有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

数式を枠からはみ出さずに表示するためには, 画面を横に傾けてください.
重要問題, 背景知識が満載!
問題集『高校数学 至極の有名問題240—文理対応・国公立大~難関大レベル』
好評発売中!

集合

集合

問題《ド・モルガンの法則》

 集合 UU の部分集合 XX に対して, UU に関する XX の補集合を Xˉ\bar X で表す. このとき, UU の部分集合 A,A, BB に対して AB=AˉBˉ,AB=AˉBˉ\begin{aligned} \overline{A\cup B} &= \bar A\cap\bar B, \\ \overline{A\cap B} &= \bar A\cup\bar B \end{aligned} が成り立つ.

証明

 命題論理におけるド・モルガンの法則 p または q    pˉ かつ qˉ,p かつ q    pˉ または qˉ\begin{aligned} \overline{p\text{ または }q} &\iff \bar p\text{ かつ }\bar q, \\ \overline{p\text{ かつ }q} &\iff \bar p\text{ または }\bar q \end{aligned} (sˉ\bar sss の否定を表す) から従う.

問題《集合の包含関係の特徴付け》

 UU を集合とし, A,A, BB をその部分集合とする.
(i)
ABA \subset B 
(ii)
AB=BA\cup B = B 
(iii)
AB=AA\cap B = A 
は同値であることを示せ.
基本定理2022/10/192022/10/192022/10/242022/10/24

解答例 1

 (i) \Longrightarrow (ii) を示すため, (i) つまり xAx \in A \Longrightarrow xBx \in B を仮定する. BABB \subset A\cup B は無条件に成り立つから, ABBA\cup B \subset B を示せばよいが, これは
xABx \in A\cup B    \iff xAx \in A または xBx \in B
  \ \,\Longrightarrow\ \, xBx \in B または xBx \in B
    \iff xBx \in B
から従う.
 (ii) \Longrightarrow (i) を示すため, (ii) を仮定する. このとき, AABA \subset A\cup B かつ ABBA\cup B \subset B から, ABA \subset B が成り立つ.
 よって, (i)     \iff (ii) が成り立つ.
 (i)     \iff (iii) は,
ABA \subset B    \iff AˉBˉ\bar A \supset \bar B
    \iff AˉBˉ=Aˉ\bar A\cup\bar B = \bar A (\because (i)     \iff (ii))
    \iff AˉBˉ=Aˉ\overline{\bar A\cup\bar B} = \overline{\bar A}
    \iff AˉBˉ=Aˉ\overline{\bar A}\cap\overline{\bar B} = \overline{\bar A} (\because ド・モルガンの法則)
    \iff AB=AA\cap B = A
から従う.

解答例 2

 (i) \Longrightarrow (iii) を示すため, (i) つまり xAx \in A \Longrightarrow xBx \in B を仮定する. ABAA\cap B \subset A は無条件に成り立つから, AABA \subset A\cap B を示せばよいが, これは
xAx \in A    \iff xAx \in A かつ xAx \in A
  \ \,\Longrightarrow\ \, xAx \in A かつ xBx \in B
    \iff xABx \in A\cap B
から従う.
 (iii) \Longrightarrow (i) を示すため, (iii) を仮定する. このとき, AABA \subset A\cap B かつ ABBA\cap B \subset B から, ABA \subset B が成り立つ.
 よって, (i)     \iff (iii) が成り立つ.
 (i)     \iff (ii) は,
ABA \subset B    \iff AˉBˉ\bar A \supset \bar B
    \iff AˉBˉ=Bˉ\bar A\cap\bar B = \bar B (\because (i)     \iff (iii))
    \iff AˉBˉ=Bˉ\overline{\bar A\cap\bar B} = \overline{\bar B}
    \iff AˉBˉ=Bˉ\overline{\bar A}\cup\overline{\bar B} = \overline{\bar B} (\because ド・モルガンの法則)
    \iff AB=BA\cup B = B
から従う.

解答例 3

 解答例 1, 2 の前半のように, (i)     \iff (ii), (i)     \iff (iii) を別々に示す.

参考

 UU を集合, A1,A_1, ,\cdots, AnA_n をその部分集合とし, A,A, B,B, C,C, DDA1,A_1, ,\cdots, AnA_n,\cup, \cap で表された集合とする.
  • AA の表示において ,\cup, \cap を互いに入れ替えて得られる集合を AA「双対」(dual) と呼び, AA^* で表す. この AA^*A1,A_1, ,\cdots, AnA_n をそれぞれ A1,\overline{A_1}, ,\cdots, An\overline{A_n} に置き換えて補集合をとった集合に等しいことが「第 11 双対原理」(first duality principle) として知られている.
  • ABA \subset B ならば BAB^* \subset A^* の成り立つことが「第 22 双対原理」(second duality principle) として知られている.
  • A,A, BB の包含関係に関する命題 ppC,C, DD の包含関係に関する命題 qq に対して, A,A, B,B, C,C, DD をその「双対」に置き換えて包含関係を逆にした命題をそれぞれ p,p^*, qq^* で表すとき, (pq)(p \Longrightarrow q) ならば (qp)(q^* \Longrightarrow p^*) が成り立つ. これも一種の「双対原理」と呼べる.
問題一覧 (数と式)間接証明法 集合 多項式の演算
実数の大小関係・絶対値 平方根
ガウス記号
最終更新日: 2024 年 12 月 13 日