本格数学クイズ (初等幾何学)
円
クイズ《レギオモンタヌスの問題》
フィールドの中央から $d$ だけ離れたセンターライン上の地点から, 選手が敵陣のゴールラインに向かって真っすぐ進んでいる.
ゴールの幅が $w$ であるとき, ゴールを見込む角が最大になるという意味でシュートを放つのに最も適しているのは, ゴールラインからどれだけ離れた地点か.
ただし, $d > \dfrac{w}{2}$ とする.
(有名問題)
答え
$\sqrt{\left( d+\dfrac{w}{2}\right)\left(d-\dfrac{w}{2}\right)}$ だけ離れた地点.
解説
ゴールラインと選手が進む直線の交点を $\mathrm O,$ ゴールの両端を $\mathrm A,$ $\mathrm B$ とおき, 点 $\mathrm P$ でゴールを見込む角 $\angle\mathrm{APB}$ が最大になるとする.
$\mathrm A,$ $\mathrm B$ を通って直線 $\mathrm{OP}$ に点 $\mathrm T$ で接する円周 $C$ をかく.
$\mathrm P \neq \mathrm T$ のときは線分 $\mathrm{AP}$ と $C$ の交点を $\mathrm Q$ とおくと
\[\angle\mathrm{APB} < \angle\mathrm{AQB} = \angle\mathrm{ATB}\]
となってしまうから, $\mathrm P = \mathrm T$ である.
よって, 方べきの定理により
\[\mathrm{OP}^2 = \mathrm{OA}\cdot\mathrm{OB}\]
であるから, ゴールを見込む角が最も大きくなる地点のゴールラインからの距離は
\[\mathrm{OP} = \sqrt{\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OB}} = \sqrt{\left( d+\frac{w}{2}\right)\left(d-\frac{w}{2}\right)}\]
である.
クイズ《正多角形の辺と対角線の長さの総和》
ペンキで正 $n$ 角形の周とそのすべての対角線を描くとき, 周のみを描くときの何倍のペンキを使うか.
(有名問題)
答え
$\dfrac{1}{4\sin ^2\dfrac{\pi}{2n}}$ 倍.
解説
$1$ 辺の長さが $1$ の正 $n$ 角形 $\mathrm P_0\mathrm P_1\cdots\mathrm P_{n-1}$ において, 辺と対角線の長さの総和 $L$ を求める.
$a_k = \mathrm P_0\mathrm P_k$ $(1 \leqq k \leqq n-1)$ とおく.
四角形 $\mathrm P_0\mathrm P_1\mathrm P_k\mathrm P_{n-1}$ $(2 \leqq k \leqq n-2)$ にトレミーの定理を適用すると, $\mathrm P_0\mathrm P_1 = \mathrm P_0\mathrm P_{n-1} = a_1,$ $\mathrm P_1\mathrm P_k = a_{k-1},$ $\mathrm P_{n-1}\mathrm P_k = a_{n-k-1},$ $\mathrm P_1\mathrm P_{n-1} = a_2,$ $\mathrm P_0\mathrm P_k = a_k$ から
\[ a_1a_{k-1}+a_1a_{n-k-1} = a_2a_k\]
が得られる.
これらの辺々と
\[ 2a_1a_{n-2}+2a_1a_{n-1} = a_2a_1+a_2a_{n-1}+2a_1{}^2\]
を加えると,
\[\begin{aligned}
2a_1\sum_{k = 1}^{n-1}a_k &= 2a_1{}^2+a_2\sum_{k = 1}^{n-1}a_k \\
(2a_1-a_2)\sum_{k = 1}^{n-1}a_k &= 2a_1{}^2 \\
\sum_{k = 1}^{n-1}a_k &= \frac{2a_1{}^2}{2a_1-a_2}
\end{aligned}\]
が得られる.
よって,
\[ L = \frac{1}{2}\sum_{j = 0}^{n-1}\sum_{k = 0}^{n-1}\mathrm P_j\mathrm P_k = \frac{n}{2}\sum_{k = 0}^{n-1}\mathrm P_0\mathrm P_k = \frac{n}{2}\sum_{k = 1}^{n-1}a_k = \frac{a_1{}^2n}{2a_1-a_2}\]
が成り立つ.
ここで, $a_1 = 1$ であり, 頂角の大きさが $\dfrac{n-2}{n}\pi$ の二等辺三角形 $\mathrm P_0\mathrm P_1\mathrm P_2$ を半分にした直角三角形に着目すると
\[ a_2 = 2\sin\dfrac{n-2}{2n}\pi = 2\sin\left(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n}\right) = 2\cos\frac{\pi}{n}\]
であることがわかるから,
\[ L = \frac{n}{2-a_2} = \frac{n}{2\left( 1-\cos\dfrac{\pi}{n}\right)} = \frac{n}{4\sin ^2\dfrac{\pi}{2n}}\]
である.
ゆえに, 求める倍率は, \[ L\div n = \frac{1}{4\sin ^2\dfrac{\pi}{2n}}\] である.
ゆえに, 求める倍率は, \[ L\div n = \frac{1}{4\sin ^2\dfrac{\pi}{2n}}\] である.