有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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等比数列

等比数列

定義《等比数列》

 ある定数 $r$ について \[ a_{n+1} = ra_n\] を満たす数列 $\{ a_n\}$ を等比数列 (geometric sequence, progression) と呼び, $r$ をその公比 (common ratio) と呼ぶ.

定理《等比数列の一般項による特徴付け》

(1)
数列 $\{ a_n\}$ が初項 $a,$ 公比 $r$ の等比数列であるとき, \[ a_n = ar^{n-1}\] である.
(2)
数列 $\{ a_n\}$ に対して,
$\{ a_n\}$ が等比数列$\iff$ $a_n$ は指数関数 $r^n$ と定数の積
が成り立つ (ただし, ここでの指数関数の底は任意の実数).

証明

(1)
$n$ に関する数学的帰納法で示す.
(i)
$a_1 = a = ar^{1-1}$ から, $n = 1$ のとき成り立つ.
(ii)
$n = k$ ($k$: 正の整数) のとき \[ a_n = ar^{n-1} \quad \cdots [\ast ]\] が成り立つとすると, \[\begin{aligned} a_{k+1} &= ra_k = r\cdot ar^{k-1} \\ &= ar^{(k-1)+1} = ar^{(k+1)-1} \end{aligned}\] となるから, $n = k+1$ のとき $[\ast ]$ が成り立つ.
(i), (ii) から, すべての正の整数 $n$ に対して $[\ast ]$ が成り立つ.
(2)
$(\Longrightarrow )$ 初項 $a,$ 公比 $r$ の等比数列 $\{ a_n\}$ の一般項 $a_n$ は, \[ a_n = ar^{n-1} = \begin{cases} ar^{-1}\cdot r^n & (r \neq 0), \\ 0 = a\cdot 0^n & (r = 0) \end{cases}\] であるから, 指数関数と定数の積となる.
$(\Longleftarrow )$ 数列 $\{ a_n\}$ の一般項 $a_n$ が指数関数と定数の積ならば, 定数 $r,$ $c$ を用いて $a_n = cr^n$ と表せて \[ a_{n+1} = cr^{n+1} = r\cdot cr^n = ra_n\] となるから, $\{ a_n\}$ は公比 $r$ の等比数列となる.

問題《等差数列と等比数列の関係》

 $c > 0,$ $c \neq 1$ とする. 次のことを示せ.
(A)
$\{ a_n\}$ が等差数列であるならば, $\{ c^{a_n}\}$ は等比数列である.
(B)
$\{ b_n\}$ が初項, 公比が正の等比数列であるならば, $\{\log_cb_n\}$ は等差数列である.
基本定理$2022/08/16$$2022/08/17$

解答例

(A)
$\{ a_n\}$ を初項 $a,$ 公差 $d$ の等差数列とすると, $a_n = a+(n-1)d$ よって \[ c^{a_n} = c^{a+(n-1)d} = c^a(c^d)^{n-1}\] となるから, $\{ c^{a_n}\}$ は初項 $c^a,$ 公比 $c^d$ の等比数列になる.
(B)
$\{ b_n\}$ を初項 $b\,(> 0),$ 公比 $r\,(> 0)$ の等比数列とすると, $b_n = br^{n-1}$ よって \[\log_cb_n = \log_c{br^{n-1}} = \log_cb+(n-1)\log_cr\] となるから, $\{\log_cb_n\}$ は初項 $\log_cb,$ 公差 $\log_cr$ の等差数列になる.

参考

 (A), (B) により, 数列 $\{ a_n\},$ $\{ b_n\}$ $(b_n > 0)$ について, $b_n = c^{a_n}$ つまり $a_n = \log_cb_n$ $(c > 0,\ c \neq 1)$ であるとき,
$\{ a_n\}$ が等差数列 $\iff$ $\{ b_n\}$ が等比数列
が成り立つ.

等比数列の和

定理《等比数列の和》

 公比 $r$ の等比数列 $\{ a_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和は, \[\sum_{k = 1}^na_k = \begin{cases} \dfrac{a_1(r^n-1)}{r-1} = \dfrac{a_1(1-r^n)}{1-r} & (r \neq 1), \\ a_1n & (r = 1) \end{cases}\] である.

証明

 $r = 1$ のときは明らか. $r \neq 1$ のとき, \[\begin{aligned} (r-1)\sum_{k = 1}^na_k &= (r-1)\sum_{k = 1}^na_1r^{k-1} \\ &= r\sum_{k = 1}^na_1r^{k-1}-\sum_{k = 1}^na_1r^{k-1} \\ &= \sum_{k = 1}^na_1r^k-\sum_{k = 1}^na_1r^{k-1} \\ &= a_1r^n-a_1 = a_1(r^n-1) \end{aligned}\] の両辺を $r-1$ で割ると, 求める等式が得られる.

問題《$n$ 回以下のじゃんけんで順位がつく確率》

 $3$ 人がじゃんけんをする. ちょうど $n$ 回目で $1$ 位から $3$ 位までの順位が決まる確率は $\dfrac{4(n-1)}{3^n}$ である (こちらを参照). $n$ 回以下で $1$ 位から $3$ 位までの順位が決まる確率 $S_n$ を求めよ.
標準素朴$2018/08/06$$2018/08/06$

解答例

$\qquad S_n = 0+\dfrac{4}{9}+\dfrac{8}{27}+\cdots +\dfrac{4(n-1)}{3^n}$
の辺々に $\dfrac{1}{3}$ をかけると,
$\quad\,\dfrac{1}{3}S_n = \qquad\ \!0+\dfrac{4}{27}+\cdots +\dfrac{4(n-2)}{3^n}+\dfrac{4(n-1)}{3^{n+1}}$
となる. 辺々を引くと
$\begin{aligned} \quad\frac{2}{3}S_n &= \qquad\!\!\frac{4}{9}+\frac{4}{27}+\cdots +\frac{4}{3^n}-\frac{4(n-1)}{3^{n+1}} \\ &= \frac{4}{9}\cdot\frac{1-\left(\dfrac{1}{3}\right) ^{n-1}}{1-\dfrac{1}{3}}-\frac{4(n-1)}{3^{n+1}} \\ &= \frac{2}{3}\left\{ 1-\frac{1}{3^{n-1}}-\frac{2(n-1)}{3^n}\right\} \\ &= \frac{2}{3}\cdot\frac{3^n-2n-1}{3^n} \end{aligned}$
となるので, \[ S_n = \frac{3^n-2n-1}{3^n}\] である.

問題《定期預金に関する複利計算》

 年利率 $r$ で $n$ 年間預金をする. お金を初年度の初めに $1$ 度だけ預ける場合, 毎年度末に $a$ 円ずつ預ける場合と同じ預金額に達するには, 何円預ければよいか.
標準素朴$2021/09/24$$2021/09/25$

解答例

 毎年度末に $a$ 円ずつ預ける場合, 初年度の初めに $b$ 円預ける場合の預金額が等しいとすると \[ b(1+r)^n = a(1+r)^{n-1}+\cdots +a\] となるから, 初めに預けるべき金額は \[\begin{aligned} b &= a(1+r)^{-1}+\cdots +a(1+r)^{-n} \\ &= \frac{a(1+r)^{-1}\{ 1-(1+r)^{-n}\}}{1-(1+r)^{-1}} \\ &= \frac{a\{ 1-(1+r)^{-n}\}}{(1+r)-1} \\ &= \frac{a}{r}\left\{ 1-\frac{1}{(1+r)^n}\right\} \quad (\text{円}) \end{aligned}\] である.

別解

 $1 \leqq k \leqq n$ なる各整数 $k$ に対して, $k$ 年間預けておくと預金額は $(1+r)^k$ 倍になるから, $k$ 年目の年末の $a$ 円は初年度の初めの価値に直すと $a(1+r)^{-k}$ 円になる. よって, 初めに預けるべき金額は \[\begin{aligned} &a(1+r)^{-1}+\cdots +a(1+r)^{-n} \\ &= \frac{a(1+r)^{-1}\{ 1-(1+r)^{-n}\}}{1-(1+r)^{-1}} \\ &= \frac{a\{ 1-(1+r)^{-n}\}}{(1+r)-1} \\ &= \frac{a}{r}\left\{ 1-\frac{1}{(1+r)^n}\right\} \quad (\text{円}) \end{aligned}\] である.

問題《等比数列の和と逆数和と積の関係》

 等比数列の第 $n$ 項までの和を $S,$ 逆数の和を $T,$ 積を $P$ とおく (各項は $0$ でないとする). \[ P^2 = \left(\frac{S}{T}\right) ^n \quad \cdots [\ast ]\] が成り立つことを示せ.
標準定理$2023/04/26$$2023/04/27$

解答例

 初項を $a,$ 公比を $r$ とおく. 逆数のなす数列は初項 $a^{-1},$ 公比 $r^{-1}$ の等比数列である.
(i)
$r \neq 1$ のとき. 等比数列の和の公式により \[\begin{aligned} S &= \frac{a(r^n-1)}{r-1}, \\ T &= \frac{a^{-1}\{ 1-(r^{-1})^n\}}{1-r^{-1}} = \frac{r^n-1}{ar^{n-1}(r-1)}, \\ P &= a^nr^{0+1+\cdots +(n-1)} = a^nr^{\frac{(n-1)n}{2}} \end{aligned}\] であるから, \[\begin{aligned} \left(\frac{S}{T}\right) ^n &= \left\{\frac{a(r^n-1)}{r-1}\cdot\frac{ar^{n-1}(r-1)}{r^n-1}\right\} ^n \\ &= a^{2n}r^{(n-1)n} = P^2 \quad \cdots [\ast ] \end{aligned}\] が成り立つ.
(ii)
$r = 1$ のとき. \[ S = na, \quad T = na^{-1}, \quad P = a^n\] であるから, \[\left(\frac{S}{T}\right) ^n = \left(\frac{na}{na^{-1}}\right) ^n = a^{2n} = P^2 \quad \cdots [\ast ]\] が成り立つ.
(i), (ii) から, すべての等比数列に対して $[\ast ]$ が成り立つ.

約数の和

定理《約数の和の公式》

 $2$ 以上の整数 $a$ が $a = p_1{}^{m_1}\cdots p_r{}^{m_r}$ ($p_k$: 相異なる素数, $m_k$: 正の整数) と素因数分解されるとき, $a$ の正の約数の総和 $\sigma (a)$ は \[\sigma (a) = (1+\cdots +p_1{}^{m_1})\cdots (1+\cdots +p_r{}^{m_r})\] である.

証明

 $a$ の正の約数は $p_1{}^{k_1}\cdots p_r{}^{k_r}$ $(0 \leqq k_j \leqq m_j)$ の形に表され, \[ (1+\cdots +p_1{}^{m_1})\cdots (1+\cdots +p_r{}^{m_r})\] を展開したときの項としてもれも重複もなく現れるから, 上記の等式が成り立つ.

問題《メルセンヌ素数と偶数の完全数》

 正の整数 $a$ について, $a$ の正の約数の総和を $\sigma (a)$ で表す. $\sigma (a) = 2a$ が成り立つとき, $a$ を「完全数」と呼ぶ.
(1)
互いに素な正の整数 $a,$ $b$ に対して, $\sigma (ab) = \sigma (a)\sigma (b)$ を示せ.
(2)
正の整数 $n$ について, $2^n-1$ が素数であるとする. このとき, $a = 2^{n-1}(2^n-1)$ は偶数の「完全数」であることを示せ.
(3)
偶数の「完全数」$a$ を $a = 2^{n-1}a'$ ($n$: $2$ 以上の整数, $a'$: 奇数) の形に表す. このとき, $\sigma (a') = a'+\dfrac{a'}{2^n-1},$ $a' = 2^n-1$ であり, $a'$ は素数であることを示せ.
(4)
偶数の「完全数」を小さい方から順に $4$ つ求めよ. また, $2^{n-1}(2^n-1)$ が偶数の「完全数」にはならないような素数 $n$ を $1$ つ求めよ. $2^n-1$ が素数であるとき $n$ が素数であること (こちらを参照) は証明なしに使ってよい.
(参考: $2020$ 富山県立大, $2000$ 佐賀大)
標準定理$2017/05/04$$2024/10/28$

解答例

(1)
$a,$ $b$ の素因数分解をそれぞれ \[ a = p_1{}^{e_1}\cdots p_r{}^{e_r}, \quad b = q_1{}^{f_1}\cdots q_s{}^{f_s}\] ($p_k,$ $q_l$: 相異なる素数, $e_k,$ $f_l$: 正の整数) とすると, $ab$ の素因数分解は \[ ab = p_1{}^{e_1}\cdots p_r{}^{e_r}q_1{}^{f_1}\cdots q_s{}^{f_s}\] となるから, 約数の和の公式により \[\begin{aligned} \sigma (ab) &= (1+\cdots +p_1{}^{e_1})\cdots (1+\cdots +p_r{}^{e_r}) \\ &\qquad \times (1+\cdots +q_1{}^{f_1})\cdots (1+\cdots +q_s{}^{f_s}) \\ &= \sigma (a)\sigma (b) \end{aligned}\] となる.
(2)
$2^n-1$ が素数であるとき, (1) の結果により \[\begin{aligned} \sigma (a) &= \sigma (2^{n-1})\sigma (2^n-1) \\ &= (1+\cdots +2^{n-1})\{ 1+(2^n-1)\} \\ &= (2^n-1)2^n = 2a \end{aligned}\] が成り立つから, $a$ は「完全数」である.
(3)
$\sigma (a) = 2a = 2^na'$ と \[\begin{aligned} \sigma (a) &= \sigma (2^{n-1})\sigma (a') = (1+\cdots +2^{n-1})\sigma (a') \\ &= (2^n-1)\sigma (a') \end{aligned}\] から, \[\sigma (a') = \frac{2^na'}{2^n-1} = a'+\frac{a'}{2^n-1}\] が成り立つ. $a'$ と $\sigma (a')$ は正の整数であるから, $\dfrac{a'}{2^n-1}$ は正の整数である. $n > 1$ から $2^n-1 > 1$ であるので, $\dfrac{a'}{2^n-1}$ は $a'$ より小さい $a'$ の約数である. $a'$ の正の約数は $a'$ と $\dfrac{a'}{2^n-1}$ の $2$ つのみであるから, $\dfrac{a'}{2^n-1} = 1$ つまり $a' = 2^n-1$ であり, $a'$ は素数である.
(4)
(2), (3) の結果により, $2^n-1$ が素数になるような素数 $n$ と偶数の「完全数」$2^{n-1}(2^n-1)$ はもれも重複もなく対応する. $2^n-1$ の $n$ に小さい方から数えて $4$ 番目までの素数を代入した \[\begin{aligned} 2^2-1 = 3, \quad &2^3-1 = 7, \\ 2^5-1 = 31, \quad & 2^7-1 = 127 \end{aligned}\] は素数であるから, $4$ 番目までの偶数の「完全数」は \[\begin{aligned} 2^1(2^2-1) = 6, \quad &2^2(2^3-1) = 28, \\ 2^4(2^5-1) = 496, \quad &2^6(2^7-1) = 8128 \end{aligned}\] である. また, \[ 2^n-1 = 2^{11}-1 = 2047 = 23\cdot 89\] は素数でないから, $2^{n-1}(2^n-1)$ が偶数の「完全数」にはならないような素数 $n$ として $n = 11$ が挙げられる.

参考

  • $2^n-1$ ($n$: 正の整数) の形の素数を「メルセンヌ素数」(Mersenne prime) と呼ぶ.
  • 正の整数 $a$ の正の約数の総和が $2a$ になるとき, つまり $a$ のそれ自身を除く正の約数の総和が $a$ になるとき, $a$ を「完全数」(perfect number) と呼ぶ.
  • 上で述べたように,「メルセンヌ素数」は偶数の「完全数」ともれも重複もなく対応する (ちなみに, (2) はユークリッド, (3) はオイラーによって示された). 例えば,「メルセンヌ素数」 $2^2-1 = 3,$ $2^3-1 = 7,$ $2^5-1 = 31,$ $2^7-1 = 127$ には, 偶数の「完全数」$6,$ $28,$ $496,$ $8128$ が対応している. $2024$ 年 $10$ 月に発見された史上最大の素数 $2^{136279841}-1$ は $52$ 個目に発見された「メルセンヌ素数」である. まだ奇数の「完全数」は見つかっていないから, この「メルセンヌ素数」の発見は $52$ 個目の「完全数」の発見を意味する ($2024$ 年 $10$ 月現在).

問題《友愛数に関するオイラーの法則》

 正の整数 $a$ について, $a$ の正の約数の総和を $\sigma (a)$ で表す. さらに, 相異なる正の整数 $a,$ $b$ $(a < b)$ の組で $\sigma (a) = \sigma (b) = a+b$ を満たすものを「友愛数」と呼ぶ.
(1)
正の整数 $m,$ $n$ $(m < n)$ について \[\begin{aligned} p &= 2^m(2^{n-m}+1)-1, \\ q &= 2^n(2^{n-m}+1)-1, \\ r &= 2^{m+n}(2^{n-m}+1)^2-1 \end{aligned}\] が素数であるとする. このとき, $(2^npq,2^nr)$ は「友愛数」であることを示せ. ただし, 互いに素な正の整数 $a,$ $b$ に対して $\sigma (ab) = \sigma (a)\sigma (b)$ が成り立つこと (こちらを参照) は証明なしに使ってよい.
(2)
「友愛数」を $1$ 組求めよ.
実戦定理$2022/03/21$$2022/03/23$

解答例

(1)
$2,$ $p,$ $q,$ $r$ は相異なる素数であるから, \[\begin{aligned} \sigma (2^npq) &= \sigma (2^n)\sigma (pq) \\ &= \sigma (2^n)\sigma (p)\sigma (q) \\ &= (1+\cdots +2^n)(1+p)(1+q) \\ &= (2^{n+1}-1)\cdot 2^m(2^{n-m}+1)\cdot 2^n(2^{n-m}+1) \\ &= 2^{m+n}(2^{n+1}-1)(2^{n-m}+1)^2, \\ \sigma (2^nr) &= \sigma (2^n)\sigma (r) \\ &= (1+\cdots +2^n)(1+r) \\ &= (2^{n+1}-1)\cdot 2^{m+n}(2^{n-m}+1)^2 \\ &= 2^{m+n}(2^{n+1}-1)(2^{n-m}+1)^2 \end{aligned}\] が成り立つ. また, \[\begin{aligned} pq &= \{ 2^m(2^{n-m}+1)-1\}\{ 2^n(2^{n-m}+1)-1\} \\ &= 2^{m+n}(2^{n-m}+1)^2 \\ &\qquad -2^m(2^{n-m}+1)-2^n(2^{n-m}+1)+1 \\ &= 2^{m+n}(2^{n-m}+1)^2-(2^m+2^n)(2^{n-m}+1)+1 \\ &= 2^{m+n}(2^{n-m}+1)^2-2^m(2^{n-m}+1)^2+1 \end{aligned}\] であるから, \[\begin{aligned} 2^npq+2^nr &= 2^n(pq+r) \\ &= 2^n\{ 2\cdot 2^{m+n}(2^{n-m}+1)^2-2^m(2^{n-m}+1)^2\} \\ &= 2^n\cdot 2^m(2^{n+1}-1)(2^{n-m}+1)^2 \\ &= 2^{m+n}(2^{n+1}-1)(2^{n-m}+1)^2 \end{aligned}\] が成り立つ. よって, \[\sigma (2^npq) = \sigma (2^nr) = 2^npq+2^nr\] が成り立つから, $(2^npq,2^nr)$ は「友愛数」である.
(2)
(1) において $m = 1,$ $n = 2$ とすると \[\begin{aligned} p &= 2^1(2^1+1)-1 = 5, \\ q &= 2^2(2^1+1)-1 = 11, \\ r &= 2^3(2^1+1)^2-1 = 71 \end{aligned}\] は素数になるから, \[ (2^2\cdot 5\cdot 11,2^2\cdot 71) = (220,284)\] は「友愛数」である.

参考

  • 正の整数 $a,$ $b$ について, 自身を除く正の約数の総和が互いに他方に等しいとき, すなわち「約数関数」$\sigma (x)$ に関して \[\sigma (a)-a = b, \quad \sigma (b)-b = a\] つまり \[\sigma (a) = \sigma (b) = a+b\] が成り立つとき, 整数の組 $(a,b)$ を「友愛数」または「親和数」(amicable number) と呼ぶ. $(220,284)$ は最小の「友愛数」である ($220$ の自身を除く正の約数の総和は $1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110 = 284$ であり, $284$ の自身を除く正の約数の総和は $1+2+4+71+142 = 220$ である). ここで,「友愛数」の大小は $2$ 数の和の大小によって考える. 小さい順に「友愛数」を書き出すと, \[\begin{aligned} &(220,284),\ (1184,1210),\ (2620,2924),\ (5020,5564), \\ &(6232,6368),\ (10744,10856),\ (12285,14595), \\ &(17296,18416),\ (63020,76084),\ (66928,66992),\ \cdots \end{aligned}\] のようになる.
  • 「友愛数」に関する (1) の定理は「オイラーの法則」(Euler's rule) として知られている. $9$ 世紀半ばに発見された「サービト・イブン・クッラの法則」(Thabit ibn Qurra's rule) は, この $n = m-1$ の場合である.
  • 「オイラーの法則」に当てはまらない「友愛数」も存在する. 例えば, $2$ 番目に小さい「友愛数」 $(1184,1210)$ は「オイラーの法則」に当てはまらない. また, $(12285,14595)$ のように, $2$ つの奇数からなる「友愛数」も存在する.
  • 「友愛数」は無限に存在するか, 偶数と奇数からなる「友愛数」は存在するかという問題は, いずれも未解決である ($2022$ 年 $2$ 月現在).
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