有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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不等式の整数解

不等式の整数解

問題≪プラトンの多面体定理≫

(1)
各頂点に $m$ 本の辺が集まり, 各面が正 $n$ 角形であるような正多面体について, $(m-2)(n-2) < 4$ が成り立つことを示せ.
(2)
正多面体は, 正四面体, 正六面体, 正八面体, 正十二面体, 正二十面体の $5$ つに限ることを示せ.

解答例

(1)
各頂点に $m$ 本の辺が集まり, 各面が正 $n$ 角形であるような正多面体を考える. 正多面体には凹みがないから, その $1$ つの頂点に集まる角の和は $360^\circ$ 未満である. 正 $n$ 角形の内角の大きさは $180^\circ \times (n-2)\div n$ であるから, \[\frac{180(n-2)m}{n} < 360\] が成り立つ. 整理すると $(n-2)m < 2n$ となり, $mn-2m-2n < 0$ から \[ (m-2)(n-2) < 4 \quad \cdots [1]\] となる.
(2)
$m \geqq 3,$ $n \geqq 3$ に注意すると, $[1]$ から \begin{align*} (m-2,n-2) &= (1,1),\ (1,2),\ (2,1),\ (1,3),\ (3,1) \\ (m,n) &= (3,3),\ (3,4),\ (4,3),\ (3,5),\ (5,3) \end{align*} となる. この条件を満たす正多面体は, それぞれ正四面体, 正六面体, 正八面体, 正十二面体, 正二十面体である.

背景

 本問の結果は「プラトンの多面体定理」として知られている.
  
 

問題≪$1$ 未満のエジプト分数の最大値≫

(A)
連立不等式 \[\frac{1}{x}+\frac{1}{y} < 1\ \cdots [1], \quad 0 < x < y\ \cdots [2]\] の整数解について, $[1]$ の左辺の最大値を求めよ.
(B)
連立不等式 \[\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z} < 1\ \cdots [1], \quad 0 < x < y < z\ \cdots [2]\] の整数解について, $[1]$ の左辺の最大値を求めよ.
(参考: 2006 富山大)

解答例

(A)
整数 $x,$ $y$ が $[1],$ $[2]$ を満たすとして, $S = \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}$ とおく.
$y > 0$ から $\dfrac{1}{y} > 0$ であるので, $x = 1$ は不適で, $x \geqq 2$ である.
$x < y$ から $\dfrac{1}{y} < \dfrac{1}{x}$ であるので, $[1]$ から \[\frac{2}{y} = \frac{1}{y}+\frac{1}{y} < S < 1\] が成り立つ. よって, $y > 2$ から, $y \geqq 3$ である. $S$ は, $x,$ $y$ に関してそれぞれ単調減少であるから, $(x,y) = (2,3)$ のとき最大値 $\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3} = \dfrac{5}{6}$ をとる.
(B)
整数 $x,$ $y,$ $z$ が $[1],$ $[2]$ を満たすとして, $S = \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}$ とおく.
$y > 0,$ $z > 0$ から $\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z} > 0$ であるので, $x = 1$ は不適で, $x \geqq 2$ である.
これと $y > x$ から, $y \geqq 3$ であることが必要である.
(i)
$x = 2,$ $y = 3$ のとき. $[1]$ から \[ S = \frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{z} < 1\] であるので, $\dfrac{1}{z} < \dfrac{1}{6},$ $z > 6$ つまり $z \geqq 7$ となる. $S$ は, $x,$ $y,$ $z$ に関してそれぞれ単調減少で, $\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{7} = \dfrac{41}{42} < 1$ であるから, $(x,y,z) = (2,3,7)$ のとき最大値 $\dfrac{41}{42}$ をとる.
(ii)
$x = 2,$ $y \geqq 4$ のとき. $[2]$ から $z \geqq 5$ であり, $\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{5} = \dfrac{19}{20} < 1$ であるから, $S$ は $(x,y,z) = (2,4,5)$ のとき最大値 $\dfrac{19}{20}$ をとる.
(iii)
$x \geqq 3$ のとき. $[2]$ から $y \geqq 4,$ $z \geqq 5$ であり, $\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{5} = \dfrac{47}{60} < 1$ であるから, $S$ は $(x,y,z) = (3,4,5)$ のとき最大値 $\dfrac{47}{60}$ をとる.
(i)~(iii) と $\dfrac{47}{60} < \dfrac{19}{20} < \dfrac{41}{42}$ から, $S$ は $(x,y,z) = (2,3,7)$ のとき最大値 $\dfrac{41}{42}$ をとる.

背景

  • 古代エジプトにおいて, 分数は相異なる「単位分数」(分子が $1$ の分数, unit fraction)の和として表されていた. このように表された有理数を「エジプト分数」(Egyptian fraction)と呼ぶ. 「エジプト分数」は, ヨーロッパでは中世まで広く使われていた.
  • 項数が $n$ の場合の $1$ 未満で最大の「エジプト分数」において, $n-1$ 個の分母は項数が $n-1$ の場合の $1$ 未満で最大の「エジプト分数」の分母と一致することが知られている. 分母の成す数列 $2,$ $3,$ $7,$ $\cdots$ は「シルヴェスター数列」(Sylvester's sequence)と呼ばれる(こちらを参照).