関数の連続性
連続関数
定義《連続関数》
$D$ を定義域とする実数値関数 $f(x)$ について, $a \in D$ とする.
極限値 $\lim\limits_{x \to a}f(x)$ が存在して $\lim\limits_{x \to a}f(x) = f(a)$ が成り立つとき,
$f(x)$ は点 $x = a$ で連続 (continuous) であるという.
$f(x)$ が $D$ に属するすべての点で連続であるとき, $f(x)$ は連続であるという.
定理《関数の連続性の特徴付け》
実数値関数 $f(x)$ とその定義域に含まれる実数 $a$ について, 次は同値である.
- (i)
- $f(x)$ は $x = a$ で連続である.
- (ii)
- 各項が $f(x)$ の定義域に属し, $\lim\limits_{n \to \infty}a_n = a$ を満たすすべての実数列 $\{ a_n\}$ に対して, $\lim\limits_{n \to \infty}f(a_n) = f(a)$ が成り立つ.
例《連続関数》
- (1)
- 多項式関数, 三角関数, 指数関数, 対数関数, 分数関数, 無理関数は連続関数である.
- (2)
- 各実数 $x$ に対して, $x$ 以下の最大の整数を $[x]$ で表すとき, $f(x) = [x]$ は半開区間 $[0,1)$ で連続であるが, 閉区間 $[0,1]$ で連続でない.
定理《関数の和・差・積・商の連続性》
実数値関数 $f(x),$ $g(x)$ が $x = a$ で連続であるならば,
$(f\pm g)(x) = f(x)\pm g(x),$ $(fg)(x) = f(x)g(x),$ $\left(\dfrac{f}{g}\right)(x) = \dfrac{f(x)}{g(x)}$ (ただし $g(x) \neq 0$) は $x = a$ で連続である.
証明
$f(x),$ $g(x)$ が $x = a$ で連続であるならば,
各項が $f(x),$ $g(x)$ の定義域に属し, $\lim\limits_{n \to \infty}a_n = a$ を満たす実数列 $\{ a_n\}$ をとると,
\[\begin{aligned}
(f\pm g)(\lim\limits_{n \to \infty}a_n) &= f(\lim\limits_{n \to \infty}a_n)\pm g(\lim\limits_{n \to \infty}a_n) \\
&= \lim\limits_{n \to \infty}f(a_n)\pm\lim\limits_{n \to \infty}g(a_n) \\
&= \lim\limits_{n \to \infty}\{ f(a_n)\pm g(a_n)\} \\
&= \lim\limits_{n \to \infty}(f\pm g)(a_n)
\end{aligned}\]
となる.
これは $(f\pm g)(x)$ が $x = a$ で連続であることを示している.
残りも同様にして示される.
定理《合成関数の連続性》
$f(x)$ が $x = a$ で連続で, $g(x)$ が $x = f(a)$ で連続であるならば, $(g\circ f)(x)$ は $x = a$ で連続である.
証明
$f(x)$ が $x = a$ で連続で, $g(x)$ が $x = f(a)$ で連続であるとき,
各項が $f(x)$ の定義域に属し, $a$ に収束する実数列 $\{ a_n\}$ をとると,
\[\begin{aligned}
(g\circ f)\left(\lim\limits_{n \to \infty}a_n\right) &= g\left(f\left(\lim\limits_{n \to \infty}a_n\right)\right) = g\left(\lim\limits_{n \to \infty}f(a_n)\right) \\
&= \lim\limits_{n \to \infty}g(f(a_n)) = \lim\limits_{n \to \infty}(g\circ f)(a_n)
\end{aligned}\]
となる.
これは $(g\circ f)(x)$ が $x = a$ で連続であることを示している.
定理《逆関数の連続性》
$f(x)$ が逆関数 $f^{-1}(x)$ をもち, $x = a$ で連続であるならば, $f^{-1}(x)$ は $x = f(a)$ で連続である.
証明
$f(x)$ が $x = a$ で連続であるとき,
各項が $f^{-1}(x)$ の定義域に属し, $f(a)$ に収束する実数列 $\{ b_n\}$ をとると,
$\{ f^{-1}(b_n)\}$ は $a$ に収束するから,
\[\begin{aligned}
&f^{-1}\left(\lim\limits_{n \to \infty}b_n\right) = f^{-1}\left(\lim\limits_{n \to \infty}f(f^{-1}(b_n))\right) \\
&= f^{-1}\left( f\left(\lim\limits_{n \to \infty}f^{-1}(b_n)\right)\right) = \lim\limits_{n \to \infty}f^{-1}(b_n)
\end{aligned}\]
となる.
これは $f^{-1}(x)$ が $x = f(a)$ で連続であることを示している.
中間値の定理
定理《中間値の定理》
実数値関数 $f(x)$ が閉区間 $[a,b]$ で連続であるとき, 次が成り立つ.
- (1)
- $f(a) \neq f(b)$ であるならば, $f(a)$ と $f(b)$ の間にあるすべての値 $k$ に対して \[ f(x) = k\] の解が $a < x < b$ の範囲に少なくとも $1$ つ存在する.
- (2)
- $f(a),$ $f(b)$ が異符号であるならば, \[ f(x) = 0\] の解が $a < x < b$ の範囲に少なくとも $1$ つ存在する.
問題《奇数次方程式の実数解の存在》
実数係数の奇数次の方程式 $f(x) = 0$ は少なくとも $1$ つの実数解をもつことを示せ.
解答例
$n$ を奇数として, 実数係数 $n$ 次多項式 $f(x) = \sum\limits_{k = 0}^na_kx^k$ $(a_n \neq 0)$ を考える.
- (i)
- $a_n > 0$ のとき. $x \to \pm\infty$ のとき, $n$ が奇数であることから \[ a_nx^n \to \pm\infty, \quad \sum_{k = 0}^n\frac{a_k}{a_n}x^{k-n} \to 1\] であり, \[ f(x) = a_nx^n\sum_{k = 0}^n\frac{a_k}{a_n}x^{k-n} \to \pm\infty\] であるから (複号同順), ある実数 $a,$ $b$ $(a < b)$ について \[ f(a) < 0, \quad f(b) > 0\] が成り立つ. よって, 中間値の定理により, $a < x < b$ の範囲に $f(x) = 0$ の実数解が存在する.
- (ii)
- $a_n < 0$ のとき. (i) の結果から $-f(x) = 0$ の実数解が存在するので, $f(x) = 0$ の実数解が存在する.
参考
- $x^2+1 = 0$ のように, 実数係数の偶数次の方程式は実数解をもつとは限らない.
- 複素数係数の $n$ 次方程式は重複度込みで $n$ 個の複素数解をもつことが「代数学の基本定理」(fundamental theorem of algebra) として知られている.
問題《カラビの三角形定数にまつわる方程式》
$3$ 次方程式 $2x^3-2x^2-3x+2 = 0$ について, $3$ つの実数解の整数部分を求めよ.
解答例
\[ f(x) = 2x^3-2x^2-3x+2\]
とおくと
\[\begin{aligned}
f(-2) &= -16 < 0, \\
f(-1) &= 1 > 0, \\
f(0) &= 2 > 0, \\
f(1) &= -1 < 0, \\
f(2) &= 4 > 0
\end{aligned}\]
となるから, 中間値の定理により $2x^3-2x^2-3x+2 = 0$ は $3$ つの実数解をもち, その整数部分は $-2,$ $0,$ $1$ である.
参考
$2x^3-2x^2-3x+2 = 0$ の最大の実数解
\[\begin{aligned}
x &= \frac{1}{3}\left( 1+\sqrt[3]{-\frac{23}{4}+\frac{3}{4}\sqrt{237}i}+\sqrt[3]{-\frac{23}{4}-\frac{3}{4}\sqrt{237}i}\right) \\
&= 1.55138\cdots
\end{aligned}\]
は「カラビの三角形定数」(Calabi's triangle constant) として知られている (こちらを参照).