有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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点と直線の距離

点と直線の距離

定理《点と直線の距離》

 点 $(x_0,y_0)$ と直線 $ax+by+c = 0$ の距離 $d$ は \[ d = \frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}\] である.

証明

 こちら (三角比を利用) またはこちら (ベクトルの内積を利用) を参照.

問題《平行な $2$ 直線間の距離》

(1)
$m,$ $n_1,$ $n_2$ を実数とし, $m \neq 0$ とする. 互いに平行な $2$ 直線 $y = mx+n_1,$ $y = mx+n_2$ の間の距離を求めよ.
(2)
$a,$ $b,$ $c_1,$ $c_2$ を実数とし, $(a,b) \neq (0,0)$ とする. 互いに平行な $2$ 直線 $ax+by+c_1 = 0,$ $ax+by+c_2 = 0$ の間の距離を求めよ.
基本定理$2022/11/26$$2022/11/28$

解答例

(1)
求める距離は, $2$ 直線 $y = mx+n_1$ の $y$ 切片 $(0,n_1)$ と直線 $mx-y+n_2 = 0$ の距離に等しいから, \[\frac{|m\cdot 0+(-1)\cdot n_1+n_2|}{\sqrt{m^2+(-1)^2}} = \frac{|n_2-n_1|}{\sqrt{m^2+1}}\] である.
(2)
(i)
$b \neq 0$ のとき. $2$ 直線の方程式は $y = -\dfrac{a}{b}x-\dfrac{c_1}{b},$ $y = -\dfrac{a}{b}x-\dfrac{c_2}{b}$ と変形できるから, (1) によりその間の距離は \[\frac{\left| -\dfrac{c_2}{b}+\dfrac{c_1}{b}\right|}{\sqrt{\left( -\dfrac{a}{b}\right) ^2+1}} = \frac{|c_1-c_2|}{\sqrt{a^2+b^2}} \quad \cdots [1]\] である.
(ii)
$b = 0$ のとき. $2$ 直線の方程式は $x = -\dfrac{c_1}{a},$ $x = -\dfrac{c_2}{a}$ と変形できるから, その間の距離は \[\left| -\frac{c_2}{a}+\frac{c_1}{a}\right| = \frac{|c_1-c_2|}{|a|}\] である. これは $[1]$ に $b = 0$ を代入した値に等しい.
(i), (ii) から, 求める距離は $\dfrac{|c_1-c_2|}{\sqrt{a^2+b^2}}$ である.

問題《三角形の面積の公式とその応用》

 次のことを示せ.
(1)
原点 $\mathrm O$ と点 $\mathrm P(a,b),$ $\mathrm Q(c,d)$ を頂点とする三角形 $\mathrm{OPQ}$ の面積は \[\triangle\mathrm{OPQ} = \frac{1}{2}|ad-bc|\] である.
(2)
各頂点の $x$ 座標, $y$ 座標が整数であるような正三角形は存在しない.
 ただし, $\sqrt 3$ が無理数であることは, 証明なしに使ってよい.
標準定理$2019/03/23$$2023/08/21$

解答例

(1)
辺 $\mathrm{OP}$ の長さは $\sqrt{a^2+b^2}$ である. また, 直線 $\mathrm{OP}:bx-ay = 0$ と点 $\mathrm Q(c,d)$ の距離 $d$ は \[ d = \frac{|bc-ad|}{\sqrt{b^2+(-a)^2}} = \frac{|ad-bc|}{\sqrt{a^2+b^2}}\] であるから, \[\begin{aligned} \triangle\mathrm{OPQ} &= \frac{1}{2}\mathrm{OP}\cdot d \\ &= \frac{1}{2}\sqrt{a^2+b^2}\cdot\frac{|ad-bc|}{\sqrt{a^2+b^2}} \\ &= \frac{1}{2}|ad-bc| \quad \cdots [1] \end{aligned}\] が成り立つ.
(2)
各頂点の $x$ 座標, $y$ 座標が整数である正三角形 $\mathrm{OPQ}$ の存在を仮定する. 平行移動で面積は変わらないことから $\mathrm O$ が原点であるとしても一般性を失わないので, その場合を考える. $\mathrm P(a,b),$ $\mathrm Q(c,d)$ とおく. このとき, $[1]$ が成り立つ. また, $\triangle\mathrm{OPQ}$ が正三角形であることから, \[\triangle\mathrm{OPQ} = \frac{1}{2}\mathrm{OP}^2\sin 60^\circ = \frac{\sqrt 3}{4}(a^2+b^2) \quad \cdots [2]\] が得られる. よって, $[1],$ $[2]$ から, \[\sqrt 3 = \frac{2|ad-bc|}{a^2+b^2}\] が成り立つ. $a,$ $b,$ $c,$ $d$ は整数であることから右辺は有理数であるが, これは $\sqrt 3$ が無理数であることに反する.
 ゆえに, 各頂点の $x$ 座標, $y$ 座標が整数であるような正三角形は存在しない.

参考

  • 座標平面上の各座標が整数である点を「格子点」(lattice point) と呼び, すべての頂点が「格子点」であるような多角形を「格子多角形」(lattice polygon) と呼ぶ. 「格子正多角形」は正方形に限ることが知られている. (1) の別解についてはこちらを, (2) の別解についてはこちらを参照されたい.
  • 座標平面上の各座標が有理数である点を「有理点」(rational point) と呼ぶ. すべての頂点が「有理点」であるような正多角形は, 原点を基準に拡大すると「格子正多角形」になるから, 正方形に限る.

問題《角の二等分線の傾き》

 $a,$ $b$ を $b \neq \pm a$ なる実数とする. $2$ 直線 $y = ax,$ $y = bx$ のなす角の二等分線の傾き $c$ を $a,$ $b$ で表す公式を, 点と直線の距離の公式から導け.
標準定理$2022/08/23$$2024/01/09$

解答例

 角の二等分線 $y = cx$ 上の点 $(t,ct)$ $(t \neq 0)$ と $2$ 直線 $ax-y = 0,$ $bx-y = 0$ の距離は等しいから, \[\begin{aligned} \frac{|at-ct|}{\sqrt{a^2+(-1)^2}} &= \frac{|bt-ct|}{\sqrt{b^2+(-1)^2}} \\ |a-c|\sqrt{b^2+1} &= |b-c|\sqrt{a^2+1} \end{aligned}\] が成り立つ.
両辺を $2$ 乗すると \[ (a-c)^2(b^2+1) = (b-c)^2(a^2+1)\] よって \[\begin{aligned} (a^2+1)(c-b)^2-(b^2+1)(c-a)^2 &= 0 \\ \{ (a^2+1)-(b^2+1)\} c^2-2\{ (a^2+1)b-(b^2+1)a\} c \quad & \\ +(a^2+1)b^2-(b^2+1)a^2 &= 0 \\ (a+b)(a-b)c^2-2(a-b)(ab-1)c-(a+b)(a-b) &= 0 \\ (a+b)c^2-2(ab-1)c-(a+b) &= 0 \end{aligned}\] となるから, $2$ 次方程式の解の公式により \[\begin{aligned} c &= \frac{ab-1\pm\sqrt{(ab-1)^2+(a+b)^2}}{a+b} \\ &= \frac{ab-1\pm\sqrt{(a^2+1)(b^2+1)}}{a+b} \end{aligned}\] が得られる.

参考

  • 上記の公式は, 正接の加法定理, ベクトルの内積の公式からも求められる (こちらこちらを参照).
  • $2$ 直線とそのなす角の二等分線の傾きがすべて整数,有理数になるような傾きの組合せは,「$2$ 次体の整数論」を用いて完全に決定されている (こちらこちらを参照).
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