有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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関数

関数

定義≪関数≫

  • 数の集合 $A$ の要素 $x$ に応じて数の集合 $B$ の $1$ つの要素 $f(x)$ を対応させる規則を, $A$ から $B$ への関数(function)と呼び, \[ f:A\to B;x\mapsto f(x)\] や $f:A\to B$, または単に $f(x)$ や $f$ で表す. また, $A$ を $f$ の定義域(domain)と呼び, $B$ を $f$ の行き先(target)と呼ぶ.
  • 定義域と行き先が等しい関数 $f:A\to B,$ $g:A\to B$ が $A$ のすべての要素 $x$ に対して $f(x) = g(x)$ を満たすとき, $f$ と $g$ は等しいといい, $f = g$ と表す.
  • 関数 $f:A\to B$ について, $A$ の各要素 $x$ に対して $f(x)$ を $f$ による $x$ の(value)と呼ぶ. $f$ による値全体からなる $B$ の部分集合を $f$ の値域(range)と呼ぶ.
  • 数の集合 $A$ に対して, $\mathrm{id}_A(x) = x$ で定まる関数 $\mathrm{id}_A:A\to A$ を $A$ 上の恒等関数(identity function)と呼ぶ.

合成関数・逆関数

定義≪合成関数≫

 関数 $f(x)$ の値域が関数 $g(x)$ の定義域に含まれるとき, $x$ に $g(f(x))$ を対応させることで定まる関数を $f(x)$ と $g(x)$ の合成関数(composite function)と呼び, $(g\circ f)(x)$ で表す.

定義≪逆関数≫

 関数 $f(x)$ の値域に含まれる任意の値 $y$ に対して $y = f(x)$ なる $x$ がただ $1$ つ定まるとき, $y$ に $x$ を対応させることで定まる関数を $f(x)$ の逆関数(inverse function)と呼ぶ.

定義≪合成関数の性質≫

 $f:A\to B,$ $g:B\to C,$ $h:C\to D$ を関数とする.
(1)
$h\circ (g\circ f) = (h\circ g)\circ f$ が成り立つ.
(2)
$f\circ\mathrm{id}_A = \mathrm{id}_B\circ f = f$ が成り立つ.
(3)
$f$ の逆関数が存在するならば, それはただ $1$ つに定まる(それを $f^{-1}$ で表す).

証明

(1)
合成関数の定義により, $A$ のすべての要素 $x$ に対して \begin{align*} (h\circ (g\circ f))(x) &= h((g\circ f)(x)) = h(g(f(x)) \\ ((h\circ g)\circ f)(x) &= (h\circ g)(f(x)) = h(g(f(x)) \end{align*} が成り立つから, $h\circ (g\circ f) = (h\circ g)\circ f$ である.
(2)
合成関数の定義と $\mathrm{id}_A$ の定義により, $A$ のすべての要素 $x$ に対して \begin{align*} (f\circ\mathrm{id}_A)(x) = f(\mathrm{id}_A(x)) &= f(x), \\ (\mathrm{id}_B\circ f)(x) = \mathrm{id}_B(f(x)) &= f(x) \end{align*} が成り立つから, $f\circ\mathrm{id}_A = \mathrm{id}_B\circ f = f$ である.
(3)
$g$ と $g'$ が $f$ の逆写像であるとすると \[ g \!=\! g\circ\mathrm{id}_B \!=\! g\circ (f\circ g') \!=\! (g\circ f)\circ g' \!=\! \mathrm{id}_A\circ g' \!=\! g'\] となるから, $f$ の逆写像は高々 $1$ つしか存在しない.

問題≪$n$ 個の数の置換の性質≫

 $1$ 以上 $n$ 以下の整数全体 $A$ を定義域とする関数 $f(x)$ の値域が $A$ に一致するとする. $k$ 個の $f(x)$ を合成して得られる関数を $f^k(x)$ で表す. $f^k(1)\ (1 \leqq k \leqq n)$ が互いに異なるとして, 次の問いに答えよ.
(1)
関数として $f^n(x) = x$ が成り立つことを示せ.
(2)
$f(x)$ の逆関数を, $f^k(x)$ の形に表せ.

解答例

(1)
仮定から $\{ f^1(1),\cdots,f^n(1)\} = \{ 1,\cdots,n\}$ であるので, $f^k(1) = 1$ なる整数 $k$ が $1 \leqq k \leqq n$ の範囲に存在する.
仮に $1 \leqq k \leqq n-1$ であるとすると, \[ f^{k+1}(1) = (f\circ f^k)(1) = f(f^k(1)) = f(1),\] $2 \leqq k+1 \leqq n$ となり, $f^k(1)\ (1 \leqq k \leqq n)$ が互いに異なることに反する.
ゆえに, $f^n(1) = 1$ が成り立つ.
$\{ 1,\cdots,n\} = \{ f^1(1),\cdots,f^n(1)\}$ であるから, $1 \leqq x \leqq n$ の範囲にある各整数 $x$ に対して, $x = f^k(1)$ なる整数 $k$ が $1 \leqq k \leqq n$ の範囲に存在して, \[ f^n(x) = f^n(f^k(1)) = f^k(f^n(1)) = f^k(1) = x\] が成り立つ.
(2)
$y = f(x)$ とおくと, (1) の結果により \[ f^{n-1}(y) = f^{n-1}(f(x)) = f^n(x) = x\] となるから, $f(x)$ の逆関数は $f^{n-1}(x)$ である.

背景

  • 次の条件を満たす演算 $*$ の定義された集合 $G(\neq \varnothing )$ を「群」(group)と呼ぶ.
    (O)
    $G$ の要素 $a,$ $b$ の各組に対して, $a*b \in G$ である.
    (I)
    $(a*b)*c = a*(b*c)\ (a,b,c \in G)$ が成り立つ.
    (II)
    $a*e = e*a = a\ (a \in G)$ なる $G$ の要素 $e$ が存在する.
    (III)
    $G$ の各要素 $a$ に対し, $a*a^{-1} = a^{-1}*a = e$ なる $G$ の要素 $a^{-1}$ が存在する.
    (II) の $e$ を $G$ の「単位元」(identity element), (III) の $a^{-1}$ を $a$ の「逆元」(inverse element)と呼ぶ.
  • 集合 $A$ を定義域かつ値域とし, $x \neq x'$ $\Longrightarrow$ $f(x) \neq f(x')$ を満たす関数 $f(x)$ を $A$ 上の「置換」(permutation)と呼ぶ. 集合 $A$ 上の「置換」全体の集合 $G$ は, 合成を演算として「群」の条件を満たす. $A$ 上の置換全体がなす「群」を $A$ 上の「置換群」(permutation group)と呼ぶ. 特に, 集合 $\{ 1,\cdots,n\}$ 上の「置換群」を「$n$ 次対称群」(symmetric group of degree $n$)と呼ぶ.
  • 「群」$G$ の要素 $g$ について, $k$ 個の $g$ に演算を施した結果が $G$ の「単位元」になるような正の整数 $k$ の最小値を $g$ の「位数」(order)と呼ぶ.
  • $a_1,$ $\cdots,$ $a_r$ が $A$ の相異なる要素で, $a_{r+1} = a_1$ であるとき, $f(a_k) = a_{k+1}$ $(1 \leqq k \leqq r),$ $f(x) = x$ $(x \neq a_1,\ \cdots,\ a_r)$ を満たす $A$ 上の「置換」$f(x)$ を長さ $r$ の「巡回置換」(cyclic permutation)と呼ぶ. 長さ $r$ の「巡回置換」の「位数」は $r$ である.

問題≪$1$ 次分数関数の逆関数≫

 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ を $c \neq 0,$ $ad \neq bc$ なる実数とする.
(1)
関数 $f(x) = \dfrac{ax+b}{cx+d}$ の逆関数 $f^{-1}(x)$ を求めよ.
(2)
$f(x) = f^{-1}(x)$ となるための必要十分条件を求めよ.

解答例

(1)
$y = \dfrac{ax+b}{cx+d}$ とおく. 分母を払って変形すると \begin{align*} (cx+d)y &= ax+b, \\ (cy-a)x &= -dy+b \end{align*} となるから, \[ cy-a = \frac{c(ax+b)-a(cx+d)}{cx+d} = \frac{bc-ad}{cx+d} \neq 0\] に注意すると, \[ x = \frac{-dy+b}{cy-a} = \frac{dy-b}{-cy+a}\] となる. ゆえに, $f(x)$ の逆関数は \[ f^{-1}(x) = \frac{dx-b}{-cx+a}\] である.
(2)
$f(x) = f^{-1}(x)$ が成り立つとする. このとき, \[\frac{ax+b}{cx+d} = \frac{dx-b}{-cx+a}\] であるから, $x \neq -\dfrac{d}{c},$ $\dfrac{a}{c}$ なるすべての実数 $x$ に対して \[ (ax+b)(-cx+a) = (cx+d)(dx-b)\] つまり \[ -acx^2+(a^2-bc)x+ab = cdx^2+(d^2-bc)x-bd\] が成り立つ. 両辺の係数を比較すると \[ -ac = cd, \quad a^2-bc = d^2-bc, \quad ab = -bd\] つまり \[ c(a+d) = 0,\ (a+d)(a-d) = 0,\ b(a+d) = 0\] となるから, $c \neq 0$ に注意すると, 求める条件が $a+d = 0$ であるとわかる.

問題≪マチンの公式≫

(1)
$\tan\alpha = \dfrac{1}{5}$ のとき, $\tan 2\alpha,$ $\tan 4\alpha$ の値を求めよ.
(2)
関数 $\tan x\ \left( -\dfrac{\pi}{2} < x < \dfrac{\pi}{2}\right)$ の逆関数を $\arctan x$ で表すとき, \[\frac{\pi}{4} = 4\arctan\frac{1}{5}-\arctan\frac{1}{239} \quad \cdots [\ast ]\] が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
$2$ 倍角の公式により, \begin{align*} &\tan 2\alpha = \frac{2\tan\alpha}{1-\tan ^2\alpha} \\ &= \frac{2\cdot\dfrac{1}{5}}{1-\dfrac{1}{25}} = \frac{10}{25-1} = \frac{5}{12} \end{align*} である. よって, 再び $2$ 倍角の公式を使うと, \begin{align*} &\tan 4\alpha = \frac{2\tan 2\alpha}{1-\tan ^22\alpha} \\ &= \frac{2\cdot\dfrac{5}{12}}{1-\dfrac{25}{144}} = \frac{120}{144-25} = \frac{120}{119} \end{align*} が得られる.
(2)
\[\frac{\pi}{4} = 4\alpha -\left( 4\alpha -\frac{\pi}{4}\right), \quad \alpha = \arctan\dfrac{1}{5}\] であるから, \[ 4\alpha -\frac{\pi}{4} = \arctan\frac{1}{239} \quad \cdots [1]\] を示せばよい. 加法定理により, \begin{align*} &\tan\left( 4\alpha -\frac{\pi}{4}\right) = \frac{\tan 4\alpha-\tan\dfrac{\pi}{4}}{1+\tan 4\alpha\tan\dfrac{\pi}{4}} \\ &= \frac{\dfrac{120}{119}-1}{1+\dfrac{120}{119}\cdot 1} = \frac{120-119}{119+120} = \frac{1}{239} \end{align*} が成り立つ. これは $[1]$ を意味するので, 求める等式 $[\ast ]$ が得られた.

背景

  • 三角関数の定義域を制限すれば, その逆関数を定めることができる. 三角関数の逆関数は, 逆数の関数との混同を避けるため, $\mathrm{arc}$ をつけて表すことが多い.
  • $[\ast ]$ と $\arctan x$ の級数表示 \[\arctan x = \sum\limits_{n = 0}^\infty\frac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1}\] と組み合わせて得られる公式 \[\frac{\pi}{4} = 4\sum\limits_{n = 0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n+1)5^{2n+1}}-\sum\limits_{n = 0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n+1)239^{2n+1}}\] は,「マチンの公式」(Machin's formula)と呼ばれ, 後者は級数の収束が速いことから円周率の計算に使われてきた.

問題≪双曲線関数の逆関数≫

 $a > 0,$ $a \neq 1$ とする.
(1)
関数 $y = \dfrac{a^x+a^{-x}}{2}\ (x \geqq 0)$ の逆関数を求めよ.
(2)
関数 $y = \dfrac{a^x-a^{-x}}{2}$ の逆関数を求めよ.
(3)
関数 $y = \dfrac{a^x-a^{-x}}{a^x+a^{-x}}$ の逆関数を求めよ.

解答例

(1)
$y = \dfrac{a^x+a^{-x}}{2}$ から \begin{align*} &2y = a^x+a^{-x} \\ &a^x-2y+a^{-x} = 0 \\ &a^{2x}-2ya^x+1 = 0 \end{align*} であるので, $2$ 次方程式の解の公式により $a^x = y\pm\sqrt{y^2-1}$ が得られるが, $a^x \geqq 1\ (x \geqq 0),$ $y \geqq 1$ であるから \[ a^x = y+\sqrt{y^2-1}\] である. よって, \[ y = \frac{a^x+a^{-x}}{2} \iff x = \log _a(y+\sqrt{y^2-1})\] であるから, 求める逆関数は \[ y = \log _a(x+\sqrt{x^2-1}) \quad (x \geqq 1)\] である.
(2)
$y = \dfrac{a^x-a^{-x}}{2}$ から \begin{align*} &2y = a^x-a^{-x} \\ &a^x-2y-a^{-x} = 0 \\ &a^{2x}-2ya^x-1 = 0 \end{align*} であるので, $2$ 次方程式の解の公式により $a^x = y\pm\sqrt{y^2+1}$ が得られるが, $a^x \geqq 1\ (x \geqq 0),$ $y > \sqrt{y^2+1}$ であるから \[ a^x = y+\sqrt{y^2+1}\] である. よって, \[ y = \frac{a^x-a^{-x}}{2} \iff x = \log _a(y+\sqrt{y^2+1})\] であるから, 求める逆関数は \[ y = \log _a(x+\sqrt{x^2+1})\] である.
(3)
$y = \dfrac{a^x-a^{-x}}{a^x+a^{-x}},$ $-1 < y < 1$ から, \begin{align*} (a^x+a^{-x})y &= a^x-a^{-x} \\ (a^{2x}+1)y &= a^{2x}-1 \\ (1-y)a^{2x} &= 1+y \\ a^{2x} &= \frac{1+y}{1-y} \\ 2x &= \log _a\frac{1+y}{1-y} \end{align*} である. よって, \[ y = \frac{a^x-a^{-x}}{a^x+a^{-x}} \iff x = \frac{1}{2}\log _a\frac{1+y}{1-y}\] であるから, 求める逆関数は \[ y = \frac{1}{2}\log _a\frac{1+x}{1-x} \quad (-1 < x < 1)\] である.