有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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積分法(数学 II)

定積分

問題《シンプソンの公式にまつわる等式》

 $f(x)$ を $3$ 次以下の多項式関数とする.
(1)
\[\int_{-h}^hf(x)dx = \frac{h}{3}\{ f(-h)+4f(0)+f(h)\}\] が成り立つことを示せ.
(2)
$f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $-m$ だけ平行移動して, 定積分を面積に対応づけて考えることにより, \[\int_a^bf(x)dx = \int_{a-m}^{b-m}f(t+m)dt\] が成り立つ. このことを利用して, \[\int_a^bf(x)dx = \frac{b-a}{6}\left\{ f(a)+4f\left(\frac{a+b}{2}\right)+f(b)\right\}\] が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
$f(x) = px^3+qx^2+rx+s$ ($p,$ $q,$ $r,$ $s$: 定数)とおく. このとき, \[\begin{aligned} &\int_{-h}^hf(x)dx \\ &= \int_{-h}^h(px^3+qx^2+rx+s)dx = 2\int_0^h(qx^2+s)dx \\ &= 2\left[\frac{qx^3}{3}+sx\right] _0^h = 2\left(\frac{qh^3}{3}+sh\right) \\ &= \frac{h}{3}\left(2qh^2+6s\right), \\ &f(-h)+4f(0)+f(h) \\ &= (-ph^3\!+\!qh^2\!-\!rh\!+\!s)\!+\!4s\!+\!(ph^3\!+\!qh^2\!+\!rh\!+\!s) \\ &= 2qh^2+6s \end{aligned}\] となるから, \[\int_{-h}^hf(x)dx = \frac{h}{3}\{ f(-h)+4f(0)+f(h)\}\] が成り立つ.
(2)
$m = \dfrac{a+b}{2},$ $h = \dfrac{b-a}{2}$ とおく. このとき, \[ a-m = -h, \qquad b-m = h\] となるから, (1) の結果により \[\begin{aligned} \int_a^bf(x)dx &= \int_{-h}^hf(t+m)dt \\ &= \frac{h}{3}\{ f(-h+m)+4f(m)+f(h+m)\} \\ &= \frac{b-a}{6}\left\{ f(a)+4f\left(\frac{a+b}{2}\right)+f(b)\right\} \end{aligned}\] が得られる.

背景

  • 本問は,「シンプソンの公式」(Simpson's rule)という連続関数(数学 III)の定積分に関する近似公式 \[\int_a^bf(x)dx \fallingdotseq \frac{b-a}{6}\left\{ f(a)+4f\left(\frac{a+b}{2}\right)+f(b)\right\}\] を背景としている.
  • (2)の考え方は, 数学 III で学ぶ「置換積分法」に一般化される.

問題《ルジャンドル多項式》

 実数 $\alpha,$ $\beta\ (\alpha > \beta )$ は, すべての $1$ 次関数または定数関数 $f(x)$ に対して \[\int_{-1}^1(x-\alpha )(x-\beta )f(x)dx = 0\] を満たす.
(1)
$\alpha,$ $\beta$ の値を求めよ.
(2)
すべての $3$ 次関数 $g(x)$ に対して \[\int_{-1}^1g(x)dx = g(\alpha )+g(\beta )\] が成り立つことを示せ.
(参考: 1978, 2001 名古屋大)

解答例

(1)
$f(x) = ax+b$ ($a,$ $b$: 定数)を任意の $1$ 次関数または定数関数とする. このとき, \[\begin{aligned} 0 &=\int_{-1}^1(x-\alpha )(x-\beta )f(x)dx \\ &= \int_{-1}^1\{ x^2-(\alpha +\beta )x+\alpha\beta \}(ax+b)dx \\ &= 2\int_0^1\left[\{ b-a(\alpha +\beta )\}x^2+\alpha\beta b\right] dx \\ &= 2\left[\frac{b-a(\alpha +\beta )}{3}x^3+\alpha\beta bx\right] _0^1 \\ &= 2\left\{\frac{b-a(\alpha +\beta )}{3}+\alpha\beta b\right\} \\ &= -\frac{2}{3}(\alpha +\beta )a+2\left(\alpha\beta +\frac{1}{3}\right) b \end{aligned}\] は $a,$ $b$ に関する恒等式となるから, \[\alpha +\beta = 0, \quad \alpha\beta = -\frac{1}{3}\] が成り立つ. よって, $\alpha,$ $\beta\ (\alpha > \beta )$ は $x^2-\dfrac{1}{3} = 0$ の実数解であるから, \[\alpha = \frac{\sqrt 3}{3}, \quad \beta = -\frac{\sqrt 3}{3}\] である.
(2)
$g(x)$ を任意の $3$ 次関数とする. これを多項式とみたときに, $g(x)$ を $x^2-\dfrac{1}{3}$ で割った商を $q(x),$ 余りを $r(x)$ とおく. このとき, \[ g(x) = \left( x^2-\frac{1}{3}\right) q(x)+r(x)\] となり, $q(x)$ は $1$ 次式となるから, (1) の結果により, \[\begin{aligned} &\int_{-1}^1g(x)dx \\ &= \int_{-1}^1\left( x^2-\frac{1}{3}\right) q(x)dx+\int_{-1}^1r(x)dx \\ &= 2\big[ r(0)x\big] _0^1 = 2r(0) \\ &= r(\alpha )+r(\beta ) = g(\alpha )+g(\beta ) \end{aligned}\] が得られる. 最後から $2$ 番目の等号は, 直線 $y = r(x)$ 上の $2$ 点 $(\alpha,r(\alpha )),$ $(\beta,r(\beta ))$ が $y$ 切片 $(0,r(0))$ に関して対称であることから従う.

背景

  • \[\int_{-1}^1P_m(x)P_n(x)dx = \begin{cases} 0 & (m \neq n), \\ \dfrac{2}{2n+1} & (m = n) \end{cases}\] を満たす多項式 $P_n(x)$ ($n$: 非負整数)を「ルジャンドル多項式」(Legendre polynomial)と呼ぶ. \[\begin{aligned} &P_0(x) = 1,\ P_1(x) = x,\ P_2(x) = \frac{3}{2}x^2-\frac{1}{2}, \\ &P_3(x) = \frac{5}{2}x^3-\frac{3}{2}x,\ P_4(x) = \frac{35}{8}x^4-\frac{15}{4}x^2+\frac{3}{8},\ \cdots \end{aligned}\] である.
  • $P_n(x)$ は $n$ 次多項式であり, すべての多項式は「ルジャンドル多項式」の定数倍の和として表せるから, $n-1$ 次以下のすべての多項式 $f(x)$ に対して \[\int_{-1}^1f(x)P_n(x) = 0\] が成り立つ. 本問では, $\dfrac{2}{3}P_2(x)$ を求めた.
  • 「ルジャンドル多項式」は物理学でさまざまな応用がある.

問題《ベルヌーイ多項式と累乗和の公式》

(1)
すべての実数 $x$ に対して \[\int_x^{x+1}(at^2+bt+c)dt = x^2\] を満たす定数 $a,$ $b,$ $c$ の値を求めよ.
(2)
すべての正の整数 $n$ に対して \[\sum_{k = 1}^nk^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}\] が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
\[\begin{aligned} &\int_x^{x+1}(at^2+bt+c)dt = \left[\frac{at^3}{3}+\frac{bt^2}{2}+ct\right] _x^{x+1} \\ &= \frac{a(x\!+\!1)^3}{3}\!+\!\frac{b(x\!+\!1)^2}{2}\!+\!c(x\!+\!1)\!-\!\frac{ax^3}{3}\!-\!\frac{bx^2}{2}\!-\!cx \\ &= \frac{a(3x^2+3x+1)}{3}+\frac{b(2x+1)}{2}+c \\ &= ax^2+(a+b)x+\frac{2a+3b+6c}{6} \end{aligned}\] と $x^2$ の係数を比較すると, \[ a = 1, \quad a+b = 0, \quad \frac{2a+3b+6c}{6} = 0\] から $a = 1,$ $b = -1,$ $c = \dfrac{1}{6}$ が得られる.
(2)
(1) の結果 \[\int_x^{x+1}\left( t^2-t+\frac{1}{6}\right) dt = x^2\] から, \[\begin{aligned} \sum_{k = 1}^nk^2 &= \sum_{k = 1}^n\int_k^{k+1}\left( t^2-t+\frac{1}{6}\right) dt \\ &= \int_1^{n+1}\left( t^2-t+\frac{1}{6}\right) dt \\ &= \left[\frac{t^3}{3}-\frac{t^2}{2}+\frac{t}{6}\right] _1^{n+1} \\ &= \frac{(n\!+\!1)^3}{3}\!-\!\frac{(n\!+\!1)^2}{2}\!+\!\frac{n\!+\!1}{6}\!-\!\frac{1}{3}\!+\!\frac{1}{2}\!-\!\frac{1}{6} \\ &= \frac{n^3+3n^2+3n}{3}-\frac{n^2+2n}{2}+\frac{n}{6} \\ &= \frac{2n^3+3n^2+n}{6} \\ &= \frac{n(n+1)(2n+1)}{6} \end{aligned}\] が得られる.

参考

 (1) の $a,$ $b$ の値は, 微分積分学の基本定理, 合成関数の微分の公式を利用して, 次のように求めることもできる. \[ f(x) = ax^2+bx+c,\ F(x) = \int_0^x(at^2+bt+c)dt\] とおくと, \[\begin{aligned} \frac{d}{dx}F(x) &= f(x), \\ \frac{d}{dx}F(x+1) &= F'(x+1)\cdot (x+1)' = f(x+1) \end{aligned}\] となるから, 与式つまり \[ F(x+1)-F(x) = x^2\] の両辺を $x$ で微分すると \[ f(x+1)-f(x) = 2x\] となる. よって, \[\begin{aligned} a(x+1)^2+b(x+1)+c-ax^2-bx-c &= 2x \\ 2ax+(a+b) &= 2x \end{aligned}\] であるから, $2a = 2,$ $a+b = 0$ つまり $a = 1,$ $b = -1$ である.

背景

  • 非負整数 $m$ に対して, \[\int_x^{x+1}B_m(t)dt = x^m\] を満たす $m$ 次多項式 $B_m(x)$ が存在する. この多項式を「$m$ 次ベルヌーイ多項式」(Bernoulli polynomial of degree $m$)と呼ぶ. (2) と同様の議論により, \[\sum_{k = 1}^nk^m = \int_1^{n+1}B_m(t)dt \quad \cdots [1]\] が成り立つ. 「ベルヌーイ多項式」$B_m(x)$ は \[ B_m(x) = \sum_{k = 0}^m(-1)^k{}_m\mathrm C_kB_kx^{m-k} \quad \cdots [2]\] と表されることが知られている. ここで, $B_0,$ $\cdots,$ $B_m$ は「ベルヌーイ数」(Bernoulli number)と呼ばれる有理数で, $B_0 = 1$ と \[\sum_{k = 0}^n{}_{n+1}\mathrm C_kB_k = 0\] という関係式で定まる.
  • 「ベルヌーイ多項式」$B_m(x)$ を $m$ の小さい順に書き出すと, \[\begin{aligned} B_0(x) &= 1, \\ B_1(x) &= x-\frac{1}{2}, \\ B_2(x) &= x^2-x+\frac{1}{6}, \\ B_3(x) &= x^3-\frac{3}{2}x^2+\frac{1}{2}x, \\ B_4(x) &= x^4-2x^3+x^2-\frac{1}{30}, \\ B_5(x) &= x^5-\frac{5}{2}x^4+\frac{5}{3}x^3-\frac{1}{6}x \\ &\vdots \end{aligned}\] となる.
  • 「三角数」の公式も,「ベルヌーイ多項式」を使うと, \[\begin{aligned} &\sum_{k = 1}^nk = \int_1^{n+1}\left( t-\frac{1}{2}\right) dt \\ &= \left[\frac{t^2}{2}-\frac{t}{2}\right]_1^{n+1} = \frac{1}{2}n(n+1) \end{aligned}\] と導ける.
  • 一般に,「ファウルハーバーの公式」(Faulhaber's formula) \[\sum_{k = 1}^nk^m = \frac{1}{m+1}\sum_{k = 0}^m{}_{m+1}\mathrm C_kB_kn^{m+1-k}\] が成り立つ.