有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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階差数列

階差数列

定義《階差数列》

 数列 $\{ a_n\}$ に対して, $a_{n+1}-a_n$ を一般項とする数列を $\{ a_n\}$ の階差数列(difference sequence)と呼ぶ.

定理《階差数列と一般項》

 数列 $\{ a_n\}$ の階差数列が $\{ d_n\}$ であるならば, $n \geqq 2$ のとき \[ a_n = a_1+\sum_{k = 1}^{n-1}d_k\] が成り立つ.

問題《シュタイナーの平面・空間の分割問題》

(1)
どの $2$ 本も平行でなく, どの $3$ 本も $1$ 点で交わらないように, 平面上に $n$ 本の直線を描く. このとき, 平面が分割されてできる領域の個数 $a_n$ を求めよ.
(参考: 2019 横浜市立大)
(2)
どの $2$ 枚も平行でなく, どの $3$ 枚も直線を共有せず, その $4$ 枚も $1$ 点で交わらないように, 空間内に $n$ 枚の平面を描く. このとき, 空間が分割されてできる領域の個数 $b_n$ を求めよ.
(参考: 2011 立命館大, 2019 東京工業大)

解答例

(1)
$n$ 本の直線を描いた状態から新たに $1$ 本の直線を描いていくと, 既存の直線と交わるたびに領域が $1$ 個ずつ増え, 全部で $n+1$ 個の平面領域が増えるので, \[ a_{n+1}-a_n = n+1\] が成り立つ.
また, $a_1 = 2$ であるから, $n \geqq 2$ のとき \[\begin{aligned} a_n &= a_1+\sum_{k = 1}^{n-1}(a_{k+1}-a_k) \\ &= 2+\sum_{k = 1}^{n-1}(k+1) \\ &= 2+\frac{(n-1)n}{2}+(n-1) \\ &= \frac{n^2+n+2}{2} \end{aligned}\] が成り立つ. これは $n = 1$ のときも成り立つ.
(2)
$n$ 枚の平面を描いた状態から新たに $1$ 枚の平面を描いていくと, 新たな平面が既存の平面との交線 $n$ 本により分割されてできる平面領域の個数 $a_n$ だけ空間領域が増えるので, \[ b_{n+1}-b_n = a_n = \frac{n^2+n+2}{2}\] が成り立つ. また, $b_1 = 2$ であるから, $n \geqq 2$ のとき \[\begin{aligned} b_n &= b_1+\sum_{k = 1}^{n-1}(b_{k+1}-b_k) \\ &= 2+\sum_{k = 1}^{n-1}\frac{k^2+k+2}{2} \\ &= 2+\frac{1}{2}\left(\sum_{k = 1}^{n-1}k^2+\sum_{k = 1}^{n-1}k+\sum_{k = 1}^{n-1}2\right) \\ &= 2+\frac{1}{2}\left\{\frac{1}{6}(n-1)n(2n-1)+\frac{1}{2}(n-1)n\right. \\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad \left.+2(n-1)\right\} \end{aligned}\] であり, 展開して整理すると, \[\begin{aligned} b_n &= \frac{(n+1)(n^2-n+6)}{6} \end{aligned}\] が得られる. これは $n = 1$ のときも成り立つ.

参考

 どの $2$ 本も平行でなく, どの $3$ 本も $1$ 点で交わらないような $n$ 本の直線として, 例えば, 放物線 $y = x^2$ の点 $(k,k^2)$ における接線 \[ y = 2k(x-k)+k^2\] ($k$: 整数, $1 \leqq k \leqq n$)が挙げられる. 実際, これらの直線の傾きはすべて異なるから, どの $2$ 本も平行でない. また, $1$ 点から放物線に引ける接線の本数は $2$ 本以下であるから, どの $3$ 本も $1$ 点で交わることはない.

問題《円周による平面の分割》

 どの $2$ 個も $2$ 点で交わり, どの $3$ 個も $1$ 点で交わらないように, 平面上に $n$ 個の円周を描く. このとき, 平面が分割されてできる領域の個数 $a_n$ を求めよ.

解答例

 $n$ 個の円周を描いた状態から新たに $1$ 個の円周を描いていくと, 既存の各円周と $2$ 点で交わり, その各交点で領域が $1$ 個ずつ増えて, 全部で $2n$ 個の領域が増えるので, \[ a_{n+1}-a_n = 2n\] が成り立つ.
また, $a_1 = 2$ であるから, $n \geqq 2$ のとき \[\begin{aligned} a_n &= a_1+\sum_{k = 1}^{n-1}(a_{k+1}-a_k) \\ &= 2+\sum_{k = 1}^{n-1}2k \\ &= 2+2\cdot\frac{(n-1)n}{2} \\ &= n^2-n+2 \end{aligned}\] が成り立つ. これは $n = 1$ のときも成り立つ.

問題《モーザーの円の分割問題》

 円周上に相異なる $n$ 個の点 $\mathrm P_1,$ $\cdots,$ $\mathrm P_n$ があり, 次の条件を満たすとする.
  • 与えられた点は番号順に反時計回りに並ぶ.
  • 与えられた点どうしをすべて弦で結んだとき, どの $3$ 本の弦も円の内部において $1$ 点で交わらない.
このとき, 円が分割されてできる領域の個数を $a_n$ とおく.
(1)
この状態から, 新たな点 $\mathrm P_{n+1}$ をとり, 上記の条件を満たすようにする(与えられた点と既存の弦の交点とを通る弦は有限個しかなく, 弧 $\mathrm P_n\mathrm P_1$ 上には無限に多くの点があるから, これは可能である). $1 \leqq k \leqq n$ なる各整数 $k$ に対して, 弦 $\mathrm P_k\mathrm P_{n+1}$ を引く際に, 円が分割されてできる領域は $(k-1)(n-k)+1$ 個増えることを説明せよ.
(2)
$n$ を用いて $a_{n+1}-a_n$ を表せ.
(3)
$n$ を用いて $a_n$ を表せ.

解答例

(1)
点 $\mathrm P_k$ から点 $\mathrm P_{n+1}$ に向かって弦 $\mathrm P_k\mathrm P_{n+1}$ を引いていくと, 既存の弦と交わるたびに領域が $1$ 個ずつ増えて, 点 $\mathrm P_{n+1}$ に達したときに領域がさらに $1$ 個増える. 弦 $\mathrm P_k\mathrm P_{n+1}$ と交わる弦はその両側の点を結んだ $(k-1)(n-k)$ 本の弦 $\mathrm P_i\mathrm P_j$ $(1 \leqq i \leqq k-1,$ $k+1 \leqq j \leqq n+1)$ に限るから, 領域は全部で $(k-1)(n-k)+1$ 個増える.
(2)
円周上に点 $\mathrm P_1,$ $\cdots,$ $\mathrm P_n$ しかとっていない状態から $n$ 本の弦 $\mathrm P_k\mathrm P_{n+1}$ $(1 \leqq k \leqq n)$ を引くときに増える領域の個数を考えると, (1) の結果から, \[\begin{aligned} &a_{n+1}-a_n \\ &= \sum_{k = 1}^n\{ (k-1)(n-k)+1\} \\ &= \sum_{k = 1}^n\{ -k^2+(n+1)k+(1-n)\} \\ &= -\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\frac{1}{2}n(n+1)^2+(1-n)n \\ &= \frac{1}{6}n\{ -(n+1)(2n+1)+3(n+1)^2+6(1-n)\} \\ &= \frac{1}{6}n(n^2-3n+8) \end{aligned}\] が得られる.
(3)
$n \geqq 2$ のとき, (2) の結果から, \[\begin{aligned} a_n &= a_1+\sum_{k = 1}^{n-1}\frac{1}{6}k(k^2-3k+8) \\ &= 1+\frac{1}{6}\sum_{k = 1}^{n-1}(k^3-3k^2+8k) \\ &= 1+\frac{1}{6}\left\{\frac{1}{4}(n-1)^2n^2\right. \\ &\qquad \left.-3\cdot\frac{1}{6}(n-1)n(2n-1)+8\cdot\frac{1}{2}(n-1)n\right\} \\ &= 1+\frac{1}{24}(n-1)n\{ (n-1)n-2(2n-1)+16\} \\ &= 1+\frac{1}{24}(n-1)n(n^2-5n+18) \\ &= \frac{1}{24}(n^4-6n^3+23n^2-18n+24) \end{aligned}\] が得られる. これは $n = 1$ のときも成り立つ. ゆえに, すべての正の整数 $n$ に対して $a_n = \dfrac{1}{24}(n^4-6n^3+23n^2-18n+24)$ が成り立つ.

背景

 本問は,「モーザーの円の分割問題」(Moser's circle problem)としてよく知られている. \[ a_1 = 1, \quad a_2 = 2, \quad a_3 = 4, \quad a_4 = 8, \quad a_5 = 16\] から $a_n = 2^{n-1}$ と推測してしまいそうだが, $a_6 = 31$ で $\{ a_n\}$ は等比数列でない. この結果は, すべてが証明されるまでは予想は覆される恐れがあるということをよく暗示している.

さまざまな数列の和

問題《平方数の逆数の和の評価》

 $n$ を正の整数とする.
(1)
$n > 1$ のとき, $\dfrac{1}{1\cdot 2}\!+\!\dfrac{1}{2\cdot 3}\!+\!\cdots\!+\!\dfrac{1}{(n\!-\!1)n}$ を求めよ.
(2)
$n \geqq 1$ のとき, $\dfrac{1}{1^2}+\dfrac{1}{2^2}+\cdots +\dfrac{1}{n^2} < 2$ を示せ.

解答例

(1)
$\dfrac{1}{(x-1)x} = \dfrac{1}{x-1}-\dfrac{1}{x}$ であるから, $n > 1$ のとき \[\begin{aligned} &\frac{1}{1\cdot 2}+\frac{1}{2\cdot 3}+\cdots +\frac{1}{(n-1)n} \\ &= \frac{1}{1}-\frac{1}{2}+\frac{1}{2}-\frac{1}{3}+\cdots +\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n} \\ &= 1-\frac{1}{n} \end{aligned}\] である.
(2)
(i)
$n = 1$ のとき, $\dfrac{1}{1^2} = 1 < 2$ である.
(ii)
$n > 1$ のとき, (1) の結果により, \[\begin{aligned} \frac{1}{1^2}\!+\!\frac{1}{2^2}\!+\!\cdots\!+\!\frac{1}{n^2} &< 1\!+\!\frac{1}{1\!\cdot\!2}\!+\!\cdots\!+\!\frac{1}{(n\!-\!1)n} \\ &= 1+\left( 1-\frac{1}{n}\right) = 2-\frac{1}{n} \\ &< 2 \end{aligned}\] が成り立つ.
(i), (ii) から, $n \geqq 1$ のとき \[\frac{1}{1^2}+\frac{1}{2^2}+\cdots +\frac{1}{n^2} < 2\] が成り立つ.

背景

  • 常に一定値以下(以上)の値をとる単調増加(減少)数列は収束することが知られているので, 無限級数 $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^2}$ は収束する(数学 III). 実際に, $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^2} = \dfrac{\pi ^2}{6} = 1.64493\cdots$ であることが知られている.
  • 一般に, 無限級数 $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^s}$ は, $s > 1$ のとき収束することが知られており, 定義域を複素数に拡げた「リーマン・ゼータ関数」(Riemann zeta function)に一般化される.

問題《立方数の逆数の和の評価》

 $n$ を正の整数とする.
(1)
$n > 1$ のとき, $\dfrac{1}{1\!\cdot\!2\!\cdot\!3}\!+\!\dfrac{1}{2\!\cdot\!3\!\cdot\!4}\!+\!\cdots\!+\!\dfrac{1}{(n\!-\!1)n(n\!+\!1)}$ を求めよ.
(2)
$n \geqq 1$ のとき, $\dfrac{1}{1^3}+\dfrac{1}{2^3}+\cdots +\dfrac{1}{n^3} < \dfrac{5}{4}$ を示せ.
(参考: 2002 一橋大)

解答例

(1)
\[\frac{1}{(x-1)x(x+1)} = \frac{1}{2}\left\{\frac{1}{(x-1)x}-\frac{1}{x(x+1)}\right\}\] であるから, $n > 1$ のとき \[\begin{aligned} &\frac{1}{1\cdot 2\cdot 3}+\frac{1}{2\cdot 3\cdot 4}+\cdots +\frac{1}{(n-1)n(n+1)} \\ &= \frac{1}{2}\left(\frac{1}{1\cdot 2}-\frac{1}{2\cdot 3}\right) +\frac{1}{2}\left(\frac{1}{2\cdot 3}-\frac{1}{3\cdot 4}\right) \\ &\qquad +\cdots +\frac{1}{2}\left\{\frac{1}{(n-1)n}-\frac{1}{n(n+1)}\right\} \\ &= \frac{1}{2}\left\{\frac{1}{2}-\frac{1}{n(n+1)}\right\} = \frac{1}{2}\cdot\frac{n(n+1)-2}{2n(n+1)} \\ &= \frac{(n-1)(n+2)}{4n(n+1)} \end{aligned}\] である.
(2)
(i)
$n = 1$ のとき, $\dfrac{1}{1^3} = 1 < \dfrac{5}{4}$ である.
(ii)
$n > 1$ のとき, (1) の結果により \[\begin{aligned} &\frac{1}{1^3}+\frac{1}{2^3}+\cdots +\frac{1}{n^3} \\ &< 1+\frac{1}{1\cdot 2\cdot 3}+\cdots +\frac{1}{(n-1)n(n+1)} \\ &= 1+\frac{(n-1)(n+2)}{4n(n+1)} \end{aligned}\] であるから, $\dfrac{(n-1)(n+2)}{4n(n+1)} < \dfrac{1}{4}$ を示せばよい.
これは, \[\begin{aligned} \frac{(n\!-\!1)(n\!+\!2)}{4n(n\!+\!1)}\!-\!\frac{1}{4} &= \frac{(n\!-\!1)(n\!+\!2)\!-\!n(n\!+\!1)}{4n(n\!+\!1)} \\ &= \frac{-2}{4n(n+1)} < 0 \end{aligned}\] から従う.
(i), (ii) から, $n \geqq 1$ のとき \[\frac{1}{1^3}+\frac{1}{2^3}+\cdots +\frac{1}{n^3} < \frac{5}{4}\] が成り立つ.

背景

  • 無限級数 $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^s}$ (数学 III)は $s$ が正の偶数のとき, $s = 3$ のときに無理数であることが知られており, $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^3} \!=\! 1.20205\cdots$ は「アペリーの定数」(Apéry's constant)として知られている.
  • $s$ が $5$ 以上の奇数のとき $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^s}$ が無理数であるかどうかは知られていない($2019$ 年 $4$ 月現在).