有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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ピタゴラスの $3$ つ組

ピタゴラスの $3$ つ組

定義《ピタゴラスの $3$ つ組》

(1)
$3$ 辺の長さが整数であるような直角三角形をピタゴラスの三角形 (Pythagorean triangle) と呼ぶ. また, ピタゴラスの三角形の $3$ 辺の長さの組 $(a,b,c)$ $(c > a,\ b)$ をピタゴラスの $3$ つ組 (Pythagorean triple) と呼ぶ. 三平方の定理により, これは方程式 \[ a^2+b^2 = c^2\] の正の整数解 $(a,b,c)$ に他ならない.
(2)
このうち, $a,$ $b,$ $c$ が互いに素であるものは原始的 (primitive) であるという.

ピタゴラスの $3$ つ組を表す公式

定理《ピタゴラスの $3$ つ組を表す公式》

 原始的なピタゴラスの $3$ つ組 $(a,b,c)$ に対して, 次が成り立つ.
(1)
$a,$ $b$ の偶奇は異なる.
(2)
$a$ が奇数, $b$ が偶数であるとき, これは互いに素で偶奇の異なる正の整数 $m,$ $n$ $(m > n)$ を用いて \[ (a,b,c) = (m^2-n^2,2mn,m^2+n^2)\] と表される.

証明

 こちらまたはこちらを参照.

注意

  • $m,$ $n$ の取り方は無限にあるから, 原始的なピタゴラスの $3$ つ組は無限に存在する.
  • 原始的なピタゴラスの $3$ つ組 $(a,b,c)$ ($a$: 奇数, $b$: 偶数, $c > a,$ $b$) を, $c$ が小さい順, 面積 $S$ が小さい順に, $c \leqq 100$ の範囲で書き出すと, 次のようになる. 上記の等式で $a,$ $b,$ $c$ の値を表す $m,$ $n$ の値を付記した.
    \[\begin{array}{ccc|c|cc} a & b & c & S & m & n \\ \hline\hline 3 & 4 & 5 & 6 & 2 & 1 \\ 5 & 12 & 13 & 30 & 3 & 2 \\ 15 & 8 & 17 & 60 & 4 & 1 \\ 7 & 24 & 25 & 84 & 4 & 3 \\ 21 & 20 & 29 & 210 & 5 & 2 \\ 35 & 12 & 37 & 210 & 6 & 1 \\ 9 & 40 & 41 & 180 & 5 & 4 \\ 45 & 28 & 53 & 630 & 7 & 2 \\ 11 & 60 & 61 & 330 & 6 & 5 \\ 63 & 16 & 65 & 504 & 8 & 1 \\ 33 & 56 & 65 & 924 & 7 & 4 \\ 55 & 48 & 73 & 1320 & 8 & 3 \\ 13 & 84 & 85 & 546 & 7 & 6 \\ 77 & 36 & 85 & 1386 & 9 & 2 \\ 39 & 80 & 89 & 1560 & 8 & 5 \\ 65 & 72 & 97 & 2340 & 9 & 4 \end{array}\]

ピタゴラスの $3$ つ組の性質

定理《ピタゴラスの $3$ つ組の性質》

 ピタゴラスの $3$ つ組 $(a,b,c)$ に対して, 次のことが成り立つ.
(1)
$a$ または $b$ は $4$ の倍数である.
(2)
$a$ または $b$ は $3$ の倍数である.
(3)
$a,$ $b,$ $c$ の少なくとも $1$ つは $5$ の倍数である.

証明

 こちらまたはこちらを参照.

ピタゴラスの $3$ つ組の中に現れる整数

定理《ピタゴラスの $3$ つ組の中に現れる整数》

(1)
(i)
$4$ で割った余りが $2$ であるすべての整数は, 原始的なピタゴラスの三角形の辺の長さにならない.
(ii)
$a \geqq 3$ が奇数のとき, \[\left( a,\frac{a^2-1}{2},\frac{a^2+1}{2}\right)\] は, 原始的なピタゴラスの $3$ つ組である.
(iii)
$4$ の倍数 $b = 2^eb'$ ($e \geqq 2$: 整数, $b' \geqq 1$: 奇数) について, \[ (|4^{e-1}-b'^2|,b,4^{e-1}+b'^2)\] は, 原始的なピタゴラスの $3$ つ組である.
(2)
$1,$ $2$ はピタゴラスの三角形の辺の長さにはならないが, $3$ 以上のすべての整数はピタゴラスの三角形の辺の長さになり得る.

証明

(1)
(i)
ピタゴラスの $3$ つ組 $(a,b,c)$ において, $a$ または $b$ は $4$ の倍数である. その $4$ の倍数でない方を $4$ で割った余りが $2$ であるとすると, $a^2+b^2 = c^2$ は偶数となり, $c$ は偶数となるから, $(a,b,c)$ は原始的でなくなる. また, 上記の定理により, 原始的なピタゴラスの三角形の斜辺の長さは奇数である. よって, $4$ で割った余りが $2$ であるすべての整数は, 原始的ピタゴラスの三角形の辺の長さにならない.
(ii)
$a = 2m-1$ $(m > 1)$ を $3$ 以上の奇数とする. このとき, $n = m-1$ とおくと \[ m^2-n^2 = m^2-(m-1)^2 = 2m-1 = a\] となり, $m,$ $n$ は偶奇が異なり, 互いに素となるので, 上記の定理により, $a$ は原始的なピタゴラスの三角形の辺の長さになる. このとき, $m = \dfrac{a+1}{2},$ $n = \dfrac{a-1}{2}$ から, 残りの $2$ 辺の長さは \[ 2mn = \dfrac{a^2-1}{2}, \quad m^2+n^2 = \dfrac{a^2+1}{2}\] である.
(iii)
$b = 2^eb'$ ($e \geqq 2$: 整数, $b' \geqq 1$: 奇数) を $4$ の倍数とする. このとき, $m = 2^{e-1},$ $n = b'$ とおくと \[ 2mn = 2^eb' = b\] となり, $m,$ $n$ は偶奇が異なり, 互いに素となるので, 上記の定理により, $b$ は原始的なピタゴラスの三角形の辺の長さになる. このとき, 残りの $2$ 辺の長さは \[ |m^2-n^2| = |4^{e-1}-b'^2|, \quad m^2+n^2 = 4^{e-1}+b'^2\] である.
(2)
(iv)
\[ (c+b)(c-b) = c^2-b^2 = 1^2\] の非負整数解は $c+b = c-b = 1$ から $b = 0$ を満たすので, $1$ はピタゴラスの三角形の辺の長さにならない.
(v)
\[ (c+b)(c-b) = c^2-b^2 = 2^2\] の非負整数解は $c+b = c-b = 2$ から $b = 0$ を満たすので ($c+b = 4,$ $c-b = 1$ なら $c = \dfrac{5}{2}$ となってしまう), $2$ はピタゴラスの三角形の辺の長さにならない.
(iv), (v) により $1,$ $2$ はピタゴラスの三角形の辺の長さにはならないが, (1) の (ii), (iii) により $3$ 以上のすべての整数はピタゴラスの三角形の辺の長さになり得る.

ピタゴラス変換

定理《ピタゴラス変換》

\[ U = \begin{pmatrix} 1 & -2 & 2 \\ 2 & -1 & 2 \\ 2 & -2 & 3 \end{pmatrix},\ A = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 2 \\ 2 & 1 & 2 \\ 2 & 2 & 3 \end{pmatrix},\ D = \begin{pmatrix} -1 & 2 & 2 \\ -2 & 1 & 2 \\ -2 & 2 & 3 \end{pmatrix}\] とおく. すべての原始ピタゴラスの $3$ つ組は, $(3,4,5)$ を初期値として, \[\begin{pmatrix} a' \\ b' \\ c'\end{pmatrix} = U\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix},\ \begin{pmatrix} a' \\ b' \\ c'\end{pmatrix} = A\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix},\ \begin{pmatrix} a' \\ b' \\ c'\end{pmatrix} = D\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}\] という変換を組み合わせて行うことによって得られる.

高校数学の問題

整数の性質

問題《ピタゴラスの $3$ つ組の公式の代数的証明》

 互いに素な正の整数 $a,$ $b,$ $c$ が $a^2+b^2 = c^2$ を満たすとする. 次のことを示せ.
(1)
$a,$ $b$ の偶奇は異なり, $c$ は奇数である.
 以下, $a$ が奇数, $b$ が偶数であるとする.
(2)
$\dfrac{c+a}{2},$ $\dfrac{c-a}{2}$ は互いに素な平方数である.
(3)
$a,$ $b,$ $c$ は, 互いに素で偶奇の異なる正の整数 $m,$ $n$ $(m > n)$ を用いて \[ a = m^2-n^2, \quad b = 2mn, \quad c = m^2+n^2\] と表される.

解答例

 こちらを参照.

問題《ピタゴラスの $3$ つ組の性質: 媒介変数表示》

 $m,$ $n$ を $m > n$ なる正の整数とする. 次のことを示せ.
(A)
$m^2-n^2,$ $2mn$ の少なくとも一方は $3$ の倍数である.
(B)
$m^2-n^2,$ $2mn,$ $m^2+n^2$ の少なくとも $1$ つは $5$ の倍数である.

解答例

 こちらを参照.

問題《ピタゴラスの $3$ つ組の性質: 方程式》

 $3$ 辺の長さが整数である直角三角形について, 次のことを示せ.
(A)
面積は $6$ の倍数である.
(参考: $2022$ 慶應義塾大, $2006$ 一橋大ほか)
(B)
少なくとも $1$ つの辺の長さは $5$ の倍数である.
(参考: $2021$ 東京海洋大)

解答例

 こちらを参照.

式と証明

問題《ピタゴラスの $3$ つ組と $4$ つ組に関する等式》

(A)
$(m^2-n^2)^2+4m^2n^2 = (m^2+n^2)^2$ 
(B)
$(k^2+l^2-m^2-n^2)^2+4(km-ln)^2+4(kn+lm)^2 = (k^2+l^2+m^2+n^2)^2$ 
が成り立つことを示せ. 

解答例

 こちらを参照.

図形と方程式

問題《ピタゴラスの $3$ つ組の公式の幾何学的証明》

 座標平面において, 点 $\mathrm A(-1,0)$ を通る傾き $t$ の直線と単位円周の交点を $\mathrm P(x,y)$ $(x,\ y > 0)$ とおく.
(1)
$t$ を用いて $x,$ $y$ を表せ.
(2)
$x,$ $y$ が有理数のとき, $t$ は有理数であることを示せ.
(3)
$t$ を $0 < t < 1$ なる有理数とする. このとき, $x,$ $y$ は互いに素な正の整数 $m,$ $n$ $(m > n)$ を用いて \[ x = \frac{m^2-n^2}{m^2+n^2}, \quad y = \frac{2mn}{m^2+n^2} \quad \cdots [\text A]\] と表されることを示せ.
 また, 互いに素な正の整数 $a,$ $b,$ $c$ が $a^2+b^2 = c^2$ を満たすとする. このとき, 次のことを示せ.
(4)
$a,$ $b$ の偶奇は異なる.
(5)
$a$ が奇数, $b$ が偶数であるとする. このとき, $a,$ $b,$ $c$ は互いに素で偶奇の異なる正の整数 $m,$ $n$ $(m > n)$ を用いて \[ a = m^2-n^2, \quad b = 2mn, \quad c = m^2+n^2 \quad \cdots [\text B]\] と表される.

解答例

 こちらを参照.

三角関数

問題《ピタゴラスの $3$ つ組の公式の三角法的証明》

 正の整数 $a,$ $b,$ $c$ ($a < c,$ $b < c$) を $3$ 辺の長さとする直角三角形において, $\theta$ を $\tan\theta = \dfrac{b}{a}$ なる鋭角とし, $t = \tan\dfrac{\theta}{2}$ とおく.
(1)
$t$ を用いて $\cos\theta,$ $\sin\theta,$ $\dfrac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}$ を表せ.
(2)
$t$ は有理数であることを示せ.
(3)
$3$ 辺の長さの比は互いに素な正の整数 $m,$ $n$ $(m > n)$ を用いて \[ a:b:c = (m^2-n^2):2mn:(m^2+n^2)\] と表されることを示せ.

解答例

 こちらを参照.

数列

問題《$3$ 辺の長さが等差数列をなす直角三角形》

 $3$ 辺の長さが等差数列をなすような直角三角形の $3$ 辺の長さの比を求めよ.

解答例

 こちらを参照.

問題《ピタゴラス変換》

 正の整数 $a_1,$ $b_1,$ $c_1$ が $a_1{}^2+b_1{}^2 = c_1{}^2$ を満たすとし, 数列 $\{ a_n\},$ $\{ b_n\},$ $\{ c_n\}$ を \[ (T) \quad \begin{cases} a_{n+1} = |2c_n-a_n-2b_n|, \\ b_{n+1} = |2c_n-2a_n-b_n|, \\ c_{n+1} = 3c_n-2a_n-2b_n \end{cases}\] で定める.
(1)
$a_n{}^2+b_n{}^2 = c_n{}^2$ を示せ.
(2)
$c_n > 0$ と $c_n \geqq c_{n+1}$ を示せ.
(3)
$c_l > c_{l+1} = c_{l+2}$ なる正の整数 $l$ について, $a_l:b_l:c_l$ を求めよ.
(参考: $1992$ 京都大)

解答例

 こちらを参照.