体積
体積 (非回転体)
問題《柱体と錐体の体積》
- (A)
- 積分法により, 底面積 $S,$ 高さ $h$ の柱体の体積 $V$ は $V = Sh$ であることを導け.
- (B)
- 積分法により, 底面積 $S,$ 高さ $h$ の錐体の体積 $V$ は $V = \dfrac{1}{3}Sh$ であることを導け.
解答例
- (A)
- 底面積 $S,$ 高さ $h$ の柱体において底面と平行な断面の面積は常に $S$ であるから, 求める体積は \[ V = \int_0^hS\,dx = S\int_0^h\,dx = S[x]_0^h = Sh\] である.
- (B)
- 底面積 $S,$ 高さ $h$ の錐体において底面からの高さが $x$ である断面の面積は $\left(\dfrac{x}{h}\right) ^2S$ であるから, 求める体積は \[ V = \int_0^h\left(\frac{x}{h}\right) ^2S\,dx = \frac{S}{h^2}\int_0^hx^2\,dx = \frac{S}{h^2}\left[\frac{x^3}{3}\right] _0^h = \frac{1}{3}Sh\] である.
問題《円柱の共通部分の体積》
- (1)
- $2$ 本の円柱 \[ y^2+z^2 \leqq 1, \quad z^2+x^2 \leqq 1\] の共通部分の体積 $V_2$ を求めよ.
- (2)
- $3$ 本の円柱 \[ y^2+z^2 \leqq 1, \quad z^2+x^2 \leqq 1,\quad x^2+y^2 \leqq 1\] の共通部分の体積 $V_3$ を求めよ.
解答例
- (1)
- $|x| \leqq 1,$ $|y| \leqq 1$ の範囲で考えれば十分である.
$|t| < 1$ のとき, 平面 $z = t$ による各円柱の切り口は, 図のように長方形
$\left\{\begin{array}{l} |x| \leqq 1, \\ |y| \leqq \sqrt{1-t^2} \end{array}\right.$ と $\left\{\begin{array}{l} |y| \leqq 1, \\ |x| \leqq \sqrt{1-t^2} \end{array}\right.$になるから, 平面 $z = t$ による円柱の共通部分の切り口は正方形 \[\left\{\begin{array}{l} |x| \leqq \sqrt{1-t^2}, \\ |y| \leqq \sqrt{1-t^2} \end{array}\right.\] になる. この面積を $S(t)$ とおくと \[ S(t) = (2\sqrt{1-t^2})^2 = 4(1-t^2) \quad \cdots [1]\] となるから, 求める体積は \[\begin{aligned} V_2 &= \int_{-1}^1S(t)\,dt = 4\int_{-1}^1(1-t^2)\,dt = 8\int_0^1(1-t^2)\,dt \\ &= 8\left[ t-\frac{t^3}{3}\right]_0^1 = 8\left( 1-\frac{1}{3}\right) = \frac{16}{3} \end{aligned}\] である.
- (2)
- $3$ 本の円柱の共通部分は, 中央の立方体の部分と, その面に接する $6$ つの合同な部分からなる. 立方体の部分について, 面の対角線の長さは円柱の直径 $2$ に等しいから, $1$ 辺の長さは $\sqrt 2$ である. また, $6$ つの合同な部分のうち, $\dfrac{1}{\sqrt 2} \leqq z \leqq 1$ における部分について, 平面 $z = t$ による切り口の面積は $[1]$ の通りである. よって, 求める体積は \[\begin{aligned} V_3 &= (\sqrt 2)^3+6\int_{\frac{1}{\sqrt 2}}^14(1-t^2)\,dt \\ &= 2\sqrt 2+24\int_{\frac{1}{\sqrt 2}}^1(1-t^2)\,dt \\ &= 2\sqrt 2+24\left[ t-\frac{t^3}{3}\right] _{\frac{1}{\sqrt 2}}^1 \\ &= 16-8\sqrt 2 \end{aligned}\] である.
参考
- 複数の円柱の共通部分として定まる立体を「シュタインメッツの立体」(Steinmetz solid) と呼ぶ.
- 底面の半径が $1$ であって軸が四面体の頂点と重心を通る $4$ 本の円柱の共通部分の体積は $12\sqrt 2(2-\sqrt 3)$ であることが知られている.
- 底面の半径が $1$ であって軸が立方体の面の対角線に平行で重心を通る $6$ 本の円柱の共通部分の体積は $\dfrac{16}{3}(3+2\sqrt 3-4\sqrt 2)$ であることが知られている.
問題《$3$ 次元アストロイドの体積》
- (1)
- 曲線 $C:\left\{\begin{array}{l} x = \cos ^3\theta, \\ y = \sin ^3\theta \end{array}\right.\ (-\pi \leqq \theta \leqq \pi)$ が囲む領域の面積 $S$ を求めよ.
- (2)
- 曲面 $M:x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}+z^{\frac{2}{3}} = 1$ が囲む図形の体積 $V$ を求めよ.
解答例
- (1)
- \[\begin{aligned} (\cos ^3\theta )^{\frac{2}{3}}+(\sin ^3\theta )^{\frac{2}{3}} = \cos ^2\theta +\sin ^2\theta = 1 \end{aligned}\] から $C$ は $x,$ $y$ の方程式 \[ x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}} = 1\] で表されるので, $C$ は $x$ 軸, $y$ 軸に関して対称であって, $C$ の概形は次の通りである. よって, $C$ が囲む図形の面積は \[\begin{aligned} S &= 4\int_0^1y\,dx = 4\int_{\frac{\pi}{2}}^0y\frac{dx}{d\theta}\,d\theta \\ &= 4\int_{\frac{\pi}{2}}^0\sin ^3\theta (-3\cos ^2\theta\sin \theta )\,d\theta \\ &= 12\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin ^4\theta\cos ^2\theta\,d\theta \\ &= 12\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin ^4\theta (1-\sin ^2\theta )\,d\theta \\ &= 12\int_0^{\frac{\pi}{2}}(\sin ^4\theta -\sin ^6\theta )\,d\theta \\ &= 12\left(\frac{3}{4}\cdot\frac{1}{2}\cdot\frac{\pi}{2}-\frac{5}{6}\cdot\frac{3}{4}\cdot\frac{1}{2}\cdot\frac{\pi}{2}\right) \\ &= \frac{3}{8}\pi \end{aligned}\] である.
- (2)
- 平面 $z = t$ $(-1 \leqq t \leqq 1)$ による $M$ の断面, つまり曲線 $x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}} = 1-t^{\frac{2}{3}},$ $z = t$ が囲む図形の面積を $S(t)$ とおく. このとき, $C$ と曲線 $x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}} = a^{\frac{2}{3}}$ の相似比が $1:a$ であることと (1) の結果により \[ S(t) = \frac{3}{8}\pi\left\{ (1-t^{\frac{2}{3}})^{\frac{3}{2}}\right\} ^2 = \frac{3}{8}\pi (1-t^{\frac{2}{3}}) ^3\] となる. $S(t)$ を $t = -1$ から $1$ まで積分すると, $S(t)$ は偶関数であるから, \[\begin{aligned} V &= \int_{-1}^1S(t)\,dt = 2\int_0^1S(t)\,dt \\ &= 2\cdot\frac{3}{8}\pi\int_0^1(1-t^{\frac{2}{3}}) ^3\,dt \\ &= \frac{3}{4}\pi\int_0^1(1-3t^{\frac{2}{3}}+3t^{\frac{4}{3}}-t^2)\,dt \\ &= \frac{3}{4}\pi\left[ t-\frac{9}{5}t^{\frac{5}{3}}+\frac{9}{7}t^{\frac{7}{3}}-\frac{1}{3}t^3\right] _0^1 \\ &= \frac{3}{4}\pi\left( 1-\frac{9}{5}+\frac{9}{7}-\frac{1}{3}\right) \\ &= \frac{4}{35}\pi \end{aligned}\] が得られる.
参考
このような立体の体積を求める方法として, 「重積分」という多変数関数の積分を使う方法が知られている.
体積 (回転体)
問題《円柱と円錐の体積》
- (A)
- 積分法により, 半径 $r,$ 高さ $h$ の円柱の体積 $V$ は $V = \pi r^2h$ であることを導け.
- (B)
- 積分法により, 半径 $r,$ 高さ $h$ の円錐の体積 $V$ は $V = \dfrac{1}{3}\pi r^2h$ であることを導け.
解答例
- (A)
- 半径 $r,$ 高さ $h$ の円柱は直線 $y = r,$ $y = 0,$ $x = 0,$ $x = h$ が囲む図形を $x$ 軸の周りに $1$ 回転させてできるから, 求める体積は \[ V = \pi\int_0^hr^2\,dx = \pi r^2\int_0^h\,dx = \pi r^2[x]_0^h = \pi r^2h\] である.
- (B)
- 半径 $r,$ 高さ $h$ の円錐は直線 $y = \dfrac{r}{h}x,$ $y = 0,$ $x = h$ が囲む図形を $x$ 軸の周りに $1$ 回転させてできるから, 求める体積は \[ V = \pi\!\int_0^h\!\left(\frac{r}{h}x\right) ^2\,dx = \frac{\pi r^2}{h^2}\!\int_0^h\!x^2\,dx = \frac{\pi r^2}{h^2}\left[\frac{x^3}{3}\right] _0^h = \frac{1}{3}\pi r^2h\] である.
問題《球の体積》
積分法により, 単位球の体積 $V$ は $V = \dfrac{4}{3}\pi$ であることを導け.
解答例
単位球は単位円 $x^2+y^2 \leqq 1$ を $x$ 軸の周りに $1$ 回転させてできる.
対称性により, これは $y = \sqrt{1-x^2}$ と $x$ 軸が囲む図形を $x$ 軸の周りに $1$ 回転させてできるから, 求める体積は
\[\begin{aligned}
V &= \pi\int_{-1}^1(\sqrt{1-x^2})^2\,dx = \pi\int_{-1}^1(1-x^2)\,dx \\
&= 2\pi\int_0^1(1-x^2)\,dx = 2\pi\left[ x-\frac{x^3}{3}\right] _0^1 \\
&= 2\pi\left( 1-\frac{1}{3}\right) = \frac{4}{3}\pi
\end{aligned}\]
である.
問題《回転楕円体の体積》
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2} \leqq 1$ を $x$ 軸の周りに $1$ 回転してできる立体の体積 $V_x$ と $y$ 軸の周りに $1$ 回転してできる立体の体積 $V_y$ の比 $V_x:V_y$ を求めよ.
解答例
\[\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2} = 1 \iff y^2 = \frac{b^2}{a^2}(a^2-x^2)\]
であるから, $x$ 軸の周りの回転体の体積は
\[\begin{aligned}
V_x &= \pi\int_{-a}^ay^2\,dx = \pi\int_{-a}^a\frac{b^2}{a^2}(a^2-x^2)\,dx = \frac{2\pi b^2}{a^2}\int_0^a(a^2-x^2)\,dx \\
&= \frac{2\pi b^2}{a^2}\left[ a^2x-\frac{x^3}{3}\right] _0^a = \frac{4}{3}\pi ab^2
\end{aligned}\]
である.
同様に, $y$ 軸の周りの回転体の体積は
\[ V_y = \frac{4}{3}\pi a^2b\]
である.
ゆえに, 求める体積比は
\[ V_x:V_y = \frac{4}{3}\pi ab^2:\frac{4}{3}\pi a^2b = b:a\]
である.
問題《トーラスの体積》
$0 < r < R$ とする.
円 $x^2+(y-R)^2 \leqq r^2$ を $x$ 軸の周りに $1$ 回転させてできる立体の体積 $V$ を求めよ.
解答例
$x^2+(y-R)^2 = r^2$ を $y$ について解くと,
\[ y = R\pm\sqrt{r^2-x^2}\]
となる.
円周の半分 $y = R\pm\sqrt{r^2-x^2}$ と $x$ 軸, 直線 $x = -r,$ $x = r$ で囲まれた図形を $x$ 軸の周りに $1$ 回転させてできる立体の体積を $V_\pm$ (複号同順) とおくと, 求める体積は
\[\begin{aligned}
V &= V_+-V_- \\
&= \pi\int_{-r}^r(R\!+\!\sqrt{r^2\!-\!x^2})^2\,dx\!-\!\pi\int_{-r}^r(R\!-\!\sqrt{r^2\!-\!x^2})^2\,dx \\
&= 4\pi R\int_{-r}^r\sqrt{r^2-x^2}\,dx = 8\pi R\int_0^r\sqrt{r^2-x^2}\,dx \\
&= 8\pi R\cdot\frac{\pi r^2}{4} = 2\pi ^2r^2R
\end{aligned}\]
である.
問題《バウムクーヘン分割の公式》
- (1)
- $f(x)$ を $f(x) \geqq 0$ なる連続関数とし, $0 \leqq a < b$ とする. $f(x)$ の定義域を単調増加の部分と単調減少の部分に分けることによって, 曲線 $y = f(x),$ $x$ 軸, 直線 $x = a,$ $x = b$ が囲む図形を $y$ 軸の周りに $1$ 回転させてできる立体の体積 $V$ は \[ V = 2\pi\int_a^bxf(x)\,dx\] と表されることを示せ.
- (2)
- $R,$ $r$ を $0 < r < R$ なる実数とする. 円 $(x-R)^2+y^2 \leqq r^2$ を $y$ 軸の周りに $1$ 回転させてできる立体の体積 $V$ を (1) の結果から求めよ.
解答例
- (1)
- 定積分の区間加法性 $\displaystyle\sum_{k = 1}^n\int_{a_{k-1}}^{a_k}\varphi (x)\,dx = \int_{a_0}^{a_n}\varphi (x)\,dx$ により, $f(x)$ が単調増加の場合, 単調減少の場合に示せばよい. $f(x)$ が単調増加または単調減少であるとして, その逆関数を $f^{-1}(x)$ とおく. このとき, 回転体と, 曲線 $x = f^{-1}(y),$ $y$ 軸, 直線 $y = f(a),$ $y = f(b)$ が囲む図形を $y$ 軸のまわりに $1$ 回転させてできる立体の体積の関係から, $f(x)$ が単調増加のとき \[\pi a^2f(a)+V+\pi\int_{f(a)}^{f(b)}f^{-1}(y)^2\,dy = \pi b^2f(b)\] となり, $f(x)$ が単調減少のとき \[\pi a^2f(a)+V = \pi b^2f(b)+\pi\int_{f(b)}^{f(a)}f^{-1}(y)^2\,dy\] となる. よって, いずれの場合にも \[\begin{aligned} &\pi b^2f(b)-\pi a^2f(a)-V \\ &= \pi\int_{f(a)}^{f(b)}f^{-1}(y)^2\,dy \\ &= \pi\int_a^bx^2f'(x)\,dx \quad (x = f^{-1}(y)) \\ &= \pi\left\{ [x^2f(x)]_a^b-\int_a^b2xf(x)\,dx\right\} \\ &= \pi b^2f(b)-\pi a^2f(a)-2\pi\int_a^bxf(x)\,dx \end{aligned}\] となるから, \[ V = 2\pi\int_a^bxf(x)\,dx\] が得られる.
- (2)
- 円 $(x-R)^2+y^2 \leqq r^2$ は $x$ 軸に関して対称であるから, 求める体積 $V$ は, 半円 $0 \leqq y \leqq \sqrt{r^2-(x-R)^2}$ を $y$ 軸のまわりに $1$ 回転させてできる立体の体積の $2$ 倍である. よって, (1) の結果により, \[\begin{aligned} V &= 2\cdot 2\pi\int_{R-r}^{R+r}x\sqrt{r^2-(x-R)^2}\,dx \\ &= 4\pi\int_{R-r}^{R+r}(x-R)\sqrt{r^2-(x-R)^2}\,dx \\ &\qquad +4\pi R\int_{R-r}^{R+r}\sqrt{r^2-(x-R)^2}\,dx \\ &= 4\pi\int_{-r}^rx\sqrt{r^2-x^2}\,dx+4\pi R\cdot\frac{\pi r^2}{2} \\ &= 2\pi ^2Rr^2 \end{aligned}\] である.
参考
- (1) で示した等式は「バウムクーヘン分割の公式」(shell integration) として知られている.
- $S = \displaystyle\int_a^bf(x)\,dx$ とおき, 重心の $x$ 座標 $g_x$ を $g_x = S^{-1}\displaystyle\int_a^bxf(x)\,dx$ で定めると, \[ V = 2\pi\cdot S^{-1}\int_a^bxf(x)\,dx\cdot S = 2\pi g_xS\] が成り立つ. この等式は「パップス=ギュルダンの定理」(Pappus-Guldinus theorem) として知られている.