微分法の方程式への応用(理系)
微分法の方程式への応用
問題《$3$ 次方程式の実数解の個数》
- (1)
- $3$ 次関数 $f(x) = x^3+3px+2q$ ($p,$ $q$: 実数)の極値を求めよ.
- (2)
- (1) の $f(x)$ について, 次のことを示せ.
- (i)
- $p^3+q^2 < 0$ のとき, $f(x) = 0$ は異なる $3$ つの実数解をもつ.
- (ii)
- $p^3+q^2 = 0,$ $p < 0$ のとき, $f(x) = 0$ は異なる $2$ つの実数解をもつ.
- (iii)
- $p^3+q^2 > 0$ のとき, $f(x) = 0$ はただ $1$ つの実数解をもつ.
(参考: $2014$ 早稲田大)
解答例
- (1)
- $f(x)$ を微分すると,
\[ f'(x) = 3x^2+3p = 3(x^2+p)\]
となる.
- $p \geqq 0$ のとき. $f'(x) \geqq 0$ であるから, $f(x)$ の極値は存在しない.
- $p < 0$ のとき. \[\begin{aligned} f'(x) \geqq 0 &\iff x \leqq -\sqrt{-p},\ \sqrt{-p} \leqq x, \\ f'(x) \leqq 0 &\iff -\sqrt{-p} \leqq x \leqq \sqrt{-p} \end{aligned}\] であるから, $f(x)$ は $x = \pm\sqrt{-p}$ で極値 \[ f(\pm\sqrt{-p}) = \mp p\sqrt{-p}\pm 3p\sqrt{-p}+2q = 2(q\pm p\sqrt{-p})\] をとる.
- (2)
- $f(x) = 0$ の実数解の個数は, 曲線 $y = f(x)$ と $x$ 軸の共有点の個数に等しい.
\[ f(\sqrt{-p})f(-\sqrt{-p}) = 4(p^3+q^2)\]
であり,
\[\lim\limits_{x \to \pm\infty}f(x) = \pm\infty \quad \cdots [1]\]
であることに注意する.
- (i)
- $p^3+q^2 < 0$ のとき. $p^3 < -q^2 \leqq 0$ から $p < 0$ であるので, (1) の結果から $f(x)$ は $x = \pm\sqrt{-p}$ で極値をとる. $f(\sqrt{-p})f(-\sqrt{-p}) < 0$ であるので, $[1]$ と中間値の定理により, $y = f(x)$ と $x$ 軸は異なる $3$ 点で交わる.
- (ii)
- $p^3+q^2 = 0,$ $p < 0$ のとき. (1) の結果から $f(x)$ は $x = \pm\sqrt{-p}$ で極値をとる. $f(\sqrt{-p})f(-\sqrt{-p}) = 0,$ $f(\sqrt{-p}) \neq f(-\sqrt{-p})$ であるので, $f(\sqrt{-p}) = 0,$ $f(-\sqrt{-p}) = 0$ のいずれかが成り立つ. よって, $[1]$ と中間値の定理により, $y = f(x)$ と $x$ 軸はちょうど $2$ つの共有点をもつ.
- (iii)
- $p^3+q^2 > 0$ のとき.
- $p \geqq 0$ のとき. $f'(x) \geqq 0$ から $f(x)$ は単調増加であるので, $[1]$ と中間値の定理により, $y = f(x)$ と $x$ 軸はただ $1$ 点で交わる.
- $p < 0$ のとき. (1) の結果から $f(x)$ は $x = \pm\sqrt{-p}$ で極値をとり, $f(\sqrt{-p})f(-\sqrt{-p}) > 0$ であるので, $[1]$ と中間値の定理, $f(x)$ の増減により, $y = f(x)$ と $x$ 軸はただ $1$ 点で交わる.
参考
$3$ 次方程式 $x^3+a_2x^2+a_1x+a_0 = 0$ ($a_k$: 実数)は,
$x = X-\dfrac{a_2}{3}$ を代入して整理すると $X^3+3pX+2q = 0$ ($p,$ $q$: 実数)の形に変形でき,
その「判別式」は $-108(p^3+q^2)$ である(こちらを参照).
問題《$xe^x = a$ の実数解の個数》
$a$ を実数とする.
方程式 $xe^x = a$ の実数解の個数を調べよ.
ただし, $\lim\limits_{x \to -\infty}xe^x = 0$ であること(こちらを参照)は証明なしに使ってよい.
解答例
$f(x) = xe^x$ とおく.
$xe^x = a$ の実数解の個数は, 曲線 $y = f(x)$ と直線 $y = a$ の共有点の個数に等しい.
\[ f'(x) = e^x+xe^x = (x+1)e^x\]
であるから, $f(x)$ の増減は次の表の通りである.
よって, $f(x)$ は $x = -1$ のとき極小かつ最小の値 $-\dfrac{1}{e}$ をとる.
さらに, $\lim\limits_{x \to -\infty}xe^x = 0$ から $x$ 軸は $y = f(x)$ の漸近線であるので, 曲線 $y = f(x) $ の概形は次の通りである.
ゆえに, $xe^x = a$ の実数解の個数, つまり $y = f(x)$ と $y = a$ の共有点の個数は,
$-\dfrac{1}{e} < a < 0$ のとき $2$ 個,
$a = -\dfrac{1}{e},$ $a \geqq 0$ のとき $1$ 個,
$a < -\dfrac{1}{e}$ のとき $0$ 個である.
$x$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ |
$f'(x)$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ |
$f(x)$ | $\searrow$ | $-\dfrac{1}{e}$ | $\nearrow$ |

参考
- $x = ye^y$ により $x$ の値に $y$ の値を対応させる対応を「ランベルト $W$ 関数」(Lambert $W$ function)または「対数乗積関数」(product logarithm function)と呼び, $W(x)$ で表す. 本問の結果により, $x \geqq -\dfrac{1}{e}$ であり, $x = -\dfrac{1}{e},$ $x \geqq 0$ のとき $x$ の値に対応する $y$ の値はただ $1$ つであるが, $-\dfrac{1}{e} < x < 0$ のとき $x$ の値に対応する $y$ の値は $2$ つある. このように, $1$ つの $x$ の値に複数の $y$ の値が対応しているとき, $y$ を $x$ の「多価関数」(multivalued function)と呼ぶ.
- 「ランベルト $W$ 関数」は, 組合せ論, 物理学などにおいて有用であり, 指数関数を含むさまざまな方程式を解く際に利用される. 例えば, 「ランベルト $W$ 関数」を使って, $2^x = x^2$ の実数解を表すことができる(こちらを参照).