有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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フィボナッチ数列の一般項

フィボナッチ数列

定義《フィボナッチ数列, リュカ数列》

(1)
初期条件 $F_1 = F_2 = 1$ と隣接 $3$ 項間漸化式 $F_{n+2} = F_n+F_{n+1}$ で定まる数列 \[\{ F_n\}:1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,\cdots\] をフィボナッチ数列 (Fibonacci sequence) と呼び, その項として表される整数をフィボナッチ数 (Fibonacci number) と呼ぶ.
(2)
初期条件 $L_1 = 1,$ $L_2 = 3$ と隣接 $3$ 項間漸化式 $L_{n+2} = L_n+L_{n+1}$ で定まる数列 \[\{ L_n\}:1,3,4,7,11,18,29,47,76,123,199,322,\cdots\] をリュカ数列 (Lucas sequence) と呼び, その項として表される整数をリュカ数 (Lucas number) と呼ぶ.

ビネの公式

定理《ビネの公式》

 フィボナッチ数列 $\{ F_n\},$ リュカ数列 $\{ L_n\}$ の一般項は \[\begin{aligned} F_n &= \frac{1}{\sqrt 5}\left\{\left(\frac{1+\sqrt 5}{2}\right) ^n-\left(\frac{1-\sqrt 5}{2}\right) ^n\right\}, \\ L_n &= \left(\frac{1+\sqrt 5}{2}\right) ^n+\left(\frac{1-\sqrt 5}{2}\right) ^n \end{aligned}\] である.

証明

 フィボナッチ数列については, こちらを参照.

ビネの公式の応用

定理《フィボナッチ数列の隣接項の比》

 フィボナッチ数列 $\{ F_n\},$ リュカ数列 $\{ L_n\}$ について, \[\lim\limits_{n \to \infty}\frac{F_{n+1}}{F_n} = \lim\limits_{n \to \infty}\frac{L_{n+1}}{L_n} = \frac{1+\sqrt 5}{2}\] が成り立つ.

証明

 $\varphi = \dfrac{1+\sqrt 5}{2},$ $\tilde\varphi = \dfrac{1-\sqrt 5}{2}$ とおく. $\left|\dfrac{\tilde\varphi}{\varphi}\right| = \dfrac{\sqrt 5-1}{1+\sqrt 5} < 1$ であるから, ビネの公式により \[\begin{aligned} \frac{F_{n+1}}{F_n} &= \frac{\varphi ^{n+1}-\tilde\varphi ^{n+1}}{\varphi ^n-\tilde\varphi ^n} = \frac{\varphi -\tilde\varphi\left(\dfrac{\tilde\varphi}{\varphi}\right) ^n}{1-\left(\dfrac{\tilde\varphi}{\varphi}\right) ^n} \\ &\to \varphi = \frac{1+\sqrt 5}{2} \quad (n \to \infty ) \end{aligned}\] となる.
 リュカ数列についても同様である.

定理《フィボナッチ数列とリュカ数列の相互関係》

 すべての非負整数 $n$ に対して,
(1)
$L_{n+1} = F_n+F_{n+2}$ 
(2)
$F_{2n} = F_nL_n$ 
(3)
$F_{2^n} = L_{2^{n-1}}\cdots L_{2^k}\cdots L_1$ 
が成り立つ.

証明

(1)
ビネの公式により, \[\begin{aligned} L_{n+1}-F_{n+2} &= \varphi ^{n+1}+\tilde\varphi ^{n+1}-\frac{\varphi ^{n+2}-\tilde\varphi ^{n+2}}{\varphi -\tilde\varphi} \\ &= \frac{(\varphi -\tilde\varphi )(\varphi ^{n+1}+\tilde\varphi ^{n+1})-\varphi ^{n+2}+\tilde\varphi ^{n+2}}{\varphi -\tilde\varphi} \\ &= \frac{\varphi\tilde\varphi ^{n+1}-\varphi ^{n+1}\tilde\varphi}{\varphi -\tilde\varphi} = \frac{-\varphi\tilde\varphi (\varphi ^n-\tilde\varphi ^n)}{\varphi -\tilde\varphi} \\ &= \frac{\varphi ^n-\tilde\varphi ^n}{\varphi -\tilde\varphi} \quad (\because\varphi\tilde\varphi = -1) \\ &= F_n \end{aligned}\] が成り立つ.
(2)
ビネの公式により, \[ F_nL_n = \frac{\varphi ^n-\tilde\varphi ^n}{\varphi -\tilde\varphi}(\varphi ^n+\tilde\varphi ^n) = \frac{\varphi ^{2n}-\tilde\varphi ^{2n}}{\varphi -\tilde\varphi} = F_{2n}\] が成り立つ.
(3)
$n \geqq 1$ のとき, (3) により, \[ F_{2^n} = F_{2\cdot 2^{n-1}} = F_{2^{n-1}}L_{2^{n-1}}\] が成り立つ. $n \geqq 2$ のとき, $F_{2^{n-1}} = F_{2^{n-2}}L_{2^{n-2}}$ であるから, \[ F_{2^n} = F_{2\cdot 2^{n-1}} = F_{2^{n-2}}L_{2^{n-2}}L_{2^{n-1}}\] が成り立つ. この操作を続けると, \[ F_{2^n} = F_{2^0}L_{2^{n-1}}\cdots L_{2^k}\cdots L_1 = L_{2^{n-1}}\cdots L_{2^k}\cdots L_1\] が得られる.

定理《偶数番目のリュカ数》

 すべての非負整数 $n$ に対して, \[ L_{2n} = L_n{}^2+2(-1)^{n+1}\] が成り立つ.

証明

 ビネの公式により, \[\begin{aligned} L_{2n} &= \varphi ^{2n}+\tilde\varphi ^{2n} = (\varphi ^n+\tilde\varphi ^n)^2-2(\varphi\tilde\varphi )^n \\ &= L_n{}^2-2(-1)^n = L_n{}^2+2(-1)^{n+1} \end{aligned}\] が成り立つ.

高校数学の問題

数と式

問題《リュカ数を表す対称式の値》

 $\alpha = \dfrac{1+\sqrt 5}{2},$ $\beta = \dfrac{1-\sqrt 5}{2}$ とする. \[\alpha +\beta, \quad \alpha\beta, \quad \alpha ^2+\beta ^2, \quad \alpha ^3+\beta ^3, \quad \alpha ^4+\beta ^4, \quad \alpha ^5+\beta ^5\] の値を求めよ.

解答例

 こちらを参照.

複素数と方程式

問題《一般リュカ数列の恒等式》

 整数係数 $2$ 次方程式 $x^2-px+q = 0$ が実数解 $\alpha,$ $\beta$ $(\alpha > \beta )$ をもつとし, 各正の整数 $n$ に対して \[ x_n = \alpha ^n+\beta ^n, \quad y_n = \frac{\alpha ^n-\beta ^n}{\alpha -\beta}\] と定める. また, $D = p^2-4q$ とおく.
(1)
$p,$ $q$ を用いて $\alpha +\beta,$ $\alpha\beta,$ $\alpha -\beta$ を表せ.
(2)
等式 \[\begin{aligned} x_1 &= p, & x_2 &= p^2-2q, & x_{n+2} &= px_{n+1}-qx_n \\ y_1 &= 1, & y_2 &= p, & y_{n+2} &= py_{n+1}-qy_n \end{aligned}\] が成り立つことを示せ.
(3)
等式 \[ x_n{}^2-Dy_n{}^2 = 4q^n\] が成り立つことを示せ.

解答例

 こちらを参照.

数列

問題《フィボナッチ数列の一般項と和》

 $1$ 歩目は $1$ 段だけ上るとし, $2$ 歩目以降は $1$ 歩で $1$ 段上ることも $2$ 段上ることもできるとして, $n$ 段の階段を上る方法の総数を $F_n$ とおく. また, 同様の方法で $n$ 段以下の階段を上る方法の総数を $S_n$ とおく.
(1)
$F_{n+2} = F_n+F_{n+1}$ が成り立つことを示せ.
(2)
数列 $\{ F_{n+1}-\alpha F_n\},$ $\{ F_{n+1}-\beta F_n\}$ がそれぞれ公比 $\beta,$ $\alpha$ の等比数列になるような定数 $\alpha,$ $\beta\ (\alpha > \beta )$ を $1$ 組求めよ.
(3)
数列 $\{ F_n\}$ の一般項を求めよ.
(4)
数列 $\{ S_n\}$ の一般項を求めよ.
(参考: $2022$ 山口大)

解答例

 こちらを参照.

関数と極限

問題《フィボナッチ数列の隣接項の比の極限》

 $F_1 = F_2 = 1,$ $F_{n+2} = F_n+F_{n+1}$ で定まる数列 $\{ F_n\}$ は「フィボナッチ数列」と呼ばれ, その一般項は \[ F_n = \frac{1}{\sqrt 5}\left\{\left(\frac{1+\sqrt 5}{2}\right) ^n-\left(\frac{1-\sqrt 5}{2}\right) ^n\right\}\] であることが知られている (証明はこちらを参照). この数列について, 隣り合う項の比の極限 $\lim\limits_{n \to \infty}\dfrac{F_{n+1}}{F_n}$ を求めよ.

解答例

 こちらを参照.