もまた $O$ の要素であることを示せ.
- (3)
- $O$ の要素 $\alpha$ に対して, $N(\alpha )$ は整数であることを示せ.
- (4)
- $O$ の要素 $\varepsilon$ に対して, \[\varepsilon ^{-1} \in O \iff N(\varepsilon ) = \pm 1\] であることを示せ.
- (5)
- $\varepsilon _0,$ $\varepsilon _0{}^{-1} \in O,$ $\varepsilon _0 > 1$ を満たす最小の正の数は $\varepsilon _0 = \dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ であることが知られている. $\varepsilon ^{-1} \in O$ を満たす $O$ の要素 $\varepsilon$ は, この $\varepsilon _0$ を用いて $\varepsilon = \pm\varepsilon _0{}^n$ ($n$: 整数) の形に表されることを示せ.
解答例
- (1)
- $\alpha = a_1+a_2\sqrt 5,$ $\beta = b_1+b_2\sqrt 5$ ($a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$: 有理数) とおく. \[\begin{aligned} \alpha\beta &= (a_1+a_2\sqrt 5)(b_1+b_2\sqrt 5) \\ &= (a_1b_1+5a_2b_2)+(a_1b_2+a_2b_1)\sqrt 5 \end{aligned}\] から, \[\begin{aligned} N(\alpha\beta ) &= (a_1b_1+5a_2b_2)^2-5(a_1b_2+a_2b_1)^2 \\ &= (a_1{}^2b_1{}^2+10a_1a_2b_1b_2+25a_2{}^2b_2{}^2) \\ &\qquad -5(a_1{}^2b_2{}^2+2a_1a_2b_1b_2+a_2{}^2b_1{}^2) \\ &= a_1{}^2b_1{}^2-5a_1{}^2b_2{}^2-5a_2{}^2b_1{}^2+25a_2{}^2b_2{}^2 \\ &= (a_1{}^2-5a_2{}^2)(b_1{}^2-5b_2{}^2) \\ &= N(\alpha )N(\beta ) \end{aligned}\] が成り立つ.
- (2)
- \[\begin{aligned}
\alpha\beta &= \frac{a_1+a_2\sqrt 5}{2}\cdot\frac{b_1+b_2\sqrt 5}{2} \\
&= \frac{1}{2}\left(\frac{a_1b_1+5a_2b_2}{2}+\frac{a_1b_2+a_2b_1}{2}\sqrt 5\right)
\end{aligned}\]
である.
- (i)
- $a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$ が偶数のとき. $4$ の倍数の和 $a_1b_1+5a_2b_2,$ $a_1b_2+a_2b_1$ は $4$ の倍数である.
- (ii)
- $a_1,$ $a_2$ が偶数, $b_1,$ $b_2$ が奇数のとき. \[\begin{aligned} a_1b_1+5a_2b_2 &= 2p_1(2q_1+1)+5\cdot 2p_2(2q_2+1) \\ &= 4(p_1q_1+5p_2q_2+2p_2)+2(p_1+p_2), \\ a_1b_2+a_2b_1 &= 2p_1(2q_2+1)+2p_2(2q_1+1) \\ &= 4(p_1q_2+p_2q_1)+2(p_1+p_2) \end{aligned}\] を $4$ で割った余りはいずれも $2(p_1+p_2)$ を $4$ で割った余りに等しい.
- (iii)
- $a_1,$ $a_2$ が奇数, $b_1,$ $b_2$ が偶数のとき. (ii) と同様に, $a_1b_1+5a_2b_2,$ $a_1b_2+a_2b_1$ を $4$ で割った余りはいずれも $2(q_1+q_2)$ を $4$ で割った余りに等しい.
- (iv)
- $a_1,$ $a_2,$ $b_1,$ $b_2$ が奇数のとき. \[\begin{aligned} a_1b_1+5a_2b_2 &= (2p_1\!+\!1)(2q_1\!+\!1)+5(2p_2\!+\!1)(2q_2\!+\!1) \\ &= 4(p_1q_1+5p_2q_2+2p_2+2q_2+1) \\ &\qquad +2(p_1+p_2+q_1+q_2+1), \\ a_1b_2+a_2b_1 &= (2p_1\!+\!1)(2q_2\!+\!1)+(2p_2\!+\!1)(2q_1\!+\!1) \\ &= 4(p_1q_2+p_2q_1) \\ &\qquad +2(p_1+p_2+q_1+q_2+1) \end{aligned}\] を $4$ で割った余りはいずれも $2(p_1\!+\!p_2\!+\!q_1\!+\!q_2\!+\!1)$ を $4$ で割った余りに等しい.
- (3)
- \[ N(\alpha ) = \frac{a_1+a_2\sqrt 5}{2}\cdot\frac{a_1-a_2\sqrt 5}{2} = \frac{a_1{}^2-5a_2{}^2}{4}\]
が成り立つ.
- (i)
- $a_1,$ $a_2$ が偶数のとき. $4$ の倍数の差 $a_1{}^2-5a_2{}^2$ は $4$ の倍数である.
- (ii)
- $a_1,$ $a_2$ が奇数のとき. \[\begin{aligned} a_1{}^2-5a_2{}^2 &= (2p_1+1)^2-5(2p_2+1)^2 \\ &= (4p_1{}^2+4p_1+1)-5(4p_2{}^2+4p_2+1) \\ &= 4(p_1{}^2+p_1-5p_2{}^2-5p_2-1) \end{aligned}\] であるから, $a_1{}^2-5a_2{}^2$ は $4$ の倍数である.
- (4)
- $\varepsilon = \dfrac{e_1+e_2\sqrt 5}{2}$ ($e_1,$ $e_2$: 偶奇の等しい整数) とおく.
- $\varepsilon ^{-1} \in O$ であるとすると, (1) の結果により \[ N(\varepsilon )N(\varepsilon ^{-1}) = N(\varepsilon\varepsilon ^{-1}) = N(1) = 1\] が成り立ち, $N(\varepsilon ),$ $N(\varepsilon ^{-1})$ は整数になるから, $N(\varepsilon ) = \pm 1$ となる.
- $N(\varepsilon ) = \pm 1$ であるとすると, $\varepsilon\tilde\varepsilon = \pm 1$ となり, $\pm e_1,$ $\mp e_2$ は偶奇が等しいから, \[\varepsilon ^{-1} = \pm\tilde\varepsilon = \pm\frac{e_1-e_2\sqrt 5}{2} = \frac{\pm e_1\mp e_2\sqrt 5}{2} \in O\] となる.
- (5)
- $O$ の要素 $\varepsilon$ が $\varepsilon ^{-1} \in O$ を満たすとする.
- (i)
- $\varepsilon > 0$ のとき. $\varepsilon _0 > 1$ であるから, $\varepsilon _0{}^m \leqq \varepsilon ^{\pm 1} < \varepsilon _0{}^{m+1}$ を満たす非負整数 $m$ が存在する. このとき, $1 \leqq \varepsilon ^{\pm 1}\varepsilon _0{}^{-m} < \varepsilon _0$ となる. $\varepsilon ^{\pm 1},$ $\varepsilon _0{}^{-1} \in O$ であるから, (2) の結果により $\varepsilon ^{\pm 1}\varepsilon _0{}^{-m} = \varepsilon ^{\pm 1}(\varepsilon _0{}^{-1})^m \in O$ であり, (1) の結果により \[ N(\varepsilon ^{\pm 1}\varepsilon _0{}^{-m}) = N(\varepsilon ^{\pm 1})N(\varepsilon _0{}^{-1})^m = \pm (-1)^m = \pm 1\] が成り立つ. $\varepsilon _0$ の最小性により, $\varepsilon ^{\pm 1}\varepsilon _0{}^{-m} = 1$ つまり $\varepsilon = \varepsilon _0{}^{\pm m}$ である.
- (ii)
- $\varepsilon < 0$ のとき. $-\varepsilon \in O,$ $N(-\varepsilon ) = N(-1)N(\varepsilon ) = \pm 1$ であるので, (i) の結果から $-\varepsilon = \varepsilon _0{}^n$ つまり $\varepsilon = -\varepsilon _0{}^n$ を満たす整数 $n$ が存在する.
参考
- 最高次の係数が $1$ のある整数係数多項式 $f(x)$ について, $f(x) = 0$ の解になる複素数は「代数的整数」(algebraic integer) と呼ばれる. 「代数体」$K$ (前問を参照) に属する「代数的整数」全体 $O_K$ は $K$ の「整数環」(ring of integers) と呼ばれ, $O_K$ において逆数をもつ $O_K$ の要素全体は $K$ の「単数群」(unit group) と呼ばれる. 本問の「$2$ 次体」$K = \{ a_1+a_2\sqrt 5|a_1,a_2 \in \mathbb Q\}$ (前問を参照) について, 「整数環」$O_K$ は上記の $O$ と一致し (こちらを参照), 関数 $N(\alpha )$ $(\alpha \in K)$ は「ノルム写像」(norm map), $\varepsilon _0$ は $K$ の「基本単数」(fundamental unit) と呼ばれる.
- (5) の結果から, 正の整数 $\nu$ が「フィボナッチ数」であるためには $5\nu ^2+4$ または $5\nu ^2-4$ が平方数であることが必要十分であると証明される (こちらを参照).
問題《リュカ数を表す対称式の値》
$\alpha = \dfrac{1+\sqrt 5}{2},$ $\beta = \dfrac{1-\sqrt 5}{2}$ とする.
\[\alpha +\beta, \quad \alpha\beta, \quad \alpha ^2+\beta ^2, \quad \alpha ^3+\beta ^3, \quad \alpha ^4+\beta ^4, \quad \alpha ^5+\beta ^5\]
の値を求めよ.
解答例
-
$\alpha,$ $\beta$ の定義から
\[\begin{aligned}
\alpha +\beta &= \frac{1+\sqrt 5}{2}+\frac{1-\sqrt 5}{2} = 1, \quad \cdots [1] \\
\alpha\beta &= \frac{1+\sqrt 5}{2}\cdot\frac{1-\sqrt 5}{2} = \frac{1-5}{4} = -1 \quad \cdots [2]
\end{aligned}\]
であるので,
\[\begin{aligned}
\alpha ^2+\beta ^2 &= (\alpha +\beta )^2 -2\alpha\beta \\
&= 1^2-2\cdot (-1) = 3, \quad \cdots [3] \quad (\because [1],\ [2]) \\
\alpha ^3+\beta ^3 &= (\alpha ^2+\beta ^2)(\alpha +\beta )-\alpha\beta (\alpha +\beta ) \\
&= 3\cdot 1-(-1)\cdot 1 = 4, \quad \cdots [4] \quad (\because [1],\ [2],\ [3]) \\
\alpha ^4+\beta ^4 &= (\alpha ^2+\beta ^2)^2-2(\alpha\beta )^2 \\
&= 3^2-2\cdot (-1)^2 = 7, \quad (\because [1],\ [2],\ [3]) \\
\alpha ^5+\beta ^5 &= (\alpha ^3+\beta ^3)(\alpha ^2+\beta ^2)-(\alpha\beta )^2(\alpha +\beta ) \\
&= 4\cdot 3-(-1)^2\cdot 1 = 11 \quad (\because [2],\ [3],\ [4])
\end{aligned}\]
である.
別解 1
$\alpha,$ $\beta$ の定義から
\[\begin{aligned}
\alpha +\beta &= \frac{1+\sqrt 5}{2}+\frac{1-\sqrt 5}{2} = 1, \\
\alpha\beta &= \frac{1+\sqrt 5}{2}\cdot\frac{1-\sqrt 5}{2} = \frac{1-5}{4} = -1
\end{aligned}\]
であり,
\[\alpha ^2+\beta ^2 = (\alpha +\beta )^2-2\alpha\beta = 1^2-2\cdot (-1) = 3\]
である.
また,
\[\begin{aligned}
\alpha ^{n+2}+\beta ^{n+2} &= (\alpha ^{n+1}+\beta ^{n+1})(\alpha +\beta )-\alpha\beta (\alpha ^n+\beta ^n) \\
&= (\alpha ^{n+1}+\beta ^{n+1})\cdot 1-(-1)\cdot (\alpha ^n+\beta ^n) \\
&= (\alpha ^n+\beta ^n)+(\alpha ^{n+1}+\beta ^{n+1})
\end{aligned}\]
であるから,
\[\begin{aligned}
\alpha ^3+\beta ^3 &= (\alpha +\beta )+(\alpha ^2+\beta ^2) = 1+3 = 4, \\
\alpha ^4+\beta ^4 &= (\alpha ^2+\beta ^2)+(\alpha ^3+\beta ^3) = 3+4 = 7, \\
\alpha ^5+\beta ^5 &= (\alpha ^3+\beta ^3)+(\alpha ^4+\beta ^4) = 4+7 = 11
\end{aligned}\]
である.
別解 2: 立方の展開公式を利用
$\alpha +\beta = 1,$ $\alpha\beta = -1$ から,
\[\alpha ^3+\beta ^3 = (\alpha +\beta )^3-3\alpha\beta (\alpha +\beta ) = 1^3-3\cdot (-1)\cdot 1 = 4\]
である.
参考
- $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ のどの $2$ つを入れ替えても不変である $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の多項式は, $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の「対称式」(symmetric polynomial) と呼ばれ,「基本対称式」$x_1+\cdots +x_n,$ $\cdots,$ $x_1\cdots x_n$ (一定個の変数の積の総和) の多項式として表されることが知られている.
- $L_1 = 1,$ $L_2 = 3,$ $L_{n+2} = L_n+L_{n+1}$ で定まる数列 $\{ L_n\}$ は「リュカ数列」(Lucas sequence), その項は「リュカ数」(Lucas number) と呼ばれる. 一般に, $L_n$ は \[ L_n = \left(\frac{1+\sqrt 5}{2}\right) ^n+\left(\frac{1-\sqrt 5}{2}\right) ^n\] と表されることが知られている. 定義から $L_n$ は整数であり, 本問では $n = 5$ までの値を求めた.
- $L_n$ は $\left(\dfrac{1+\sqrt 5}{2}\right) ^n+\dfrac{1}{2}$ の整数部分に等しいことが知られている (こちらの「フィボナッチ数列」の類似の性質を参照).
- 「フィボナッチ数列」と「リュカ数列」はお互いに深い関係をもつ. これらの間には $\cos x$ と $\sin x$ のようにきょうだいのような関係があり, 三角関数の加法定理のような公式も成り立つ.
問題《二重根号が外せる条件》
$s,$ $p$ を正の有理数 ($p$: 有理数の平方でない) とし, $s^2-4p$ が有理数の平方であるとする.
このとき, $\sqrt{s+2\sqrt p}$ は $\sqrt a+\sqrt b$ ($a,$ $b$: 正の有理数) の形に表されることを示せ.
解答例
$s^2-4p = r^2$ ($r$: 正の有理数) とし,
\[ a = \dfrac{s+r}{2}, \quad b = \dfrac{s-r}{2}\]
とおく.
このとき,
\[ s = a+b, \quad p = \frac{s^2-r^2}{4} = \frac{s+r}{2}\cdot\frac{s-r}{2} = ab\]
であるから,
\[\sqrt{s+2\sqrt p} = \sqrt{a+b+2\sqrt{ab}} = \sqrt{(\sqrt a+\sqrt b)^2} = \sqrt a+\sqrt b\]
が成り立つ.
参考
正の有理数 $s,$ $p$ ($p$: 有理数の平方でない) に対して, $\sqrt{s\pm2\sqrt p}$ が $\sqrt a\pm\sqrt b$ ($a,$ $b$: 有理数, $a > b > 0$) の形に表されるためには, $s^2-4p$ が有理数の平方であることが必要十分である (こちらも参照).