多角形の面積の公式
三角形
定理《ヘロンの公式》
$\triangle\mathrm{ABC}$ において, $a = \mathrm{BC},$ $b = \mathrm{CA},$ $c = \mathrm{AB},$ $s = \dfrac{a+b+c}{2}$ とおく.
このとき,
\[\triangle\mathrm{ABC} = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}\]
が成り立つ.
証明 1: 余弦定理を利用
こちらを参照.
証明 2: 余角公式と加法定理を利用
点 $\mathrm A,$ $\mathrm B,$ $\mathrm C$ から $\triangle\mathrm{ABC}$ と内接円との接点までの距離をそれぞれ $x,$ $y,$ $z$ とおく.
$\tan\left(\dfrac{\pi}{2}-\theta\right) = \dfrac{1}{\tan\theta}$ に $\theta = \dfrac{\angle\mathrm A}{2}$ を代入すると
\[\frac{x}{r} = \tan\left(\dfrac{\angle\mathrm B}{2}+\dfrac{\angle\mathrm C}{2}\right) = \frac{\dfrac{r}{y}+\dfrac{r}{z}}{1-\dfrac{r}{y}\cdot\dfrac{r}{z}} = \frac{rz+ry}{yz-r^2}\]
となるから,
\[\begin{aligned}
x(yz-r^2) &= r(rz+ry) \\
xyz &= r^2(x+y+z) = r^2s
\end{aligned}\]
が成り立つ.
ゆえに,
\[\begin{aligned}
&\triangle\mathrm{ABC} = \frac{a+b+c}{2}\cdot r = r(x+y+z) \\
&= rs = \sqrt{s\cdot r^2s} = \sqrt{sxyz} \\
&= \!\sqrt{\!s(x+y+z-y-z)(x+y+z-y-z)(x+y+z-z-x)} \\
&= \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}
\end{aligned}\]
が成り立つ.
四角形
定理《ブラーマグプタの公式》
円に内接する四角形 $\mathrm{ABCD}$ において, $a = \mathrm{AB},$ $b = \mathrm{BC},$ $c = \mathrm{CD},$ $d = \mathrm{DA},$ $s = \dfrac{a+b+c+d}{2}$ とおく.
このとき, 四角形の面積 $S$ は
\[ S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}\]
と表される.
証明
こちらを参照.
ブラーマグプタの公式は, 次のブレートシュナイダーの公式に一般化される.
定理《ブレートシュナイダーの公式》
四角形 $\mathrm{ABCD}$ において, $a = \mathrm{AB},$ $b = \mathrm{BC},$ $c = \mathrm{CD},$ $d = \mathrm{DA},$ $s = \dfrac{a+b+c+d}{2},$ $\theta = \angle\mathrm{ABC}+\angle\mathrm{CDA}$ とおく.
このとき, 四角形の面積 $S$ は
\[ S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)-abcd\cos ^2\frac{\theta}{2}}\]
と表される.
証明
$B = \angle\mathrm{ABC},$ $D = \angle\mathrm{CDA}$ とおく.
このとき,
\[ S = \triangle\mathrm{ABC}+\triangle\mathrm{CDA} = \frac{1}{2}ab\sin B+\frac{1}{2}cd\sin D\]
から
\[ 2S = ab\sin B+cd\sin D\]
が成り立つので, 両辺を $2$ 乗すると
\[ 4S^2 \!=\! a^2b^2\sin ^2B\!+\!c^2d^2\sin ^2D\!+\!2abcd\sin B\sin D\ \cdots [1]\]
が得られる.
また, $\triangle\mathrm{ABC},$ $\triangle\mathrm{CDA}$ に余弦定理を適用すると
\[\mathrm{AC}^2 = a^2+b^2-2ab\cos B = c^2+d^2-2cd\cos D\]
となり,
\[\frac{1}{2}(a^2+b^2-c^2-d^2) = ab\cos B-cd\cos D\]
となるから,
両辺を $2$ 乗すると
\[\begin{aligned}
&\frac{1}{4}(a^2+b^2-c^2-d^2)^2 \\
&= a^2b^2\cos ^2B+c^2d^2\cos ^2D-2abcd\cos B\cos D\ \cdots [2]
\end{aligned}\]
が得られる.
$[1],$ $[2]$ の辺々を加えると
\[\begin{aligned}
&4S^2+\frac{1}{4}(a^2+b^2-c^2-d^2)^2 \\
&= a^2b^2+c^2d^2-2abcd(\cos B\cos D-\sin B\sin D) \\
&= a^2b^2+c^2d^2-2abcd\cos (B+D) \\
&= a^2b^2+c^2d^2-2abcd\left( 2\cos ^2\frac{\theta}{2}-1\right) \\
&= (ab+cd)^2-4abcd\cos ^2\frac{\theta}{2}
\end{aligned}\]
となるので,
\[\begin{aligned}
&S^2+abcd\cos ^2\frac{\theta}{2} \\
&= \frac{1}{4}(ab+cd)^2-\frac{1}{16}(a^2+b^2-c^2-d^2) \\
&= \frac{2ab+2cd+a^2+b^2-c^2-d^2}{4} \\
&\qquad \cdot\frac{2ab+2cd-a^2-b^2+c^2+d^2}{4} \\
&= \frac{(a+b)^2-(c-d)^2}{4}\cdot\frac{(c+d)^2-(a-b)^2}{4} \\
&= \frac{a+b+c-d}{2}\cdot\frac{a+b-c+d}{2} \\
&\qquad \cdot\frac{c+d+a-b}{2}\cdot\frac{c+d-a+b}{2} \\
&= (s-a)(s-b)(s-c)(s-d)
\end{aligned}\]
から
\[ S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)-abcd\cos ^2\frac{\theta}{2}}\]
が得られる.
高校数学の問題
図形と計量
問題《ヘロンの公式とブラーマグプタの三角形》
次のことを示せ.
- (1)
- $\triangle\mathrm{ABC}$ において, 周の半分の長さを $s$ とおく.
このとき,
\[\triangle\mathrm{ABC} = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}\]
が成り立つ.
(参考: $2019$ 京都府立大,$2010$ 大阪教育大ほか)
- (2)
- $3$ 辺の長さが $b-1,$ $b,$ $b+1$ である三角形の面積 $S$ が整数であるとする. このとき, $b$ は偶数であり, $x = \dfrac{b}{2}$ とおくと, ある正の整数 $y$ に対して $x^2-3y^2 = 1$ となる.
解答例
こちらを参照.
問題《ブラーマグプタの公式》
円に内接する四角形 $\mathrm{ABCD}$ において, $a = \mathrm{AB},$ $b = \mathrm{BC},$ $c = \mathrm{CD},$ $d = \mathrm{DA}$ とおき, 周の長さの半分を $s$ とおく.
このとき, 四角形 $\mathrm{ABCD}$ の面積 $S$ は
\[ S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}\]
と表されることを示せ.
(参考: $2021$ 山口大,$2019$ 京都府立大,$2017$ 大阪教育大ほか)
解答例
こちらを参照.
三角関数
問題《ヘロンの公式とブラーマグプタの公式》
次のことを示せ.
- (1)
- $0$ より大きく $\pi$ より小さい, $\dfrac{\pi}{2}$ でない実数 $\alpha,$ $\beta,$ $\gamma$ が $\alpha +\beta +\gamma = \pi$ を満たすとき, \[\tan\alpha\tan\beta\tan\gamma = \tan\alpha +\tan\beta +\tan\gamma\] が成り立つ.
- (2)
- 直角三角形でない $\triangle\mathrm{ABC}$ において, $a = \mathrm{BC},$ $b = \mathrm{CA},$ $c = \mathrm{AB},$ $s = \dfrac{a+b+c}{2},$ $A = \angle\mathrm A,$ $B = \angle\mathrm B,$ $C = \angle\mathrm C,$ $S = \triangle\mathrm{ABC}$ とおく.
また, 内接円の中心を $\mathrm I,$ 半径を $r$ とおき, 内接円と辺 $\mathrm{BC},$ $\mathrm{CA},$ $\mathrm{AB}$ の接点をそれぞれ $\mathrm D,$ $\mathrm E,$ $\mathrm F$ とおく.
このとき,
- ①
- $\mathrm{AF} = s-a$
- ②
- $\displaystyle\tan\left(\frac{\pi}{2}-\frac{A}{2}\right) = \frac{s-a}{r}$
- ③
- $S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$
- (3)
- 円に内接する四角形 $\mathrm{ABCD}$ において, $a = \mathrm{AB},$ $b = \mathrm{BC},$ $c = \mathrm{CD},$ $d = \mathrm{DA},$ $s = \dfrac{a+b+c+d}{2}$ とおき, 四角形 $\mathrm{ABCD}$ の面積を $S$ とおく.
また, 辺 $\mathrm{AB}$ の $\mathrm A$ を超える延長と辺 $\mathrm{CD}$ の $\mathrm D$ を超える延長が点 $\mathrm E$ で交わるとし, $p = \mathrm{EA},$ $q = \mathrm{ED}$ とおき, $\triangle\mathrm{EAD}$ の面積を $T$ とおく.
このとき,
- ①
- $S:T = (b^2-d^2):d^2$
- ②
- $(b-d)(p+q) = d(c+a),$ $(b+d)(p-q) = d(c-a)$
- ③
- $S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}$
解答例
こちらを参照.
問題《ブレートシュナイダーの公式》
四角形 $\mathrm{ABCD}$ において, $a = \mathrm{AB},$ $b = \mathrm{BC},$ $c = \mathrm{CD},$ $d = \mathrm{DA},$ $s = \dfrac{a+b+c+d}{2},$ $B = \angle\mathrm{ABC},$ $D = \angle\mathrm{CDA}$ とおき, 面積を $S$ とおく.
- (1)
- $a,$ $b,$ $c,$ $d,$ $\sin B,$ $\sin D$ を用いて $S^2$ を表せ.
- (2)
- $a,$ $b,$ $c,$ $d,$ $\cos B,$ $\cos D$ を用いて $\dfrac{1}{16}(a^2+b^2-c^2-d^2)^2$ を表せ.
- (3)
- $S$ は \[ S = \sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)-abcd\cos ^2\frac{B+D}{2}}\] と表されることを示せ.
- (4)
- $4$ 辺の長さ $a,$ $b,$ $c,$ $d$ を固定しながら四角形 $\mathrm{ABCD}$ を変形するとき, その面積 $S$ は四角形が円に内接するときに限り最大になることを示せ.
解答例
こちらを参照.
複素数平面
問題《座標法》
複素数 $z$ の虚部を $\mathrm{Im}(z)$ で表す.
$n$ 角形 $z_1z_2\cdots z_n$ の面積 $S$ は
\[ S = \displaystyle\frac{1}{2}\left|\sum_{k = 1}^n\mathrm{Im}\,(\overline{z_k}z_{k+1})\right|\]
であり, 絶対値記号の中は頂点の並び方が反時計回りのとき正, 時計回りのとき負であることを示せ.
ただし, $z_{n+1} = z_1$ とする.
(参考: $2000$ 横浜市立大)
解答例
こちらを参照.