有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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$3$ 次式の展開と因数分解

$3$ 次式の因数分解

定理≪$3$ 次式の因数分解≫

\begin{align*} x^3+y^3 &= (x+y)(x^2-xy+y^2), \\ x^3-y^3 &= (x-y)(x^2+xy+y^2) \end{align*} が成り立つ.

問題≪$3$ 次対称式の因数分解≫

 $x^3+y^3+z^3-3xyz$ を因数分解せよ.

解答例

 $a^3+b^3 = (a+b)^3-3ab(a+b)$ を繰り返し使うと, \begin{align*} &x^3+y^3+z^3-3xyz \\ &= (x+y)^3-3xy(x+y)+z^3-3xyz \\ &= (x+y)^3+z^3-3xy(x+y+z) \\ &= (x\!+\!y\!+\!z)^3\!-\!3(x\!+\!y)z(x\!+\!y\!+\!z)\!-\!3xy(x\!+\!y\!+\!z) \\ &= (x+y+z)\{ (x+y+z)^2-3(x+y)z-3xy\} \\ &= (x+y+z) \\ &\quad \times (x^2\!+\!y^2\!+\!z^2\!+\!2xy\!+\!2yz\!+\!2zx\!-\!3xy\!-\!3yz\!-\!3zx) \\ &= (x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx) \end{align*} が得られる.

背景

 本問の因数分解を複素数の範囲まで進めると, $\omega$ を $1$ の虚数立方根の $1$ つとして, \begin{align*} &x^3+y^3+z^3-3xyz \\ &= (x+y+z)(x+\omega y+\omega ^2z)(x+\omega ^2y+\omega z) \end{align*} となる. この因数分解は, $3$ 次方程式の「オイラーの解法」に利用される. 例えば, $3$ 次方程式 $x^3-x-1 = 0$ は, 上記の式で \[ -3yz = -1, \quad y^3+z^3 = -1\] と見ると, 左辺が \[ x^3-x-1 = (x+y+z)(x+\omega y+\omega ^2z)(x+\omega ^2y+\omega z)\] と因数分解できるから, 実数係数の $3$ 次方程式が少なくとも $1$ つの実数解をもつことに注意すると, 連立方程式 \[ y^3+z^3 = -1, \quad y^3z^3 = \dfrac{1}{27}\] の実数解 $y,$ $z$ が求まれば解ける. $y^3,$ $z^3$ は $2$ 次方程式 \[ s^2+s+\frac{1}{27} = 0\] の $2$ 解 \[ s = -\frac{1}{2}\left( 1\pm\sqrt{1-\frac{4}{27}}\right) = -\left(\frac{1}{2}\pm\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}\right)\] であり, \[\{ y,z\} = \left\{ -\sqrt[3]{\frac{1}{2}+\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}},-\sqrt[3]{\frac{1}{2}-\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}}\right\}\] であるので, $x^3-x-1 = 0$ の解は, \[ x = -y-z,\ -y\omega -z\omega ^2,\ -y\omega ^2-z\omega\] から, \begin{align*} x = & \sqrt[3]{\frac{1}{2}+\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}}+\sqrt[3]{\frac{1}{2}-\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}}, \\ &\sqrt[3]{\frac{1}{2}+\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}}\omega +\sqrt[3]{\frac{1}{2}-\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}}\omega ^2, \\ &\sqrt[3]{\frac{1}{2}+\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}}\omega ^2+\sqrt[3]{\frac{1}{2}-\frac{1}{6}\sqrt{\frac{23}{3}}}\omega \end{align*} である. なお, $t = -s$ とおくと,「カルダノの解法」と同じ補助方程式 $t^2-t+\dfrac{1}{27}= 0$ が現れる(こちらを参照).

問題≪タクシー数に関する方程式の整数解≫

 実数 $x,$ $y$ に対して, $a = x+y,$ $b = x^2-xy+y^2$ とおく.
(1)
$a,$ $b$ を用いて $x$ を表せ.
(2)
$x^3+y^3 = 1729$ のとき, $a > 0,$ $b > 0$ であることを示せ.
(3)
$x^3+y^3 = 1729$ の整数解をすべて求めよ.
[2009 一橋大*]

解答例

(1)
$y = a-x$ を $x^2-xy+y^2 = b$ に代入して整理すると \[ 3x^2-3ax+a^2-b = 0\] となるから, $2$ 次方程式の解の公式により, $x$ は \begin{align*} x &= \frac{3a\pm\sqrt{9a^2-12(a^2-b)}}{6} \\ &= \frac{3a\pm\sqrt{12b-3a^2}}{6} \quad \cdots [1] \end{align*} と表される.
(2)
$x^3+y^3 = 1729$ であるとする. $[1]$ は実数であるから,
$12b-3a^2 \geqq 0$ よって $b \geqq \dfrac{a^2}{4} \geqq 0$
である. 一方, $ab = 1729$ であるから, $a > 0,$ $b > 0$ である.
(3)
$x,$ $y$ を $x^3+y^3 = 1729$ の整数解とする. \[ x^3+y^3 = (x+y)(x^2-xy+y^2) = ab\] であり, \[ 1729 = 7\cdot 13\cdot 19\] であるから, \[ ab = 7\cdot 13\cdot 19\] が成り立つ. $a,$ $b$ は整数であり, (2) により正であるから, \begin{align*} (a,b) = &(1,1729),(7,13\cdot 19),(13,7\cdot 19),(19,7\cdot 13),\\ &(7\cdot 13,19),(7\cdot 19,13),(13\cdot 19,7),(1729,1) \end{align*} が成り立つ. このうち, $[1]$ が整数となるのは \[ (a,b) = (13,7\cdot 19),(19,7\cdot 13)\] の場合に限り, このとき \[ (x,y) = (1,12),(9,10),(10,9),(12,1)\] である.

背景

  • $1729 = 1^3+12^3 = 9^3+10^3$ は $2$ 通りの立方数の和として表される最小の正の整数である. 「インドの魔術師」という異名を持つ数学者 S・ラマヌジャンは療養中, G・H・ハーディーが見舞いに訪れた際に, 「乗ってきたタクシーのナンバーは $1729$ だった. さして特徴のない数字だったよ」 というハーディー教授に対し, すぐさま 「そんなことはありません, とても興味深い数字です. それは $2$ 通りの $2$ つの立方数の和として表せる最小の数です」 と答えたという逸話がある. そのため, $1729$ は「ハーディー=ラマヌジャンのタクシー数」(Hardy–Ramanujan taxicab number)と呼ばれる.
  • 本問の結果から, $1729$ は $3$ 通り以上の $2$ つの立方数の和としては表せないことが分かる.