有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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ピタゴラスの $4$ つ組

ピタゴラスの $4$ つ組

定義《ピタゴラスの $4$ つ組》

(1)
方程式 \[ a^2+b^2+c^2 = d^2\] の正の整数解 $(a,b,c,d)$ をピタゴラスの $4$ つ組 (Pythagorean quadruple) と呼ぶ.
(2)
このうち, $a,$ $b,$ $c,$ $d$ が互いに素であるものは原始的 (primitive) であるという.
 すべてのピタゴラスの $4$ つ組は, 原始的なピタゴラスの $4$ つ組の正の整数倍として表される.

ピタゴラスの $4$ つ組を表す公式

定理《ピタゴラスの $4$ つ組を表す公式》

 原始的なピタゴラスの $4$ つ組 $(a,b,c,d)$ に対して, 次が成り立つ.
(1)
$a,$ $b,$ $c$ のうち $2$ つは偶数, $1$ つは奇数である.
(2)
$a,$ $b,$ $c,$ $d$ は, 必要に応じて $a,$ $b,$ $c$ を入れ替えれば, 非負整数 $k,$ $l,$ $m,$ $n$ を用いて \[\begin{aligned} a &= k^2+l^2-m^2-n^2, \\ b &= 2(km-ln), \\ c &= 2(kn+lm), \\ d &= k^2+l^2+m^2+n^2 \end{aligned}\] と表される ($k,$ $l,$ $m,$ $n$ が満たすべき条件については省略).

証明 (ガウス整数環における素元分解を利用)

(1)
こちらを参照.
(2)
$b,$ $c$ が偶数であるとしても一般性を失わないから, その場合を考えて $b = 2b',$ $c = 2c'$ ($b',$ $c'$: 整数) とおく. このとき, \[\begin{aligned} a^2+b^2+c^2 = d^2 &\iff b^2+c^2 = d^2-a^2 \\ &\iff 4b'{}^2+4c'{}^2 = (d+a)(d-a) \\ &\iff b'{}^2+c'{}^2 = \frac{d+a}{2}\cdot\frac{d-a}{2}\ \cdots [1] \end{aligned}\] が成り立つ. 整数 $x,$ $y$ の最大公約数を $(x,y)$ で表すことにして, $g = (b',c'),$ $g_1 = \left( g,\dfrac{d+a}{2}\right),$ $g_2 = \left( g,\dfrac{d-a}{2}\right),$ $g_3 = (g_1,g_2)$ とおく. $g_3$ は, $g$ の約数であるから $b',$ $c'$ の約数であり, $\dfrac{d+a}{2},$ $\dfrac{d-a}{2}$ の約数であるから \[ d = \frac{d+a}{2}+\frac{d-a}{2}, \quad a = \frac{d+a}{2}-\frac{d-a}{2}\] の約数である. $a,$ $b',$ $c',$ $d$ は互いに素であるから, $g_3 = 1,$ つまり $g_1,$ $g_2$ は互いに素である. さらに $g^2$ は $b'{}^2+c'{}^2 = \dfrac{d+a}{2}\cdot\dfrac{d-a}{2}$ の約数であるから, $g$ の約数である素数の累乗のうち $\dfrac{d+a}{2},$ $\dfrac{d-a}{2}$ の一方の約数でないものは他方の約数である. これは $g = g_1g_2$ であることを意味し, $\dfrac{d+a}{2}$ は $g_1{}^2$ で, $\dfrac{d-a}{2}$ は $g_2{}^2$ で割り切れる. $[1]$ の両辺を $g^2 = g_1{}^2g_2{}^2$ で割ると, \[\left(\frac{b'}{g}\right) ^2+\left(\frac{c'}{g}\right) ^2 = \frac{d+a}{2g_1{}^2}\cdot\frac{d-a}{2g_2{}^2}\] となる. $\dfrac{b'}{g},$ $\dfrac{c'}{g}$ は互いに素であるから, ガウス整数環 $\mathbb Z[\sqrt{-1}]$ における $\dfrac{b'}{g}+\dfrac{c'}{g}\sqrt{-1}$ の素因数はすべて虚数である. よって, $\mathbb Z[\sqrt{-1}]$ における虚数の素元 $\pi _1,$ $\cdots,$ $\pi _{r+s}$ で \[\begin{aligned} \frac{b'}{g}+\frac{c'}{g}\sqrt{-1} = \prod_{j = 1}^{r+s}\pi _j, \quad &\frac{b'}{g}-\frac{c'}{g}\sqrt{-1} = \prod_{j = 1}^{r+s}\overline{\pi _j}, \\ \left(\frac{b'}{g}\right) ^2+\left(\frac{c'}{g}\right) ^2 &= \prod_{j = 1}^{r+s}\pi _j\overline{\pi _j}, \\ \frac{d+a}{2g_1{}^2} = \prod_{j = 1}^r\pi _j\overline{\pi _j}, \quad &\frac{d-a}{2g_2{}^2} = \prod_{j = r+1}^{r+s}\pi _j\overline{\pi _j} \end{aligned}\] を満たすものが存在する. \[ g_1\prod_{j = 1}^r\pi _j = k+l\sqrt{-1}, \quad g_2\prod_{j = r+1}^{r+s}\pi _j = m+n\sqrt{-1}\] とおく. このとき, \[\begin{aligned} b'+c'\sqrt{-1} &= g\prod_{j = 1}^{r+s}\pi _j = \left( g_1\prod_{j = 1}^r\pi _j\right)\left( g_2\prod_{j = r+1}^{r+s}\pi _j\right) \\ &= (k+l\sqrt{-1})(m+n\sqrt{-1}) \\ &= (km-ln)+(kn+lm)\sqrt{-1} \end{aligned}\] から \[ b = 2(km-ln), \quad c = 2(kn+lm)\] となり, \[\begin{aligned} \frac{d+a}{2} &= g_1{}^2\prod_{j = 1}^r\pi _j\overline{\pi _j} = \left( g_1\prod_{j = 1}^r\pi _j\right)\left( g_1\prod_{j = 1}^r\overline{\pi _j}\right) \\ &= (k+l\sqrt{-1})(k-l\sqrt{-1}) = k^2+l^2,\\ \frac{d-a}{2} &= g_2{}^2\prod_{j = r+1}^{r+s}\pi _j\overline{\pi _j} = \left( g_2\prod_{j = r+1}^{r+s}\pi _j\right)\left( g_2\prod_{j = r+1}^{r+s}\overline{\pi _j}\right) \\ &= (m+n\sqrt{-1})(m-n\sqrt{-1}) = m^2+n^2 \end{aligned}\] から \[ d = k^2+l^2+m^2+n^2, \quad a = k^2+l^2-m^2-n^2\] となる.

注意

  • 原始的なピタゴラスの $4$ つ組は無限に存在する. 例えば, 正の奇数 $k$ に対して, $(k^2,2k,2,k^2+2)$ は互いに異なる原始的なピタゴラスの $4$ つ組である.
  • 原始的なピタゴラスの $4$ つ組 $(a,b,c,d)$ ($a,$ $d$: 奇数, $b,$ $c$: 偶数, $d > a,$ $b,$ $c$) を, $d$ が小さい順, $abc$ が小さい順に, $d \leqq 30$ の範囲で書き出すと, 次のようになる. 上記の等式で $a,$ $b,$ $c,$ $d$ の値を表す $k,$ $l,$ $m,$ $n$ の値を付記した.
    \[\begin{array}{cccc|cccc} a & b & c & d & k & l & m & n \\ \hline\hline 1 & 2 & 2 & 3 & 1 & 1 & 1 & 0 \\ 3 & 2 & 6 & 7 & 2 & 1 & 1 & 1 \\ 1 & 8 & 4 & 9 & 2 & 1 & 2 & 0 \\ 7 & 4 & 4 & 9 & 2 & 2 & 1 & 0 \\ 9 & 6 & 2 & 11 & 3 & 1 & 1 & 0 \\ 7 & 6 & 6 & 11 & 3 & 0 & 1 & 1 \\ 3 & 4 & 12 & 13 & 2 & 2 & 2 & 1 \\ 5 & 2 & 14 & 15 & 3 & 1 & 1 & 2 \\ 11 & 2 & 10 & 15 & 3 & 2 & 1 & 1 \\ 1 & 12 & 12 & 17 & 3 & 0 & 2 & 2 \\ 9 & 12 & 8 & 17 & 3 & 2 & 2 & 0 \\ 1 & 18 & 6 & 19 & 3 & 1 & 3 & 0 \\ 17 & 6 & 6 & 19 & 3 & 3 & 1 & 0 \\ 15 & 6 & 10 & 19 & 4 & 1 & 1 & 1 \\ 5 & 4 & 20 & 21 & 3 & 2 & 2 & 2 \\ 19 & 8 & 4 & 21 & 4 & 2 & 1 & 0 \\ 13 & 16 & 4 & 21 & 4 & 1 & 2 & 0 \\ 11 & 16 & 8 & 21 & 4 & 0 & 2 & 1 \\ 3 & 6 & 22 & 23 & 2 & 3 & 3 & 1 \\ 3 & 14 & 18 & 23 & 3 & 2 & 3 & 1 \\ 13 & 6 & 18 & 23 & 3 & 3 & 2 & 1 \\ 9 & 12 & 20 & 25 & 4 & 1 & 2 & 2 \\ 15 & 12 & 16 & 25 & 4 & 2 & 2 & 1 \\ 7 & 2 & 26 & 27 & 4 & 1 & 1 & 3 \\ 25 & 10 & 2 & 27 & 5 & 1 & 1 & 0 \\ 23 & 2 & 14 & 27 & 4 & 3 & 1 & 1 \\ 7 & 22 & 14 & 27 & 4 & 1 & 3 & 1 \\ 23 & 10 & 10 & 27 & 5 & 0 & 1 & 1 \\ 3 & 16 & 24 & 29 & 4 & 0 & 2 & 3 \\ 11 & 24 & 12 & 29 & 4 & 2 & 3 & 0 \\ 21 & 16 & 12 & 29 & 4 & 3 & 2 & 0 \end{array}\]

高校数学の問題

整数の性質

問題《ピタゴラスの $4$ つ組の性質: 方程式》

 正の整数 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ が $a^2+b^2+c^2 = d^2$ を満たすとき, 次のことを示せ.
(A)
$a,$ $b,$ $c$ のうち少なくとも $2$ つは偶数である.
(B)
$a,$ $b,$ $c,$ $d$ のうち少なくとも $1$ つは $3$ の倍数である.
(参考: $1994$ 一橋大)

解答例

 こちらを参照.

式と証明

問題《ピタゴラスの $3$ つ組と $4$ つ組に関する等式》

(A)
$(m^2-n^2)^2+4m^2n^2 = (m^2+n^2)^2$ 
(B)
$(k^2+l^2-m^2-n^2)^2+4(km-ln)^2+4(kn+lm)^2 = (k^2+l^2+m^2+n^2)^2$ 
が成り立つことを示せ. 

解答例

 こちらを参照.