有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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整数の他の問題

整数の他の問題

問題《整数値多項式の特徴付け》

 実数係数 $d$ 次多項式 $f(x)$ について, 次の $3$ 条件は同値であることを示せ.
(i)
すべての整数 $n$ に対して, $f(n)$ は整数である.
(ii)
$f(0)$ は整数であり, すべての整数 $n$ に対して $f(n+1)-f(n)$ は整数である.
(iii)
$f(0),$ $\cdots,$ $f(d)$ は整数である.
実戦定理$2019/03/20$$2022/08/15$

解答例

 (i) $\Longrightarrow$ (ii) は明らか.
 (ii) を仮定すると, すべての正の整数 $n$ に対して \[\begin{aligned} f(n) &= \{ f(n)-f(n-1)\} +\cdots +\{ f(1)-f(0)\} +f(0), \\ f(-n) &= f(0)-\{ f(0)-f(-1)\} -\cdots -\{ f(-n+1)-f(-n)\} \end{aligned}\] は整数になる. よって, (ii) $\Longrightarrow$ (i) が成り立つ.
 次に, (ii) $\iff$ (iii) を示す.
(a)
$d = 0$ のとき. $f(x)$ は定数関数であるから, (ii) $\iff$ (iii) が成り立つ.
(b)
与えられた非負整数 $d$ について, 各 $d$ 次多項式に対して (ii) $\iff$ (iii) の成立を仮定する. この $d$ に対して (i) $\iff$ (iii) が成り立つ. $f(x)$ を $d+1$ 次多項式とすると, $f(x+1)-f(x)$ は $d$ 次になるから,
すべての整数 $n$ に対して $f(0),$ $f(n+1)-f(n)$ は整数
$\iff$ $f(0),$ $f(1)-f(0),$ $\cdots,$ $f(d+1)-f(d)$ は整数
$\iff$ $f(0),$ $\cdots,$ $f(d),$ $f(d+1)$ は整数
となる.
(a), (b) から, すべての非負整数 $d$ に対して (ii) $\iff$ (iii) が成り立つ.
 以上から, (i)~(iii) はすべて同値である.

参考

  • どのような整数を代入しても整数の値をとる多項式を「整数値多項式」と呼ぶ.
  • 「整数値多項式」がどのように表されるかについては, こちらを参照されたい.

問題《有理数のエジプト分数による表示》

 $a,$ $b$ を $a < b$ なる互いに素な正の整数とし, $b$ を $a$ で割った商を $q$ とおく.
(1)
\[\frac{a}{b} < \frac{1}{q} \quad \cdots [1]\] であることを示せ.
(2)
互いに素な整数 $a',$ $b'$ $(b' > 0)$ を用いて $\dfrac{a}{b}$ を \[\frac{a}{b} = \frac{1}{q+1}+\frac{a'}{b'} \quad \cdots [2]\] と表すとき, $a > a' > 0,$ $q+1 < b'$ であることを示せ.
(3)
有理数 $\dfrac{a}{b}$ は
$\dfrac{a}{b} = \dfrac{1}{d_1}+\cdots +\dfrac{1}{d_n}$ ($d_k$: 整数, $1 < d_1 < \cdots < d_n$) $\cdots [3]$
の形に表されることを示せ.
(参考: $2021$ 広島大)
実戦定理$2022/08/04$$2022/08/04$

解答例

 $b$ を $a$ で割った余りを $r$ とおく. このとき, $b = aq+r,$ $0 < r < a$ ($a,$ $b$ が互いに素であることから $r \neq 0$) から
$0 < b-aq < a$ つまり $aq < b < a(q+1)$
が成り立つ.
(1)
$aq < b$ の両辺を $bq$ で割ると, \[\frac{a}{b} < \frac{1}{q} \quad \cdots [1]\] が得られる.
(2)
$b < a(q+1)$ から \[\frac{a'}{b'} = \frac{a}{b}-\frac{1}{q+1} = \frac{a(q+1)-b}{b(q+1)} > 0 \quad \cdots [2]'\] が成り立つので, $a' > 0$ であり, \[ a' \leqq a(q+1)-b = a-(b-aq) = a-r < a\] (左側の不等式の等号成立は $[2]'$ で右側の分数が既約なとき) が成り立つ. また, $[1]$ から \[\begin{aligned} \frac{1}{b'} \leqq \frac{a'}{b'} &= \frac{a}{b}-\frac{1}{q+1} \\ &< \frac{1}{q}-\frac{1}{q+1} = \frac{1}{q(q+1)} < \frac{1}{q+1} \end{aligned}\] が成り立つので, $q+1 < b'$ である.
(3)
$a = 1$ のとき, $d_1 = b$ とおけばよい. $a \geqq 2$ のとき, $\dfrac{a}{b}$ を $[2]$ のように表し, $d_1 = q+1$ とおく. $a' = 1$ のとき, $q+1 < b'$ に注意して, $d_2 = b'$ とおけばよい. $a' \geqq 2$ のとき, 同様の議論により, $\dfrac{a'}{b'}$ は $d_1$ より大きい整数 $d_2$ の逆数と分子がより小さい分数 (分母・分子は正) の和として表せる. $a$ より小さい正の整数は $a$ 個しかないから, この操作を高々 $a$ 回繰り返すと, 残りの分数の分子も $1$ になり, 求める表示 $[3]$ が得られる.

参考

 古代エジプトでは, 整数でない有理数を表すとき, $\dfrac{2}{3}$ を唯一の例外として, 相異なる「単位分数」(分子が $1$ の分数) の和として表した. このように表された有理数を「エジプト分数」と呼ぶ. 「エジプト分数」は, 中世までヨーロッパで広く使われていた.
問題一覧 (整数の性質)整数の剰余 $1$ 次不定方程式 素数
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