有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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複素数の極形式

複素数の極形式

問題≪複素数の絶対値とブラーマグプタの恒等式≫

(1)
複素数 $z_1,$ $z_2$ に対して $|z_1z_2| = |z_1||z_2|$ が成り立つことを示せ.
(2)
(1) を利用して, 実数 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ に対して $(ac-bd)^2+(ad+bc)^2 = (a^2+b^2)(c^2+d^2)$ が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
$z_1 = r_1(\cos\theta _1+i\sin\theta _1),$ $z_2 = r_2(\cos\theta _2+i\sin\theta _2)$ $(r_1,r_2 > 0)$ とおくと, 三角関数の加法定理により \begin{align*} z_1z_2 &= r_1(\cos\theta _1+i\sin\theta _1)\cdot r_2(\cos\theta _2+i\sin\theta _2) \\ &= r_1r_2\{ (\cos\theta _1\cos\theta _2-\sin\theta _1\sin\theta _2) \\ &\qquad\qquad +i(\sin\theta _1\cos\theta _2+\cos\theta _1\sin\theta _2)\} \\ &= r_1r_2\{\cos (\theta _1+\theta _2)+i\sin (\theta _1+\theta _2)\} \end{align*} となるから, $|z_1z_2| = r_1r_2 = |z_1||z_2|$ である.
(2)
$z_1 = a+bi,$ $z_2 = c+di$ とすると, $|z_1|^2 = a^2+b^2,$ $|z_2|^2 = c^2+d^2$ となり, $z_1z_2 = (ac-bd)+(ad+bc)i$ から $|z_1z_2|^2 = (ac-bd)^2+(ad+bc)^2$ となるので, $|z_1z_2| = |z_1||z_2|$ つまり $|z_1z_2|^2 = |z_1|^2|z_2|^2$ に代入すると, \[ (ac-bd)^2+(ad+bc)^2 = (a^2+b^2)(c^2+d^2)\] が得られる.

背景

 $(a^2+b^2)(c^2+d^2) = (ac-bd)^2+(ad+bc)^2$ は「ブラーマグプタの恒等式」として知られている.

ド・モアブルの定理

定理≪ド・モアブルの定理≫

 すべての整数 $n$ と角 $\theta$ に対して, \[ (\cos\theta +i\sin\theta )^n = \cos n\theta +i\sin n\theta \quad \cdots [\ast ]\] が成り立つ.

証明

 まず, $n \geqq 0$ の場合を考える.
(i)
$n = 0$ のとき. $(\cos\theta +i\sin\theta )^0 = 1 = \cos 0+i\sin 0$ から, $[\ast ]$ が成り立つ.
(ii)
$n = k$ ($k$: 非負整数)のとき $[\ast ]$ が成り立つとすると, 三角関数の加法定理により \begin{align*} &(\cos\theta +i\sin\theta )^{k+1} \\ &= (\cos\theta +i\sin\theta )^k(\cos\theta +i\sin\theta ) \\ &= (\cos k\theta +i\sin k\theta )(\cos\theta +i\sin\theta ) \\ &= \cos k\theta\cos\theta -\sin k\theta\sin\theta \\ &\qquad +i(\sin k\theta\cos\theta +\cos k\theta\sin\theta ) \\ &= \cos (k\theta +\theta )+i\sin (k\theta +\theta ) \\ &= \cos (k+1)\theta +i\sin (k+1)\theta \end{align*} となるから, $n = k+1$ のとき $[\ast ]$ が成り立つ.
(i), (ii) から, すべての非負整数 $n$ に対して $[\ast ]$ が成り立つ.
 さらに, $n < 0$ のとき, $-n > 0$ であるから, 上記の結果により \begin{align*} (\cos\theta +i\sin\theta )^n &= \{ (\cos\theta +i\sin\theta )^{-n}\} ^{-1} \\ &= \{\cos (-n\theta )+i\sin (-n\theta )\} ^{-1} \\ &= \cos n\theta +i\sin n\theta \end{align*} が成り立つ.

定理≪複素数の累乗根≫

 $r$ を正の数, $\theta$ を実数, $n$ を正の整数とする. 複素数 $\alpha = r(\cos\theta +i\sin\theta )$ の $n$ 乗根, つまり $z^n = \alpha$ の解は \begin{align*} z = \sqrt[n]{r}\left(\cos\frac{\theta +2k\pi}{n}+i\sin\frac{\theta +2k\pi}{n}\right)\quad \\ (k \in \{ 0,\cdots,n-1\}) \end{align*} と表される.

証明

 ド・モアブルの定理により, 上記の複素数は $z^n = \alpha$ つまり $z^n-\alpha = 0$ を満たす. 因数定理により, $z^n-\alpha = 0$ の解は $n$ 個以下しかないから, これが解のすべてである.

問題≪複素数の乗法で閉じた有限集合≫

 $n$ 個の $0$ でない複素数からなる集合 $G$ が, 条件
(G0)
$z,$ $w \in G$ $\Longrightarrow$ $zw \in G$
を満たすとする.
(1)
$G$ の例を挙げよ.
(2)
$G$ は (1) の例以外にないことを示せ.
(参考: 2001 京都府立医大)

解答例

(1)
$z^n = 1$ の解 \[\omega = \cos\frac{2\pi}{n}+i\sin\frac{2\pi}{n}\] を用いて \[ G = \{ 1,\omega,\cdots,\omega ^{n-1}\}\] と定めると, $G$ は (G0) を満たす.
(2)
$n$ 個の $0$ でない複素数からなる集合 $G = \{ z_1,\cdots,z_n\}$ が (G0) を満たすとする. $G$ の要素 $w$ をとる. このとき, 整数 $k,$ $l\ (1 \leqq k < l \leqq n)$ に対して $z_kw \neq z_lw$ であり, (G0) から $z_kw,$ $z_lw \in G$ であるので, \[ G = \{ z_1w,\cdots,z_nw\}\] となる. $G$ の要素をすべて掛け合わせると \[ z_1\cdots z_n = (z_1w)\cdots (z_nw) = (z_1\cdots z_n)w^n\] となるから, $w^n = 1$ となる. ゆえに, $G$ は $1$ の $n$ 乗根からなるので, (1) の集合に一致する.

別解

(2)
$n$ 個の $0$ でない複素数からなる集合 $G$ が (G0) を満たすとする.
このとき, $G$ の各要素 $z$ に対して, $z^m = 1$ を満たす正の整数 $m$ が存在する. 実際, (G0) から $z^k$ ($k$: 正の整数)の形の複素数はすべて $G$ に含まれるが, $G$ は有限個の複素数からなるので, ある正の整数の組 $(k,l)$ ($k < l$)に対して $z^k = z^l$ となり, 正の整数 $m = l-k$ は $z^m = 1$ を満たす.
さらに, $|z|^m = |z^m| = 1$ から $|z| = 1$ であり, また $1 \in G$ であることもわかる.
$n = 1$ のとき, $G = \{ 1\}$ である.
そこで, 以下では $n > 1$ の場合を考える. $1$ と異なる $G$ の要素のうち, 偏角が $0$ 以上 $2\pi$ 未満の範囲で最小である複素数を $z$ とおき, $m$ を $z^k = 1$ なる正の整数 $k$ の最小値とする. $G$ の要素 $w$ を任意にとり, $l$ を $w^l = 1$ なる正の整数とする. また, $w$ の偏角を $0$ 以上 $2\pi$ 未満の範囲で考える.
(i)
$\mathrm{arg}\,z^{m-1} \leqq \mathrm{arg}\,w < 2\pi$ のとき, \[ 0 < \mathrm{arg}\,w^{-1} = \mathrm{arg}\,w^{l-1} \leqq \mathrm{arg}\,z^{1-m} = \mathrm{arg}\,z\] となるから, $\mathrm{arg}\,z$ の最小性により $w^{-1} = z$ つまり $w = z^{-1} = z^{m-1}$ となる.
(ii)
(i) 以外のとき, $0 \leqq k \leqq m-1$ なるある正の整数 $k$ に対して $\mathrm{arg}\,z^k \leqq \mathrm{arg}\,w < \mathrm{arg}\,z^{k+1}$ となり, \[ 0 \leqq \mathrm{arg}\,wz^{-k} = \mathrm{arg}\,wz^{m-k} < \mathrm{arg}\,z\] となるから, $\mathrm{arg}\,z$ の最小性により $wz^{-k} = 1$ つまり $w = z^k$ となる.
よって, $G = \{ 1,z,\cdots,z^{m-1}\}$ から, $m = n$ である.
ゆえに, $z$ は (1) の $\omega$ に一致して, $G = \{ 1,\omega,\cdots,\omega ^{n-1}\}$ となる.

背景

 次の条件を満たす演算 $*$ の定義された集合 $G\,(\neq \varnothing )$ を「群」(group)と呼ぶ.
(G0)
$G$ のすべての要素 $a,$ $b$ に対して, $a*b \in G$ である.
(G1)
$(a*b)*c = a*(b*c)\ (a,b,c \in G)$ が成り立つ.
(G2)
$a*e = e*a = a\ (a \in G)$ なる $G$ の要素 $e$ が存在する.
(G3)
$G$ の各要素 $a$ に対して, $a*a^{-1} = a^{ -1}*a = e$ なる $G$ の要素 $a^{-1}$ が存在する.
 例えば, $1$ の $3$ 乗根全体 $G = \{ 1,\omega,\omega ^2\}$ は, 通常の乗法に関して群をなすことが確認できる($e = 1,$ $1^{-1} = 1,$ $\omega ^{-1} = \omega ^2,$ $(\omega ^2)^{-1} = \omega$). 本問では, 条件 (G0) に着目して, 複素数の範囲で通常の乗法に関して「群」をなす有限集合を決定した.

問題≪$1$ の $5$ 乗根に関する相反方程式≫

 複素数 $\alpha\ (\neq 1)$ を $1$ の $5$ 乗根とする.
(1)
$\alpha ^2+\alpha +1+\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\alpha ^2} = 0$ であることを示せ.
(2)
(1) を利用して, $t = \alpha +\bar\alpha$ は $t^2+t-1 = 0$ を満たすことを示せ.
(3)
(2) を利用して, $\cos\dfrac{2\pi}{5},$ $\sin\dfrac{2\pi}{5}$ の値を求めよ.
(4)
$z^5 = 1$ の複素数解をすべて求めよ.
(参考: 金沢大)

解答例

(1)
$\alpha ^5 = 1$ つまり $\alpha ^5-1 = 0$ から, \[ (\alpha -1)(\alpha ^4+\alpha ^3+\alpha ^2+\alpha +1) = 0\] が成り立つ. $\alpha \neq 1$ であるから, \[\alpha ^4+\alpha ^3+\alpha ^2+\alpha +1 = 0\] である. $\alpha \neq 0$ であるから, 両辺を $\alpha ^2$ で割ると, \begin{align*} \alpha ^2+\alpha +1+\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\alpha ^2} = 0 \quad \cdots [1] \end{align*} が得られる.
(2)
$\alpha ^5 = 1$ から $|\alpha |^5 = 1$ であるので, $|\alpha | = 1$ である. よって, $\alpha\bar\alpha = |\alpha |^2 = 1$ から, $\bar\alpha = \dfrac{1}{\alpha}$ である. $t = \alpha +\bar\alpha$ とおく. このとき, $t = \alpha +\dfrac{1}{\alpha}$ であるので, $[1]$ から \[\left(\alpha +\frac{1}{\alpha}\right) ^2+\left(\alpha +\frac{1}{\alpha}\right) -1 = 0\] つまり \[ t^2+t-1 = 0 \quad \cdots [2]\] が成り立つ.
(3)
$\alpha = \cos\dfrac{2\pi}{5}+i\sin\dfrac{2\pi}{5}$ とおく. このとき, $\bar\alpha = \cos\dfrac{2\pi}{5}-i\sin\dfrac{2\pi}{5}$ から, \[ t = \alpha +\bar\alpha = 2\cos\frac{2\pi}{5}\] となる. この値は $[2]$ を満たす正の数だから, \[ t = \frac{-1+\sqrt 5}{2}\] である. よって, \[\cos\frac{2\pi}{5} = \frac{-1+\sqrt 5}{4}\] であり, $\sin\dfrac{2\pi}{5} > 0$ に注意すると \begin{align*} \sin\frac{2\pi}{5} &= \sqrt{1-\cos ^2\frac{2\pi}{5}} = \sqrt{1-\left(\frac{-1+\sqrt 5}{4}\right) ^2} \\ &= \frac{\sqrt{4^2-(-1+\sqrt 5)^2}}{4} = \frac{\sqrt{10+2\sqrt 5}}{4} \end{align*} である.
(4)
倍角の公式により \begin{align*} \cos\frac{4\pi}{5} &= 2\cos ^2\frac{2\pi}{5}-1 = \frac{-1-\sqrt 5}{4}, \\ \sin\frac{4\pi}{5} &= 2\sin\frac{2\pi}{5}\cos\frac{2\pi}{5} = \frac{\sqrt{10-2\sqrt 5}}{4} \end{align*} であるから, $z^5 = 1$ の複素数解 \begin{align*} z = 1,\ &\cos\left(\pm\frac{2\pi}{5}\right) +i\sin\left(\pm\frac{2\pi}{5}\right), \\ &\cos\left(\pm\frac{4\pi}{5}\right) +i\sin\left(\pm\frac{4\pi}{5}\right) \quad \text{(複号同順)} \end{align*} は \begin{align*} z = 1,\ &\frac{(-1+\sqrt 5)\pm\sqrt{10+2\sqrt 5}i}{4}, \\ &\frac{(-1-\sqrt 5)\pm\sqrt{10-2\sqrt 5}i}{4} \end{align*} と表される.

背景

  • 係数が $a_{n-k} = a_k\ (0 \leqq k \leqq n)$ を満たし, $0$ を解にもたない $n$ 次方程式 $a_nx^n+\cdots +a_1x+a_0 = 0$ をそうはん方程式」(reciprocal equation)と呼ぶ.
  • $n = 2m+1$ ($m$: 非負整数)のとき, \begin{align*} &a_n(-1)^n\!+\!\cdots\!+\!a_{m+1}(-1)^{m+1}\!+\!a_m(-1)^m\!+\!\cdots\!+\!a_0 \\ &= a_0(-1)^{2m+1}\!+\!\cdots\!+\!a_m(-1)^{m+1}\!+\!a_m(-1)^m\!+\!\cdots\!+\!a_0 \\ &= a_0(-1+1)+\cdots +a_m(-1)^m(-1+1) \\ &= 0 \end{align*} であることからもわかるように, この形の方程式は解 $x = -1$ をもち, $b_0,$ $\cdots,$ $b_m$ を \[ b_0 = a_0, \quad b_k = a_k-b_{k-1}\ (1 \leqq k \leqq m)\] で定めると \[ (x+1)(b_0x^{2m}+\cdots +b_mx^m+\cdots +b_0) = 0\] と変形できるから, $2m$ 次の「相反方程式」を解く問題に帰着される.
  • $n = 2m$ ($m$: 非負整数)のとき, $t = x+x^{-1}$ の $m$ 次方程式を解く問題に帰着される. これは, \[ x^{k+1}\!+\!x^{-(k+1)} \!=\! (x^k\!+\!x^{-k})(x\!+\!x^{-1})\!-\!\{ x^{k-1}\!+\!x^{-(k-1)}\}\] を使うと, $x^k+x^{-k}$ は $t$ の $k$ 次式として表されることが数学的帰納法によりわかる.

問題≪正多角形の辺と対角線の長さの積≫

 単位円周に内接する正 $n$ 角形の $1$ つの頂点から引けるすべての辺と対角線の長さの積は $n$ であることを示せ.

解答例

 複素数平面において, 単位円に内接し, 点 $\mathrm P_0(1)$ を通る正 $n$ 角形 $\mathrm P_0\mathrm P_1\cdots \mathrm P_{n-1}$ の頂点 $\mathrm P_k$ は $z^n = 1$ の解 \[ z_k = \cos\frac{2k\pi}{n}+i\sin\frac{2k\pi}{n} \quad (k \in \{ 0,\ 1,\ \cdots,\ n-1\})\] に対応する. $z = z_k$ $(k \neq 0)$は $z^{n-1}+\cdots +z+1 = 0$ を満たすので, 因数定理により \[ (z-z_1)\cdots (z-z_{n-1}) = z^{n-1}+\cdots +z+1\] が成り立つ. $z = 1$ を代入すると \[ (1-z_1)\cdots (1-z_{n-1}) = n\] となるから, \begin{align*} \mathrm P_0\mathrm P_1\cdot\cdots\cdot\mathrm P_0\mathrm P_{n-1} &= |1-z_1|\cdots |1-z_{n-1}| \\ &= |(1-z_1)\cdots (1-z_{n-1})| \\ &= |n| = n \end{align*} が成り立つ.