2 以上の整数
n に対して
(k=1∑nxk2)(k=1∑nyk2)=(k=1∑nxkyk)2+1≦k<l≦n∑(xkyl−xlyk)2
が成り立つ.
ここで, 右辺の第
2 項の和は,
1≦k<l≦n を満たす整数の組
(k,l) すべてにわたる和を表し,
k=1∑n−1l=k+1∑n(xkyl−xlyk)2 に等しい.
証明
右辺を展開して変形すると,
(k=1∑nxkyk)2+1≦k<l≦n∑(xkyl−xlyk)2=k=1∑nxk2yk2+1≦k<l≦n∑2xkykxlyl+1≦k<l≦n∑(xk2yl2+xl2yk2−2xkylxlyk)=k=1∑nxk2yk2+21≦k<l≦n∑xkxlykyl+1≦k<l≦n∑(xk2yl2+xl2yk2)−21≦k<l≦n∑xkxlykyl=k=1∑nxk2yk2+1≦k<l≦n∑(xk2yl2+xl2yk2)=(k=1∑nxk2)(k=1∑nyk2)
となる.
(x2+ny2)(u2+nv2)=(xu±nyv)2+n(xv∓yu)2
(複号同順) が成り立つ.
証明
右辺を展開して整理すると,
(xu±nyv)2+n(xv∓yu)2=(x2u2±2nxyuv+n2y2v2)+n(x2v2∓2xyuv+y2u2)=x2u2+nx2v2+n2y2v2+ny2u2=x2(u2+nv2)+ny2(u2+nv2)=(x2+ny2)(u2+nv2)
となる.
次のことを示せ.
ただし,
3 が無理数であることは, 証明なしに使ってよい.
- (1)
- (ac+bd)2+(ad−bc)2=(a2+b2)(c2+d2) が成り立つ.
- (2)
- xy 平面において, 各頂点の x 座標, y 座標が整数である正三角形は存在しない.
標準定理2019/03/252022/06/24
解答例
- (1)
- 左辺を展開して整理すると,
(ac+bd)2+(ad−bc)2=(a2c2+2abcd+b2d2)+(a2d2−2abcd+b2c2)=a2c2+a2d2+b2c2+b2d2=a2(c2+d2)+b2(c2+d2)=(a2+b2)(c2+d2)⋯[1]
となる.
- (2)
- 各頂点の x 座標, y 座標が整数である正三角形の存在を仮定する.
必要に応じて平行移動すると,
ある整数 a, b, c, d について O(0,0), P(a,b), Q(c,d) を頂点とする正三角形が得られる.
OP=OQ つまり OP2=OQ2 から,
a2+b2=c2+d2⋯[2]
が成り立つ.
また, OQ=PQ つまり OQ2=PQ2 から,
c2+d2=(c−a)2+(d−b)2
が成り立つ.
右辺を展開し, ac+bd について解くと,
ac+bd=21(a2+b2)⋯[3]
が得られる.
[2], [3] を [1] に代入, 整理して分母を払うと,
3(a2+b2)23(a2+b2)3=4(ad−bc)2=2∣ad−bc∣=a2+b22∣ad−bc∣
が得られる.
この分母, 分子は整数であるから,“3 が有理数”という矛盾が生じる.
ゆえに, 各頂点の x 座標, y 座標が整数である正三角形は存在しない.
参考
- (1) の等式は, 「ブラーマグプタの恒等式」(Brahmagupta's identity) の特別な場合であり, 「ブラーマグプタ=フィボナッチ恒等式」(Brahmagupta–Fibonacci identity) として知られている.
これは, 「ラグランジュの恒等式」(Lagrange's identity, こちらを参照) の特別な場合でもある.
- (x12+⋯+xn2)(y12+⋯+yn2)=z12+⋯+zn2
(z1, ⋯, zn は x1, ⋯, xn, y1, ⋯, yn の関数) の形の恒等式として,「オイラーの 4 平方恒等式」(Euler's four-square identity),「デジャンの 8 平方恒等式」(Degen's eight-square identity) が知られているが, z1, ⋯, zn が x1, ⋯, xn の多項式としても y1, ⋯, yn の多項式としても 1 次式になるような恒等式が存在するのは n=1, 2, 4, 8 の場合のみであることがフルヴィッツによって証明されている.
- xy 平面上の x 座標, y 座標が整数である点を「格子点」(lattice point) と呼び,
各頂点が格子点であるような多角形を「格子多角形」(lattice polygon) と呼ぶ.
- 「格子正多角形」は正方形に限ることが知られている.
- (2) の別解については, こちらを参照されたい.
- (1)
- (xu+dyv)2−d(xv+yu)2=(x2−dy2)(u2−dv2) を示せ.
- (2)
- u2−2v2=1 の正の整数解を 1 つ求めよ.
- (3)
- x2−2y2=−1 は無限に多くの整数解をもつことを示せ.
(参考:
1998 お茶の水女子大)
実戦定理2018/06/212022/05/13
解答例
- (1)
- 左辺を展開して整理すると,
(xu+dyv)2−d(xv+yu)2=(x2u2+2dxyuv+d2y2v2)−(dx2v2+2dxyuv+dy2u2)=x2u2−dx2v2−dy2u2+d2y2v2=(x2−dy2)(u2−dv2)⋯[1]
となる.
- (2)
- (u,v)=(3,2) は
u2−2v2=1⋯[2]
を満たす.
- (3)
- (x,y)=(1,1) は x2−2y2=−1 を満たす.
また, [1] に d=2, (u,v)=(3,2) を代入すると, [2] から,
x2−2y2=(3x+4y)2−2(2x+3y)2
となる.
そこで, 数列 {xn}, {yn} を
x1y1=1,=1,xn+1yn+1=3xn+4yn,=2xn+3yn
で定めると, 一般項の組 (x,y)=(xn,yn) は x2−2y2=−1 の整数解になる.
xn+1>xn であるから, これらの解は互いに異なる.
ゆえに, x2−2y2=−1 は無限に多くの整数解をもつ.
参考
- (1) の等式は「ブラーマグプタの恒等式」(Brahmagupta's identity) と呼ばれる.
- 平方数でない正の整数 d に対して,「ペル方程式」x2−dy2=1 は無限に多くの整数解をもつことが知られているが,
x2−dy2=−1 は無限に多くの整数解をもつこともあれば, 全く整数解をもたないことがある (こちらを参照).
- (A)
- (m2−n2)2+4m2n2=(m2+n2)2
- (B)
- (k2+l2−m2−n2)2+4(km−ln)2+4(kn+lm)2=(k2+l2+m2+n2)2
が成り立つことを示せ.
標準定理2022/05/192022/07/12
解答例
- (A)
- 左辺を展開して整理すると,
(m2−n2)2+4m2n2=(m4−2m2n2+n4)+4m2n2=m4+2m2n2+n4=(m2+n2)2
が得られる.
- (B)
- 左辺を展開して整理すると,
(k2+l2−m2−n2)2+4(km−ln)2+4(kn+lm)2=(k4+l4+m4+n4+2k2l2−2k2m2−2k2n2−2l2m2−2l2n2+2m2n2)+4(k2m2−2klmn+l2n2)+4(k2n2+2klmn+l2m2)=k4+l4+m4+n4+2k2l2+2k2m2+2k2n2+2l2m2+2l2n2+2m2n2=(k2+l2+m2+n2)2
が得られる.
参考
- a2+b2=c2 の正の整数解を「ピタゴラスの 3 つ組」(Pythagorean triple) と呼ぶ (こちらを参照).
すべての「ピタゴラスの 3 つ組」は, 必要に応じて並べ替えると, 正の整数 m, n (m, n は互いに素, 偶奇が異なる, m>n) を用いて
(m2−n2,2mn,m2+n2)
の整数倍の形に表される.
- a2+b2+c2=d2 の正の整数解を「ピタゴラスの 4 つ組」(Pythagorean quadruple) と呼ぶ (こちらを参照).
すべての「ピタゴラスの 4 つ組」は, 必要に応じて並べ替えると, 非負整数 k, l, m, n を用いて
(k2+l2−m2−n2,2(km−ln),2(kn+lm),k2+l2+m2+n2)
の整数倍の形に表される (k, l, m, n が満たすべき条件については省略).
(a,b,c)=(m2−n2,2mn+n2,m2+n2+mn)
のとき
a2+b2+ab=c2
が成り立つことを示せ.
標準定理2022/07/012022/07/13
解答例
(a,b,c)=(m2−n2,2mn+n2,m2+n2+mn)
を左辺に代入し, 展開して整理すると
a2+b2+ab=(m2−n2)2+(2mn+n2)2+(m2−n2)(2mn+n2)=(m4−2m2n2+n4)+(4m2n2+4mn3+n4)+(2m3n+m2n2−2mn3−n4)=m4+n4+3m2n2+2mn3+2m3n=(m2)2+(n2)2+(mn)2+2m2n2+2n2⋅mn+2mn⋅m2=(m2+n2+mn)2=c2
が得られる.
参考
- 各辺の長さが整数で, 1 つの内角の大ささが 120∘ である三角形の 3 辺の長さは, 余弦定理により a2+b2+ab=c2 を満たす.
この方程式の正の整数解を「アイゼンシュタインの 3 つ組」と呼ぶ.
すべての「アイゼンシュタインの 3 つ組」は, 必要に応じて並べ替えると, 正の整数 m, n (m, n は互いに素, 3 で割った余りが異なる, m>n) を用いて
(m2−n2,2mn+n2,m2+n2+mn)
の整数倍の形に表される.
- 各辺の長さが整数で, 1 つの内角の大ささが 60∘ である三角形の 3 辺の長さは, 余弦定理により a2+b2−ab=c2 を満たす.
この方程式の正の整数解を「半角アイゼンシュタインの 3 つ組」と呼ぶ.
すべての「半角アイゼンシュタインの 3 つ組」は, 必要に応じて並べ替えると, 正の整数 m, n (m, n は互いに素, 3 で割った余りが異なる, m>2n) を用いて
(m2−n2,2mn−n2,m2+n2−mn)
または
(3m2−n2,32mn−n2,3m2+n2−mn)
(場合分けの条件は m+n が 3 と互いに素か否か) の整数倍の形に表される.
a, b, c, d を
a=b=0, c=d=0 なる実数とする.
- (1)
- (i)
- ba=dc ⟹ ba+b=dc+d
- (ii)
- ba=dc ⟹ ba−b=dc−d
- (iii)
- ba=dc ⟹ a−ba+b=c−dc+d
が成り立つことを示せ.
- (2)
- (1) の結果を使って, (i)~(iii) の逆が成り立つことを示せ.
基本定理2020/02/132022/05/13
解答例
- (1)
- ba=dc を仮定する.
(i), (ii): 両辺に ±1 を加えると,
ba+1=dc+1,ba−1=dc−1
から
ba+b=dc+d,ba−b=dc−d
が得られる.
(iii): 2 式の辺々を割ると,
ba+b⋅a−bb=dc+d⋅c−dd
から
a−ba+b=c−dc+d
が得られる.
- (2)
- (i) の逆: ba+b=dc+d に (ii) を適用すると,
b(a+b)−b=d(c+d)−d つまり ba=dc |
が得られる.
(ii) の逆: ba−b=dc−d に (i) を適用すると,
b(a−b)+b=d(c−d)+d つまり ba=dc |
が得られる.
(iii) の逆: a−ba+b=c−dc+d に (iii) を適用すると,
(a+b)−(a−b)(a+b)+(a−b)=(c+d)−(c−d)(c+d)+(c−d), |
2b2a=2d2c つまり ba=dc |
が得られる.
参考
(i), (ii), (iii) はそれぞれ,「合比の理」,「除比の理」,「合除比の理」として知られている.
- (1)
- 実数 a, b, c, d, x, y が bd=0, ba=dc, bx+dy=0 を満たすとき, bx+dyax+cy の値を求めよ.
- (2)
- △ABC において, 内心を I とおき, ∠A の二等分線 AI と辺 BC の交点を A′ とおく.
IA′AI=BCAB+AC
が成り立つことを示せ.
基本定理2015/03/262025/01/30
解答例
- (1)
- k=ba=dc とおくと,
a=bk,c=dk
となるから,
bx+dyax+cy=bx+dybkx+dky=bx+dyk(bx+dy)=k=ba=dc
が得られる.
- (2)
- BI, CI は ∠B, ∠C を二等分するから,
BA′BA=CA′CA=IA′AI
が成り立つ.
よって, (1) の結果により
IA′AI=BA′+CA′BA+CA=BCAB+AC
が成り立つ.
参考
- (1) の結果を「加比の理」と呼ぶ.
- 「加比の理」は, 平面上のベクトル v=(a,b) と w=(c,d) が互いに平行なとき, xv+yw=(ax+cy,bx+dy) もそれに平行であることを意味する.
- 一般に, b1⋯bn=0, p1b1+⋯+pnbn=0 のとき,
b1a1=⋯=bnan⟹p1b1+⋯+pnbnp1a1+⋯+pnan=b1a1=⋯=bnan
が成り立つ (証明は同様).
- より一般に,
⟹a1:⋯:an=⋯=z1:⋯:znp1a1+⋯+pnan:a1:⋯:an=⋯=p1z1+⋯+pnzn:z1:⋯:zn
が成り立つ.
- (1)
- 正の数 a, b, c, d に対して, ba<dc であるとき,
ba<b+da+c<dc
が成り立つことを示せ.
- (2)
- 非負整数 a, b, c, d (bd=0) が ad−bc=−1 を満たすとする.
正の整数 p, q の組で
ba<qp<dc⋯[∗]
を満たすもののうち q が最小であるものは (p,q)=(a+b,c+d) であり, a+b, c+d は互いに素であることを示せ.
(参考:
2008 お茶の水女子大,
2014 横浜市立大)
基本定理2018/08/252024/06/13
解答例
- (1)
- ba<dc のとき,
ad<bc つまり ad−bc<0 |
であるから,
ba−b+da+cb+da+c−dc=b(b+d)a(b+d)−(a+c)b=b(b+d)ad−bc<0,=(b+d)d(a+c)d−c(b+d)=(b+d)dad−bc<0
が成り立つ.
よって, 求める不等式が成り立つ.
- (2)
- 正の整数 p, q の組が [∗] を満たすとする.
このとき,
bp−aq=x,cq−dp=y
は正の整数である.
これを p, q について解くと, ad−bc=−1 から
p=cx+ay,q=dx+by
が得られる.
(1) により x=y=1 のとき [∗] が成り立ち, この場合より q が小さくなることはないから, 求める p, q の組は (p,q)=(a+b,c+d) である.
さらに, a+b, c+d の最大公約数を g として a+b=gp′, c+d=gq′ とおくと
c+da+b=gq′gp′=q′p′
となるが, (p,q)=(a+b,c+d) は [∗] を満たすもののうち q が最小である組だから, g=1 となる.
よって, a+b, c+d は互いに素である.
参考
- 中世フランスの数学者シュケ (N. Chuquet) は, 本問の不等式を利用して 6 の近似値を計算した.
- より一般に, 正の数 a, b, c, d, m, n に対して
ba<dc⟹ba<nb+mdna+mc<dc
が成り立つが, それは平面上の点 P(b,a) と原点を結ぶ直線,
点 Q(d,c) と原点を結ぶ直線の間に,
線分 PQ を m:n に内分する点 R(m+nnb+md,m+nna+mc) と原点を結ぶ直線があることからもわかる.
- 0=10 以上 1=11 以下で, 分母が n 以下であるすべての既約分数を小さい順に並べてできる数列を次数 n の「ファレイ数列」 (Farey sequence) と呼ぶ.
ba, dc がある次数の「ファレイ数列」で隣接しているとき (ad−bc=1 が成り立つ), これらの分数の間には次数 b+d において初めて新たな分数 b+da+c が加わることが知られている.