平面上の点
平面上の点
定理≪$2$ 点間の距離の公式≫
座標平面上の $2$ 点 $(x_1,y_1),$ $(x_2,y_2)$ の間の距離 $d$ は,
\[ d = \sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2}\]
である.
問題≪距離の公式による中線定理の証明≫
$\triangle\mathrm{ABC}$ において, 辺 $\mathrm{BC}$ の中線を $\mathrm M$ とおくとき,
\[\mathrm{AB}^2+\mathrm{AC}^2 = 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{BM}^2) = 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{CM}^2)\]
が成り立つことを, $2$ 点間の距離の公式を使って示せ.
解答例
点 $\mathrm M$ を原点, 半直線 $\mathrm{MC}$ を $x$ 軸の正の部分として, $x$ 軸, $y$ 軸を定める.
$\mathrm A(p,\ q),$ $\mathrm C(r,\ 0)$ とおくと, $\mathrm B(-r,\ 0)$ となるから,
\begin{align*}
\mathrm{AB}^2+\mathrm{AC}^2 &= \{ (p+r)^2+q^2\} +\{ (p-r)^2+q^2\} \\
&= 2\{ (p^2+q^2)+r^2\} \\
&= 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{BM}^2) = 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{CM}^2)
\end{align*}
が成り立つ.

背景
本問の結果は「中線定理」(parallelogram law)として知られている.
問題≪シュタインハウスの問題≫
$x$ 座標も $y$ 座標も整数であるような $xy$ 平面上の点を「格子点」と呼ぶ.
点 $\mathrm C\left(\sqrt 2,\ \dfrac{1}{3}\right)$ から各「格子点」までの距離はすべて異なることを示せ.
$\sqrt 2$ が無理数であることは証明なしに用いてよい.
解答例
「格子点」$\mathrm P_1(x_1,\ y_1),$ $\mathrm P_2(x_2,\ y_2)$ について, $\mathrm{CP}_1 = \mathrm{CP}_2$ を仮定して, $\mathrm P_1 = \mathrm P_2$ を示す.
$\mathrm{CP}_1{}^2 = \mathrm{CP}_2{}^2$ から,
\[ (x_1-\sqrt 2)^2+\left( y_1-\frac{1}{3}\right) ^2 = (x_2-\sqrt 2)^2+\left( y_2-\frac{1}{3}\right) ^2\]
が成り立つ.
両辺を展開して整理すると,
\[ 2(x_1-x_2)\sqrt 2 = x_1{}^2-x_2{}^2+y_1{}^2-y_2{}^2-\frac{2}{3}(y_1-y_2)\]
となる.
$\sqrt 2$ が無理数であって $x_1,$ $x_2$ が整数であることから, 左辺は無理数であるか $0$ である.
一方, $x_1,$ $y_1,$ $x_2,$ $y_2$ が整数であることから右辺は有理数であるので, $x_1-x_2 = 0$ つまり $x_1 = x_2$ となる.
このとき,
\[ 0 = y_1{}^2-y_2{}^2-\frac{2}{3}(y_1-y_2) = (y_1-y_2)\left( y_1+y_2-\frac{2}{3}\right)\]
となる.
$y_1+y_2$ は整数であることから, $y_1+y_2-\dfrac{2}{3} \neq 0$ でなければならず, $y_1-y_2 = 0$ から $y_1 = y_2$ となる.
よって, $\mathrm P_1 = \mathrm P_2$ となる.
ゆえに, 点 $\mathrm C\left(\sqrt 2,\ \dfrac{1}{3}\right)$ から各「格子点」までの距離はすべて異なる.
ゆえに, 点 $\mathrm C\left(\sqrt 2,\ \dfrac{1}{3}\right)$ から各「格子点」までの距離はすべて異なる.
背景
- すべての正の整数 $n$ に対して, ちょうど $n$ 個の「格子点」を含むような円板は存在するかという問題は, 1957 年にシュタインハウス(H. Steinhaus)によって提起され,
上記の命題を示すことによりシェルピンスキ(W. Sierpinski)によって肯定的に解決された.
つまり, 点 $\mathrm C$ を中心とする円の半径を大きくしていくと, 円に含まれる「格子点」は $1$ 個ずつ増えていく.
- これとは別に, ちょうど $n$ 個の「格子点」を周上に含むような円は存在するかという問題も, 1958 年にシンゼル(A. Schinzel)によって肯定的に解決されている.